摂津市のPFOA汚染 情報公開・調査・対策へ
今こそ国が責任を果たせ
日本共産党 山下芳生参院議員が質問 参院環境委
発がん性などの健康被害が指摘されている有機フッ素化合物・PFOA(別項)が、摂津市のダイキン工業淀川製作所周辺の地下水や土壌などから高濃度で検出され、住民に不安が広がっています。日本共産党の山下芳生参院議員・党副委員長が4月28日の参院環境委員会で、情報公開や調査、対策で今こそ国が責任を果たすべきと迫りました。
現地視察踏まえ住民の声届ける
山下氏は昨年6月の同委員会で摂津市のPFOA汚染問題を取り上げて対策を求めました。ことし4月24日には、増永和起摂津市議と共にダイキン工業周辺などを視察し、地元住民から実態や国への要望を聞き取っています。今回の質問で、住民の声を紹介しました。
――これまで畑で野菜を作り身内に分けていたが、畑はやめることにした。この辺りは畑をやっている人が多く、かつては近所の方がよく分けてくれたので、野菜を買う必要がないぐらいだったが、そうしたこともなくなった。
――市内の小学校では、近所の農家の協力で稲刈り体験が行われ、収穫祭では収穫した米をみんなで食べていたが、昨年、ダイキンに隣接する小学校では収穫した米は分けられず、置きっ放しになっている。市内の全小学校で収穫祭が中止されることに。子どもたちの将来が不安だ。
山下氏は、住民が強く求めている農産物の調査を行うよう要求しました。農水省の江﨑典宏大臣官房審議官は、「農産物の汚染実態調査は重要」としながら、「自治体が実態調査を希望する場合は、支援も可能となるよう措置している」と答弁。自治体任せで、国として調査していないことが浮き彫りになりました。
ダイキン周辺で高濃度の汚染が
山下氏は、住民が汚染の調査を求めて摂津市に要望署名を提出し、要望項目の中で、ダイキン工業に情報を公開し、対策を講じるよう求めているとし、「情報公開が対策の第一歩になる」と強調しました。
2000年に米国でPFOAの有害性が明らかになりましたが、ダイキンは03年に摂津市の安威川で、1リットル当たり6万7千ナノグラム(ナノは10億分の1)、世界最悪水準の汚染を引き起こしていたと指摘しました。
ダイキンは翌年から敷地内の地下水の処理を始めたものの、20年度の大阪府の調査で、ダイキンに近い地点では1リットル当たり最高2万2千ナノグラム、環境省が定める「暫定目標値」(1リットル当たり50ナノグラム)の440倍という高濃度汚染が検出されていると述べました。
あまりにも遅い環境行政の対応
山下氏は京都大学の研究チームの調査(08年)で、水や土壌だけでなく、ダイキンは大気中にPFOAを排出し、拡散していることも判明したと指摘。地下水を飲んだり、地元の農産物を食べたりしていない人でも、血液検査で非汚染地域の6・5倍のPFOAが検出されているとし、周辺住民の血液調査や疫学調査を行うべきだと力説しました。
さらに3月の摂津市議会で、PFOA問題の意見書が全会一致で可決されたことを紹介。意見書では、国から摂津市など地元自治体に担当職員を派遣するなどして健康への影響、水環境や土壌環境、農作物の調査を実施し、情報収集に努めるよう求めています。
山下氏は「国が積極的にPFOA汚染について国として把握することを決断すべき」と迫りましたが、山口壮環境相は「大阪府にしっかりやっていただきたい」と答弁しました。
山下氏は、「大阪府に任せるということか。基準もなく、検査方法も確立されていない」と反論しました。
山下氏は、バイデン米大統領が昨年11月、PFOAはじめ有機フッ素化合物の調査や浄化のために、日本円で1兆1千億円を支出する法案に署名したとし、「それに比べて今の環境行政の対応は遅すぎる」と、厳しく批判しました。
(大阪民主新報、2022年5月22日より)