シリーズ:崩壊「都」構想~ダブル選2年(2)
住吉市民病院廃止
命と健康守る責任投げ捨て
「現実の痛み」次々押し付け
橋下氏は大阪市長就任直後の2011年12月27日、松井一郎知事を本部長、自らを副本部長とする「府市統合本部」を設置しました。この日からことし8月まで統合本部会議は21回開かれ、市営地下鉄・市バスの民営化や水道事業や大学などの統合の方針、「教育基本条例」「職員基本条例」の骨格案の決定などの舞台となってきました。
「府市統合本部」は維新の会がダブル選の市長選マニフェストで掲げたとはいえ、選挙公報では一言も触れず、法定ビラで「大阪都ができるまで成長戦略は『大阪府庁・大阪市役所統合本部』において推進」と書いた程度。橋下氏らの当選で民意を得たどころではなく、法律や条例の裏付けが何もない機構です。
ところが橋下氏は、「知事・市長の意思決定と合同司令塔の機能を果たす」(就任演説)と強調しました。「府市統合本部」を「大阪都」構想を先取りした「バーチャル(仮想)大阪都」と呼んできましたが、住民に押し付けられたのは「現実の痛み」。その典型が大阪市立住吉市民病院(住之江区)の廃止問題です。
7万の署名をミクロと敵視
住之江・西成・住吉各区を中心とした大阪市南部地域で、小児・周産期医療を支える拠点となってきた住吉市民病院。「府市統合本部」が同病院の廃止と府立急性期・総合医療センター(住吉区)への機能統合を打ち出したの対し、「住吉市民病院を充実させる市民の会」や地元町会・医師会などが現地存続を求める運動を展開、7万超の署名が寄せられました。
地元・住之江区で開かれた意見聴取会には廃止推進の維新の会を除く市議会全会派の議員が参加し、「子育てできない町になってしまう」などの切実な声に押されて廃止反対を表明していました。
橋下市長はこうした動きを「ミクロの部分でそういう声が沸騰している」(ことし3月19日の第19回本部会議)と敵視。3月議会に廃止条例案の提案を強行する一方、跡地に小児・周産期医療を担う民間病院を誘致する考えを表明しました。公明・自民・民主は一転して賛成に回り、廃止条例は可決されたのです(日本共産党は反対)。
付帯決議には民間病院の「早期誘致」が盛り込まれましたが、橋下市長は「維新の会は過半数がない」「市議会を通すための条件」(第19回本部会議)と公言。政治的な取り引きに過ぎないことは明らかで、賛成した各党の姿勢が問われます。
誘致を言うが〝民間任せ〟に
住吉市民病院の廃止は2016年3月末ですが、すでにことし9月末で内科など小児・周産期以外の外来診療を終了し、災害時のセンター病院の役割が果たせなくなっています。民間病院の応募は11月5日で締め切られ、年内にも契約を締結する予定です。
「市民の会」は廃止条例の可決後も、民間病院の公募基準を住吉市民病院の現地建て替え計画の水準とすることなどを求めて粘り強く運動を続けてきましたが、病院を選ぶのは有識者などでつくる非公開の公募選定委員会。市の基本協定書では住吉市民病院の廃止後、ただちに民間病院が開業することを義務付けておらず、診療や出産に空白期間が生まれる恐れも。必要とされる年間500件の分娩件数を扱う体制になる保障もありません。
「市民の会」は開会中の市議会に向けた陳情署名や区長懇談などを展開。10月28日に開いた懇談会では、日本共産党の北山良三議員が市議会論戦を紹介しつつ、市当局が「民間病院任せ」の姿勢を強めている中、運動と結んで議会でも全力を挙げると表明。
参加者からは「他の病院と比べて出産費用が安く、すぐ受け入れてくれる。絶対必要な病院。これを廃止することは住民が主人公の自治体のあり方に反する」「地域でも子育て世代を中心に不安が広がり、署名に強い反応がある。命と健康を守る責任を問い、いま何が起きているのかを知らせよう」などの声が出ました。
(2013年11月10日付「大阪民主新報」より)