堺・維新市政
永藤市長肝いり民間ポスト
任期途中で辞任に
永藤英機堺市長(大阪維新の会顧問)がトップダウンで設置した課長級の民間ポストが、現場丸投げで活用されず、ポストに就いた人が「市民の税金をいただくのはもったいない」として任期途中の6月に辞任していたことが、日本共産党市議団の追及で分かりました。
現場に丸投げ 活用されず
体制強化と銘打ち民間公募
永藤市長は2019年6月の市長就任後、民間公募の課長級の2つのポストを設置しました。ICT(情報推進技術)推進専門官と広報戦略専門官です。報酬はいずれも年額約1千万円です。
市長は同年11月の会見で、「外部の専門的知見及びスキル(技術)を積極的に導入し、新たな取り組みを進め」、「ICT戦略・広報戦略推進のための体制強化」を行うと発表。同月29日付けで、2つの専門官と共にそれぞれの副専門官を、2020年4月から3年の任期で公募しました。
ICT推進専門官はすぐに決まったものの、20年4月就任後、本人の事情で約2カ月余で退職。現場の職員とアドバイザーだけで仕事が充分間に合っていたため、以来約2年間、そのポストは空席のまま放置されてきました。
突然の決定に現場は困惑し
もう1つの広報戦略専門官は、高い能力と条件が募集要項に定められ、多岐に渡る能力と経験が採用条件になっていたため公募が難航しましたが、2度に渡る公募延長の末、ようやく経験豊かなAさんが雇用されました。
ところが着任後、Aさんが「何をしたらよいのか」と上司に尋ねても、「公募は市長が突然決めたことなので、私たちもよく分からないで困っている」と言われました。
Aさんの仕事には、危機管理広報について担当課にアドバイスすることも求められていましたが、当時、堺市教育委員会をはじめとする不祥事案や危機事象に対してAさんが助言しても、意見が取り入れられることはありませんでした。
こうした中でAさんは、「結局私のやるべき仕事、やりたいことができないまま、今日に至りました」として今年6月、任期途中で無念の辞任に追い込まれました。
予算付けるのでしっかりと
永藤市長は19年の会見で、ICT推進専門官については、「客観的な視点でみていただくために、公募で採用」、広報戦略専門官については、「予算を付ける限りは、しっかりと分析、戦略的に発信、結果を踏まえるために民間のノウハウを役所にも取り入れたい」とし、翌4月から「実際の部隊として動いていただきたい」と述べていました。
記者からの質問に対しても、「採用することになれば、その方々のふさわしいチーム、広報戦略が発揮できるような組織体制にしていきたい」と語っていました。
「市長の責任」森田共産党市議団幹事長
この問題を市議会で追及してきた日本共産党の森田晃一堺市議団幹事長は、「今回の問題は、永藤市長が思いつきとマネジメント不足で、再公募してようやく見つけた有能な方のキャリアをつぶしてしまうという非情さとともに、約1千万円もの市民の税金を活用しきれなかった責任がある」と話します。
辞任にあたってAさんは、「役に立てずにいるのに、市民の税金から1千万円もいただくのがつらいからです」と語ったといいます。
ICT推進専門官も広報戦略専門官もすでに空席になっているものの、報酬は年間約1千万円で任期3年のため約3千万円となり、2人分で6千万円。おでかけ応援バスの改悪で示した2度目の削減額は7100万円で、廃止された日高少年自然の家の指定管理料は年間5千万円でした。
市長がトップダウンで設置したポストで、仕事が与えられないことを苦に、「役に立てずにいるのがつらい」と言って辞任に追い込まれたこと自体、市長の管理能力と税金の使い方が問われます。
(大阪民主新報、2022年7月3日より)