国は認可するな①
――検証・大阪カジノ誘致
人の不幸で成り立つカジノ
維新の大阪府・大阪市政が、大阪湾の埋め立て地・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)にカジノを核とする統合型リゾート(IR)を誘致するための区域整備計画(誘致計画)の議決を府市両議会で強行し、4月27日に国に認可を申請してから、3カ月余が経ちました。これに対し大阪では「国は誘致計画を認可するな」と求める署名運動がスタート。「カジノの是非は府民が決める」と住民投票を求めた直接請求には約21万もの署名が集まるなど、府民の合意は得られていません。カジノや誘致計画の問題点を、改めてシリーズで考えます。
カジノなしにはありえないIR
カジノは賭博そのもので、ギャンブル依存症を生み出し、家庭崩壊や失業、自殺、犯罪など人の不幸を増やさなければ成り立たないもの。これに対し、カジノ誘致推進派は、カジノの床面積はIR施設全体の3%に過ぎないとして、「カジノはIRのほんの一部だから問題ない」と説明してきました。
しかし大阪の誘致計画では、カジノの床面積は6万5千平方㍍。新型コロナワクチン接種会場となった大阪国際会議場(大阪市北区、6万7500平方㍍)が、丸ごと賭博場になるのとほぼ同じです。
誘致計画では、カジノの年間収益を4200億円と見込んでいます。IR全体の年間収益は5200億円ですから、実にその8割を占めるのがカジノ。IRはカジノなしには成り立たたない施設です。
カジノの標的は大阪周辺の市民
吉村洋文知事や松井一郎市長などは、「世界中からヒト・モノ・投資を新たに呼び込み、大阪のさらなる成長につなげていく」とカジノ誘致に突き進んできました。
ところが誘致計画が示すIR全体の来訪者数は年間約2千万人ですが、日本国内が1400万人と約7割を占めています。そのうち、カジノの入場者は約1千万人。2019年2月の「大阪IR基本構想」では430万人と見込んでいましたが、2倍以上に増えています。
事業を担う「大阪IR株式会社」は、米カジノ大手・MGMの子会社日本MGMリゾーツと、オリックスが中核株主として出資。そのオリックスは、自社の決算説明会(昨年11月)で、こんな発言をしています。
「もともとインバウンド(訪日外国人観光客)等を勘案した上で、数年前からやっていたが、今は客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るかという前提で、プランニングをつくっている」
カジノの標的は日本人であり、大阪周辺の一般市民です。
事業者も認めた20万人の依存症
ことし3月16日、大阪市議会都市経済委員会で「大阪IR株式会社」の2人の代表取締役を迎えて参考人質疑が行われました。日本MGMリゾーツのエドワード・バウワーズ社長は、日本共産党の山中智子議員の質問に対し、「責任あるゲーミング(ギャンブル)を行うお客様が全体の約98%で、ギャンブル依存症を抱えているかも知れない約2%の(客に)実際に問題が起きないようサポートする」と答弁しました。
入場者の約2%にギャンブル依存症が発生すると認めたバウワーズ氏。カジノの年間入場者数が見込み通り約1千万人だとすれば、20万人ものギャンブル依存症患者が生まれることになります。
マイナスの効果には一切触れず
誘致計画は年間の「経済波及効果」として建設時に1兆5800億円、開業以降は1兆1400億円などとしていますが、ギャンブル依存症の増加や治安の悪化などによるマイナスの効果には一切触れていません。
吉村知事は22日、記者団に「ギャンブル依存症などの課題には、正面から向き合っていきたい」と語りましたが、最大のギャンブル依存症対策は、カジノをつくらないことです。
IRとは |
IRはI=Integrated(統合された) R=Resort(リゾート)の略称。賭博であるカジノのほか、国際会議場や展示施設、ホテル、商業施設やレストラン、劇場などが一体になった複合観光施設ですが、収益の中心はカジノです。 |
(大阪民主新報、2022年7月31日号より)