国は認可するな ――検証・大阪カジノ誘致③
過大な予測、事業者言いなり
応募したのは一者しかなく
今回の誘致計画でカジノを核とする統合型リゾート(IR)を運営するのは「大阪IR株式会社」。米カジノ大手・MGMの日本子会社、日本MGMリゾーツと、総合金融会社のオリックスを中核に、関西を中心とした企業20社で構成しています(表)。
大阪府・市は2019年末にカジノ事業者の公募手続きを始めましたが、翌年2月までに応募したのはMGM=オリックスの共同企業体1者だけでした。
府・市はコロナ禍の影響が続く中、21年3月19日に募集要項を修正しました。20年代後半の部分開業や、IRのうち展示施設の段階的な整備を認めるなど大幅な条件変更です。「公平性を担保するため」として追加公募を実施しましたが、締め切りの4月6日までに応募はゼロ。9月にはMGM=オリックスが事業者に選定されました。
事業の見通し過大なものに
大阪のカジノ事業に応募したのが1者しかなかったことと相まって、誘致計画が事業者言いなりになっていることが、この間の議会論戦などで浮き彫りになってきました。
その一つが過大な事業見通し。誘致計画は、IR全体の年間来訪者数を2千万人と見込んでいます。コロナ禍前に府・市がまとめた「IR基本構想」(19年)での想定は1500万人。前提条件が崩れているにもかかわらず、500万人も増えています。
大阪市議会都市経済委員会(3月14日)で、日本共産党の山中智子議員が来訪者見込みについて、「保証は全くないではないか」と追及しました。府市共同設置のIR推進局は、事業者が統計などを基に推計したので「合理的なもの」などと答弁。山中氏は「思考停止状態だ」と当局の姿勢を批判しました。
不利とみれば撤退の規定も
府・市が2月に大阪IR株式会社と結んだ「基本協定」では、カジノ事業者側に不利となる悪影響が出ると判断すれば撤退できるという一方的な契約になっています。
国が誘致計画を認可した日から30日を過ぎた日(判断基準日)に、7つの条件のうちどれかが満たされていない場合は、判断基準日から60日以内に府市に通知すれば協定を解除できるというのです。
7条件には、地盤沈下対策はじめ夢洲のあらゆる土壌問題で大阪市が必要な対策を講じ、そのための費用を負担するという項目が含まれます。コロナ禍についてはこんな項目も。
「新型コロナウイルス感染症が終息し、かつ、国内外の観光需要が新型コロナウイルス感染症による影響を受ける前の水準まで回復していることが合理的に見込まれること」
先の大阪市議会都市経済委員会でIR推進局は、山中氏の質問に「判断基準日」の期日は府・市と事業者との合意で延長できるとも説明。「1者しかない事業者に逃げられないために、いろんな障害が発生、発覚した場合、その都度、事業者の言いなりになるのではないか」――山中氏はこう警告しました。
大阪IR株式会社(カ ジ ノ運営会社)に出資する22社中核株主(2社)
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(大阪民主新報、2022年8月21日号より)