国は認可するな――検証・大阪カジノ誘致最終回
維新政治が生み出す無駄遣い
関連の開発で事業費上振れ
松井一郎大阪市長(前日本維新の会代表)は、「カジノに税金は一切使いません」との公言を覆して、夢洲のカジノ用地の土壌汚染や液状化などの対策で大阪市が790億円を負担することを決めました。
公金投入はこれだけではありません。
2025年の大阪・関西万博の会場予定地でもある夢洲。そのインフラ整備や関連の大型開発の事業費が大きく上振れしているのです(表)。中でも高速道路「淀川左岸線」の2期事業は、2度にわたり事業費が上振れしています。
2期事業(大阪市此花区・海老江ジャンクション~北区・豊崎インターチェンジ、約4・4㌔㍍)は2018年に着工しました。大阪市の街路事業と阪神高速道路株式会社の合併施工で、当初の事業費約1162億円は市と国が折半。大部分を淀川左岸の堤防の中にトンネルを埋めるという世界にも例のない事業で、採算性や安全性について計画段階から問題点が指摘されていました。
開通の時期を前倒ししたが
供用開始は27年春の予定でした。ところが松井市長は、夢洲と新大阪を結ぶシャトルバスの専用道路として先行運用するとして、開通を2年前倒しすると表明。工事を急がせてきましたが、20年秋に工事現場で判明した土壌汚染対策などで事業費が756億円増えることが判明しました。
昨年秋には軟弱地盤の工事が行なわれていた工区で、近隣住宅の敷地にひび割れなどが発生。トンネルの沈下対策で地中に杭を打ったことが原因です。市は工法変更で事業費がさらに1千億円増えるとの見通しを明らかにしました。総事業費は当初の2・5倍、約2500億円に上ります。
維新の会はこれまで、大阪市のワールドトレードセンタービル(現在の府咲洲庁舎、大阪市住之江区)と、府のりんくうゲートタワービルなど破綻した巨大開発をやり玉に挙げて「二重行政の無駄」と叫んできました。しかしいまや、カジノ優先の夢洲開発への公金投入が物語るのは、維新政治の無駄遣いそのものです。
790億円は「氷山の一角」
明るい民主大阪府政をつくる会、大阪市をよくする会、カジノに反対する大阪連絡会が8月9日に開いた合同代表者会議では、大阪のカジノ誘致計画を認可しないよう国に求める署名を、40万筆を目標に集めようと意思統一しました。
同会議で文書発言した日本共産党の井上浩大阪市議は「夢洲開発が際限のない上振れを起こし、危機的状況になっている」と指摘。同時に、カジノ用地の土壌対策の790億円があれば、市民のための施策が豊かに展開できるとして、具体例を示しました。
――市民の暮らしを圧迫する大阪市の介護保険料は第8期(21~23年度)が月額基準額8094円と、全国の市の中で最高。これをせめて第6期の6758億円に引き下げるには約97億円でできる。
――国民健康保険(国保)料は維新市政の通算11年で15%も値上げ。維新市政以前の水準に戻すには一般会計から国保会計への任意繰り入れを約105億円追加すればできる。
――大阪市の全小中学校で30人学級を実現する上で、教員の増員(約1200人)に必要な予算は約101億円。大阪公立大学の全学生の授業料をせめて半額にするための予算は約36億円…。
井上氏は、「790億円は夢洲開発の氷山の一角。途方もない税金の無駄遣いぶりを市民に分かりやすく示そう」と強調。維新政治の実態を厳しく追及し、カジノ誘致を止めるため、「最後の最後まで共に頑張りましょう」と呼び掛けました。
カジノ優先・夢洲開発で膨らむ公金投入の上振れ
カジノ用地の土壌対策 | 790億円 |
万博跡地の土壌対策 | 788億円 |
淀川左岸線の土壌対策など | 1756億円 |
万博会場の大屋根建設など | 600億円 |
大阪メトロ延伸の地中障害物撤去など | 96億円 |
夢洲駅(仮称)増強など | 63億円 |
(大阪民主新報、2022年9月4日号より)