鼎談
知事候補 たつみコータローさん
俳優 松尾貴史さん
絵本作家 長谷川義史さん
府政に望むことは
たつみコータロー府知事候補が、俳優の松尾貴史さんと共に、絵本作家・長谷川義史さんを長谷川さん主宰のギャラリー「空色画房」に訪ね、3人で大阪の維新政治、これからの府政に望むことなどをざっくばらんに語り合いました。
この手があったのかと
長谷川 今の方(吉村洋文知事)が危うくなるような、インパクトのある方が出てくれないかな、「誰がええんやろうなあ」と思ってたら、いきなりたつみさんが出馬表明しはったのを知って、「この手があったか!」「それしかないわな。この人しかないわ」と思いました。すごいうれしかったです。
松尾 目を引くことばかり言いながら、何も役に立っていない府政・大阪市政が続いてきた気がします。「身を切る」と言って庶民に身を切らせて、弱い人たちが後回しにされている。
マスコミ展開もうまくて、さも世間一般に認められているかのような錯覚が振りまかれているところへ、客観的事実を持って前に進めてもらう起爆剤が必要だと思っています。
たつみ 橋下徹さんが知事・大阪市長だった時代に、文楽や在阪オーケストラへの補助金を削ったり、大阪市音楽団や大阪センチュリー交響楽団も直営でなくなりました。
長谷川 大阪国際児童文学館を廃止(その後、大幅に縮小して府立中央図書館に移転)させたのも、あの人が最初にやったことでした。
たつみ 大阪に根付いてきた文化を攻撃対象にして、もうかるものが善で、それ以外はつぶしていいという政治を進めてきました。
イルミにはお金かけて
松尾 文楽は世界に誇るもので、税金をいくらかけたからいくら戻ってくるという問題ではない財産です。楽団も。音楽がどれだけ人を勇気付けたり、癒したり、慰めたりするか。「自分でペイできないものはやめよう」とやり始めると、何のための文化交流や文化振興かということになります。その一方でイルミネーションにはお金をかけるのですから。
たつみ 橋下さんは実際に文楽の公演を見て「脚本が古すぎる」と。
松尾 それなら仁徳天皇陵(大山古墳)も古すぎる(笑い)。
たつみ 敵や「既得権益」を仕立て上げ、やっつけるヒーローになるのが彼らの政治手法です。
コロナで嫌と言うほど分かった 長谷川さん
そろそろ通信簿もらったほうが 松尾さん
事実・実態知らせて議論したい たつみさん
任せてたら命が危ない
長谷川 僕が「万博なんか嫌です」と言うと、「えっ?」という感じになります。その後にはIR(統合型リゾート)・カジノにいくやないですか。それで大阪が活気づく んやないかという妄想を抱いている人が、まだまだいると思うんです。
松尾 鶴見緑地で花と緑の博覧会(1990年)がありましたが、当時すでに、世界中から博覧会場に人が来てという時代ではないと言われていました。イベントをやって町が活気づくというより、公金を注ぎ込んで、中抜きする人たちがいっぱいいて余計に疲弊する。東京オリンピックで記憶に新しいはずなのに、まだ大きなイベントの誘致で経済を活性化させようとしている。
たつみ 大事にしなければならない文化や教育は横に置いておいて、打ち上げ花火を打ち続けることで耳目(じもく)を集める。府民の中にも鬱屈(うっくつ)感や景気を良くしてほしいという思いや、何か変えてほしいと期待する気持ちがあって、それを上手に吸い取っているのが維新だと思います。
長谷川 大阪はコロナでは一番人が亡くなっていって、嫌というほど目に見えましたやん。職員減らして保健所の機能が小さくなってしまって、医療機関にかかれないとか。
僕は大阪に住んでいるので、自分が世界一怖い都市に住んでるという恐怖心がありました。あの方たちに任せてたら命が危ない。なんぼイメージ戦略でやってても、気ぃ付かんとあかん。
松尾 落語の「がまの油」のような政治ですね。いろんな傷がぴたりと止まると、うそのデモンストレーションをやって、売り抜けて居なくなる。香具師(やし)ならともかく、政治家がそれをやっている。
やってる感うまいけど
たつみ 先日、保健所の職員に話を聞きました。終電まで働き詰め、電車で帰る時も眠りたいけれど眠れないと言うんです。なぜかと言うと、吉村さんが現場に諮らず思いついたことを会見で言うので、翌日、職場に行くと、そのことも含め対応しなければいけない。それで電車の中で知事が会見で何を言ったのかをチェックしないといけないと。
自分たちは、第4波の時から高齢者施設でクラスターが出たら大変なことになるので、体制を整えるべきだと提案してきたのに、知事はまったく聞いてくれず思いつきでやると。それが「イソジン」だったりするわけです。
松尾 「決められる」という言葉が美化されたり、「身を切る」とか痛みを伴うようなことを言われたほうが、説得力があると錯覚するような話法で政治が進んでいる気がしてなりません。
長谷川 大阪って商人(あきんど)の町で、役人とか嫌いやった町民のプライドみたいなのがあるから、維新が役所の人たちをやっつけると言うと、みんな「オーッ」っていうのがありますよね。
たつみ やってる感を出すのがすごくうまいです。維新を支持する人は、不祥事もあるけれど、ちゃんとやってくれて実績もあると思ったり、実質は与党なのに野党だと思ったりしています。出馬会見でも討論会をやってほしいと言いましたが、大阪の事実、実態を府民に知ってもらって議論したい。
長谷川 メディアは今の知事が格好ええと言うてますけど、正論で議論をたたかわせて、ビジュアルでも負けない人が出てくれたのはおっきいですわ(笑い)。
結局しんどくなるのは
たつみ 10年前に公務現場が疲弊していると言っても共感されなかったでしょうが、今は、コロナで保健所が痛めつけられてしんどくなっていることや、教育現場でも先生がいないことをみんな知っているんですね。
長谷川 「絵本の会」とかやると、学校の先生が来て、本当につらいと言わはるんです。大阪で教師してて精神を病んで、他の県に行った人もいます。
たつみ 大阪で試験を受けて、それをステップアップにして他府県で現職の教職員枠で受け直す人もいると聞きました。
吉村さんがしたことで一番許せないのは、学力テストの点数を先生の給与に反映させようとしたことです。学力は貧困などさまざまな要因があり、先生のせいではありません。
生活保護の現場でもケースワーカーが非正規で、自分の職が来年どうなるか分からない。不安定な人が生活困窮の相談で親身になれるでしょうか。
長谷川 そうやって結局、府民や市民がしんどいことになるのは、コロナの時に分かりましたやん。
たつみ そうなんです。
松尾 だけど自分たちが不利益を被っていることが、今の府政、市政のトップの人たちのせいだと関連づかないように話がもっていかれてるんですよね。
たつみ 大阪市の塾代助成もその一つではないかと思います。本来は塾に行かなくてもいいような公教育の充実が必要なんです。
松尾 補助すると言っても、塾に通える、お金に余裕のある家の子どもしか学力が育たない。これ、富の固定化ですよね。それを助長してどうするんですか。
分断対立をあおる政治
長谷川 僕は人々が対立してしまうのがすごく嫌なんです。大阪は黒でも白でもない、「まあええやん」「どっちゃでもよろしがな」みたいな気質や文化がありますやんか。それがこの10年ぐらいでなくなってきたような気がします。
たつみ 「行けたら行くわ」、みたいな(笑い)
松尾 「考えさせてもらいますわ」、とか。ノーという意味ですが(笑い)。
たつみ 困っている人を放っておかれへんのも大阪のいいところです。大阪人として、分断や対立をあおる政治を憎まないとと思います。
長谷川 住民投票2回したでしょう。1回目で(大阪市存続が)決まってるのに。2回目はコロナの時でした。
松尾 まるでゾンビのように。「ラストチャンス」と毎回言って。
たつみ 彼らは大阪市を廃止する「大阪都」構想で、中身の議論をせず、統治機構を変える話しかしなかった。それを大阪市民が見抜いたのは、すごいことだと思います。
松尾 よくなることは1つもなく、文化が壊れる。不便になる。設備が減らされる。無駄を省くとか「二重行政」と言うけれど、成り立ってきたことには必然性があるのに、それをどう発展させるかという議論なしに、ガラガラポンで良くなると。香具師のような無責任なものでした。
長谷川 「都」構想になったらどうなるかを理解できてないのに、投票なんかできませんやん。でも1回目は投票しなかったら、もっとあかんことになると思って行きました。2回目の時は「大阪市はなくなります。これでいいですか」というのがすごく分かりやすかった。
たつみ 大阪市はなくなるのに彼らは「なくならない」と言い続けました。
長谷川 憲法改正も一緒。今の憲法て宝物のようなものやのに、よう分からへんまま変えられようとしている。
いい大阪を取り戻そう
たつみ 私が知事になれば、公務現場で働く人たちが府民に奉仕できる大阪を取り戻したいです。教育と中小企業支援も再生させたいし、ギャンブルではない景気浮揚を打ちたい。
何よりも分断と対立を政治があおらない。命を守り暮らしを守る協働・連帯の政治を前に進めたいし、無党派の人や保守の人も含めて、大阪を良くしたいと思っておられる方と一緒に、政治をつくっていきたいと思います。
松尾 現在の府政・市政は10年もやってきて完全な権力者。その評価が出てもいいくらいの年月をやってるわけですから、そろそろ〝通信簿〟をもらったほうがいいと思いますね。
たつみ 僕は、政治家になる前は困窮者の支援で現場の声を聞いてきたし、参院議員時代もいろんな人の声を聞いてきました。現場はこうだと、誰も否定できない事実、実態を突き付けられるのは自分しかいないと思っています。
長谷川 みんなで「都」構想を2回もはね返したんですから、頑張れば十分いけると思ってます。
松尾 〝3度目のラストチャンス〟を与えてはなりませんね。
頑張れない人も助けるのが政治。「対価としての権利」ではなく、あまねくすくい上げる。そういう発想がない人には、力を持ち続けてほしくありません。
新しい大阪をつくると同時に、古い、いい大阪を取り戻してほしいですね。
(大阪民主新報、2023年2月12日号より)