アジアの若者犠牲にさせない
広がった輪さらにつなげたい
わたなべ結の
あの人に会いたい
日本共産党のわたなべ結・党府青年学生委員会責任者・参議院候補が、モンゴル研究家で、憲法違反の安保関連法の廃止を求める大阪大学人の会の今岡良子大阪大学准教授を、同大学箕面キャンパスの研究室に訪ねました。2人は共に大阪外大(現大阪大学)の卒業生。学生時代の話からモンゴルのこと、戦争法をめぐる問題など語り合いました。
わたなべ 今岡先生はなぜモンゴルに興味を持たれたのですか?
今岡 父親が東南アジアで鎔鉱炉を造る仕事をしていましたが、「どこかで戦争やらないか」と話す父が嫌いで、批判ばかりしていました。「お前は共産党か」なんて言うので、「共産党でいいよ」(笑い)と小さい時から言ってました。父たちがやっていることとは違うものを求める中で、ユーラシアやモンゴルに興味を持っていきました。
モンゴルの生活に学びたい
大学に入った1981年ごろは、アフリカの飢餓が深刻でした。一方で空母が日本に入港するという記事が新聞トップになっているのを見て疑問に思い、世界の貧困を考える中で、自然と調和した遊牧を残しながらも社会保障も厚いモンゴルの姿と結び付いていきました。
わたなべ 先生は「ひつじの惑星」という活動もされますね。
今岡 羊毛フェルトのワークショップなどを通じて、モンゴルについて学ぼうという活動です。
モンゴルには300万人の人口に2500万頭ぐらいのヒツジがいます。
わたなべ すごいですね。
今岡 ヒツジはヤギや牛と同じように胃袋が4つありますが、一番大きな胃袋は体のほとんどぐらいの大きさです。胃の中に草が入ってきたら、草1グラムに何億という微生物が繁殖し、セルロースを分解し脂肪酸も作る。そのヒツジから、人々は毛も肉もミルクも皮も、全部いただいてるんですね。
わたなべ なるほど。
今岡 自給自足の暮らしをして、一つの民族として言葉も文化も守ってきました。太陽と草と水の力を借りながら、家畜の恵みで自然と調和した豊かな暮らしをしている人々の生活に学びたいと思って、羊毛フェルトのワークショップなども各地でやっています。
わたなべ 私は1981年生まれで、99年に外大のタイ語専攻に入学しました。
1年間タイに留学して、日本を外から見ることができ、日本のいいところや政治のおかしさも見えてきました。就職難でしたが、自由な学風の中で、自分がどう生きるか、どう社会に関わっていくかなどをゆっくり考えさせてくれる雰囲気がありました。2007年に大阪大学に統合されましたが、アイデンティティ(自分らしさ)は外大だと思っています。
今岡 私も阪大になってから名刺を作ってません。親が勝手に離婚して名前を勝手に変えられただだっ子でいようと思って(笑い)。
力をつけていかなければと
わたなべ 先生は、「憲法違反の安保関連法の廃止を求める大阪大学人の会」もつくられましたね。
今岡 一般教養の授業に「平和の探求」という授業があり、私も参加しています。そのリレー講義のメンバーが口々に声を上げようと集まりました。インターネットのフェイスブックを中心に、一人一人が考え、自分の言葉で語って、書いてもらったものを発信してきました。
法案をめぐる国会審議はインターネットで見ていましたが、参議院特別委員会での強行採決は議事録もないし、採決したという声も聞こえないまま。
わたなべ さっぱり分からなかった。
今岡 その前の自民党の総裁選挙もなかったし、すべてがインビジブル(目に見えない)になってきている中で、強行採決後も、落胆よりもっとこちらの力をつけていかないと、と思いましたね。
わたなべ 私も強行採決された後にフェイスブックに、もっと賢く強くなりたいと書きました。この人たちを倒すために知る力、それを考える力、つきつめる力をもっと持たなければと。
今岡 同時に誰もが納得できる表現力も持っておかないといけないと思います。ジュゴンの形をしたプラカードを抱っこして話すことも一つ。デモや宣伝に持って行ったら、それを見た子どもが母親に「アシカ?」と尋ねて、母親が「ジュゴンよ。沖縄の」と答えるように、親子の会話が生まれたりするんですね。
沖縄の米軍基地から戦地へ
わたなべ 最初に先生をお見掛けしたのは、若者たちのグループ「SADL」(民主主義と生活を守る有志)が衆議院での法案強行採決に反対して京橋でやった緊急宣伝で、その時もジュゴンを持っておられましたね。
今岡 初めて沖縄に行ったのは2003年春、イラク戦争が始まった時でした。米軍は沖縄にある基地から戦地に飛ぶので、日本から戦争が始まることを知っておかなければと思って行きました。
イラク戦争では、韓国軍が撤退して手薄になる中、アメリカの要請でイラクとは何の関係もないモンゴル軍が駆り出され、米軍を自爆テロから守る仕事もしてきました。
アフガニスタンにもイラクにも、私の知り合いの軍人が将校クラスで行っていますが、キャリアも知性もトップクラスで、モンゴルではそんな優秀な人を行かせて国をどう守るのかという議論もあるぐらいです。
安保法制で日本の自衛隊の戦死者を出してはいけないと言われますが、アジアのいろんな若者が巻き込まれて犠牲になることも、絶対あってはなりません。
志位さんがレーニンに見え
わたなべ 戦争法をめぐって若者たちが街頭に出て訴える中、遠巻きに見ていた人たちもたくさんいて、水滴が落ちた波紋のように輪が広がっていくのを感じました。国会前、首相官邸前の行動でも。そんな人たちともさらにつながっていくことが、大事だと思います。
今岡 採決されてどうしようと思っていた時、共産党が戦争法廃止のための国民連合政府を呼び掛けて方法を示したことには手をたたきました。さすがと思った。レーニンは戦争反対でみんなをまとめていきましたが、志位さんがレーニンに見えた(笑い)。逆に言うと、そこまでひどい状況だということです。私は立憲主義、野党共闘、プラス辺野古の新基地反対の3つをセットにしてほしいし、これを崩さないでほしいと思います。
わたなべ 国民の後押しで野党は背中を押されると思います。
民主主義を取り戻すために
今岡 国会審議で共産党は、事実に基づいて科学的に批判・追及していました。すごく気持ちのいいものでした。ここぞというときに信頼があるから、内部文書も共産党に預ける。議員が増えたから質問時間も長くなったのでしょうし、もっと長くなればと思いますね。
わたなべ 前の議席だったら15分だった質問時間が、4倍の1時間になりました。それでも数の上ではまだまだ少ないし、取り上げられないテーマもあります。議員もさらに増やし、戦争法廃止、民主主義、立憲主義を取り戻すために引き続き頑張りたいと思います。
いまおか・りょうこ 大阪大学(元大阪外国語大学)言語文化研究科准教授。現代モンゴルの女性史や遊牧民などについて研究。モンゴルについての学びを広げる「ひつじの惑星」を主宰。憲法違反の安保関連法の廃止を求める大阪大学人の会発起人の1人。 |
(大阪民主新報、2015年11月1日付より)