危険すぎる夢洲万博止めよう
岸田政権・維新 強行へ暴走
開催まで9カ月
2025年大阪・関西万博の開催(来年4月13日)まで、約9カ月となりました。この間、会場建設費の相次ぐ上振れが批判の的となり、1月の能登半島地震を受けて「万博より被災地支援・復興を」の世論も拡大。3月末に会場建設現場で起きたガス爆発事故で、安全確保に不安が高まり、児童・生徒の動員中止を求める運動も広がっています。日本共産党大阪府委員会も昨年8月末から3回にわたって万博中止を求める声明を発表していますが、これらに背を向け、開催へと暴走してきたのが岸田政権と維新の大阪府市政。しかし今、万博を巡る問題点や矛盾は、いよいよ噴き出しています。
今なおガス爆発の危険性
夢洲1区の会場建設現場で3月に起きたメタンガスによる爆発事故を受け、日本国際博覧会協会(万博協会)が6月24日、会場内でのガス調査結果と、万博会期中安全対策なるものを発表しました。
3月に爆発事故が起きた夢洲1区は、ごみ焼却灰や下水汚泥などで埋め立てられてきた現役の廃棄物最終処分場です。廃棄物に含まれる有機物が微生物によって分解される過程で、メタンガスが発生。83本のガス抜き管が設置されています。
事故現場の東トイレの地下ピット(空間)で、労働者を直ちに避難させ、作業を中止しなければならないメタンガス濃度1・5vol%(vol%は体積におけるガス濃度)以上を検出したのが、少なくとも76回ありました。
夢洲1区内の建物の地下ピットと屋内で、着火によって爆発を起こす最低濃度(爆発下限界)の5vol%を超える濃度を17回検出していますが、対策は、ガス検知器の設置や強制換気の実施などにとどまります。
東トイレと西トイレでは、一酸化炭素、硫化水素など他のガスでも基準値超えを検出。夢洲2区・3区のパビリオン会場でも、新たにガス発生が確認されましたが、マンホールの通気確保や換気を行うだけです。
落雷・熱中症も
夢洲のアクセスルートは、夢咲トンネルと夢舞大橋の2つしかありませんが、大規模災害時の夢洲からの避難計画はいまだにありません。6月には「防災計画」の一部が明らかになりましたが、1日最大15万人が孤立すると想定するものの、船舶などで近隣の舞洲や咲州に避難させるといった内容です。
防災基本計画では、高さ20㍍の大屋根リングは「落雷の危険性が高い」と指摘。夏季には会場内で熱中症の危険性が高まり、パビリオンや入退場ゲートの待機列など、人が滞留する状況では、暑熱環境が短時間で一気に悪化する危険性があるとしています。
2025年大阪・関西万博
杜撰プロジェクトに血税無駄遣い
建設費が相次いで上振れ
海外パビリオンの建設は遅れ
昨年以来、万博の会場建設費の上振れが批判の的となってきました。会場建設費は2017年の当初計画では1250億円でしたが、20年には600億円増の1850億円に。23年にはさらに500億円上振れして、当初の約1・9倍の2350億円に膨れ上がりました。
巨額の費用を投じる一方で、際立つのが海外パビリオンの建設の遅れです。参加国が自前で建設する「タイプA」は当初約60カ国の予定でしたが、49カ国まで減少(6月25日現在)。うち約10カ国は建設業者が決まっておらず、工事関係者からは「(開催に)絶対間に合わない」との声も。
万博協会は昨年8月、「タイプA」から撤退した国の受け皿として、協会が建設を肩代わりする簡易型の「タイプX」への移行を提案。大和ハウスに9棟を先行発注していますが、入居を表明したのは6月中旬で3カ国にとどまっています。
残りの6棟の利用がすべて見込めない場合、万博協会に最大76億円の追加負担が生じることも明らかに。協会側は6月27日の定期理事会で、会場建設費の予備費から支出すると決めましたが、会場建設費がさらに膨張する懸念は消えません。
入場券は大きく伸び悩み
運営費赤字は誰が負担するか
万博の運営費は、2020年の809億円から、現在は1160億円に増えています。うち969億円(約83%)を入場券の売り上げでまかなう計画。万博協会は、入場チケットの販売枚数を2300万枚と見込んでいます。
このうち、前売り販売の 目標は1400万枚ですが、売り上げは伸び悩んでいます。昨年11月の発売以後、販売状況は約318万枚(7月3日現在)。9割が企業による購入とされますが、目標の約22%にすぎません。
現在販売されているのは電子チケットのみで、購入するにはまず、スマートフォンやパソコンで万博IDを取得しなければなりません。チケットを購入しても、入場日時は事前予約制。希望日の6カ月前から先着順で受け付けますが、定員になれば予約はできず、予約がなければ入場できなくなります。
万博協会が打ち出した販売促進策は、「紙チケット」の導入です。「スマートフォンに慣れない層」「気軽に購入したい層」を対象に、10月から旅行会社の店頭やコンビニで販売するというものです。システム改造やコンビニ販売での販売手数料の増加で、約21億円もの事務経費が追加されます。
紙チケットの販売は200万枚と想定し、基本は電子チケット。10月6日までに万博IDを登録してチケットを買った人には、抽選で電子マネーなどをプレゼントする企画まで組んでいます。
チケットが売れず、運営費が赤字になれば、誰が負担するのか。
日本共産党府委員会は、ことし4月12日に出した「開催まで1年 大阪・関西万博の中止を求める声明」で、「開催経費の赤字によって、これ以上の国民負担を増やさないためにも、万博は中止するしかありません」と強く求めています。
そもそも会場に行けるか
アクセスは2つのルートだけ
会場である夢洲へのアクセスルートは、夢洲と舞洲を結ぶ夢舞大橋と、夢洲と咲洲を結ぶ夢咲トンネル(地下鉄延伸部を含む)の2つしかありません。
万博は来年4月13日から半年間の開催ですが、入場者数は2820万人を想定。ちなみに、大阪市此花区にあるテーマパーク「ユニバーサルスタジオジャパン」の来場者は、1年間で1500万人です。
それだけの入場者を運ぶのは大変です。地下鉄中央線が乗車率140%で1時間に2万人を運んだとしても、2分30秒に1本運行しなければなりません。シャトルバスも45秒に1台動かす計算で、夢洲に通じる高速道路などが大渋滞となるのは必至です。
学校行事による児童・生徒の無料招待事業では、ガス爆発事故を受けて安全面への不安が出ています。
行く日やパビリオンを選べないこと自体に、「教育的効果が分からない」との批判も出ていますが、そもそも万博会場にたどり着けるのかという問題もあります。
なぜ止められないのか
――最大の理由はカジノ
破綻があらわな万博事業ですが、止まらない・止められないのはなぜか。
日本共産党府委員会は、政府と維新が万博に固執する理由は、大阪のカジノ計画にあることを、中止を求める声明などで、繰り返し明らかにしてきました。
大阪府市は2014年4月、カジノを核とする統合型リゾート(IR)誘致を、夢洲を軸にする方針を決定しました。府が万博大阪誘致検討会を設置した15年4月には、夢洲は会場候補地になっていませんでした。
同年12月、当時の安倍晋 三首相と菅義偉官房長官、橋下徹氏と松井一郎知事が忘年会を開きました。その席上で、松井氏が「持論」を展開したのを受けて、政府として大阪万博が動き出したと、同氏が著書『政治家の喧嘩力』で書いています。
16年6月の府万博基本構想検討会で、松井氏がトップダウンで「夢洲会場」を提案しました。「国策」として進める万博を口実にインフラ整備などを進めさせ、カジノ業者の負担軽減を狙ったのです。
一方、カジノ格安賃料差止訴訟で原告側は、IRを誘致するにもかかわらず、大阪市がIR用地の不動産鑑定で「IR事業を考慮外」という条件を設定し、鑑定事業者を誘導して格安賃料に導いた官製談合の事実を示しています。
手続きに瑕疵
認定取り消しも
カジノに反対する大阪連絡会の政府交渉で、国交省は「申請の手続きに瑕疵があれば、(カジノ誘致計画の)認定を取り消すことがある」と明言しています。カジノ格安賃料差止訴訟で原告が勝利すれば「認定できない」と明確に答えており、裁判の行方が注目されます。
万博中止へ府民と共に
ぶれずに貫く日本共産党
日本共産党は昨年8月末に「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」を発表したのに続き、ことし1月には能登半島地震の発生を受けて、「大阪・関西万博を中止して能登半島地震の復旧・復興に全力を尽くすことを求める声明」を発表しました。
開幕まで1年となるのを前に、4月12日には「開催まで1年―大阪・関西万博の中止を求める声明」を発表。ガス爆発事故の発生など命の危険があらわになっているのに、開催に固執する岸田政権と維新を批判し、「命軽視の万博を止めよう」と呼び掛けてきました。
6月27日、山添拓政策委員長を迎えて大阪市都島区内で行った街頭演説で、たつみコータロー衆院比例候補(党府万博カジノプロジェクトチーム責任者)も訴え。夢洲の危険性を指摘し、「そもそもこんな場所で万博をすることが無謀。府民の皆さんと万博・カジノを止めるたたかいを進める」と決意を語りました。
たつみ氏は、6月に能登半島地震の被災地ボランティアで、石川県輪島市や珠洲市に行ったことを報告。「今やるべきは万博・カジノではなく、被災地の復旧・復興。万博を強行する自公政治と維新政治に正面から対決する日本共産党を大きく伸ばして下さい」と訴えました。
明るい会が署名を呼び掛け
明るい民主大阪府政をつくる会は昨年末から、万博中止を求める要請署名の取り組みを呼び掛けています。3月19日には、さまざまな団体や地域から寄せられた第1次署名5万478人分を、岸田文雄首相ら宛てに提出。5月には、能登半島の震災支援、ガス爆発事故問題を反映した署名用紙を新たに作成し、引き続き署名推進を呼び掛けています。
爆発事故は協会の責任
経産省 山下参院議員に文書回答
経産省はこのほど、日本共産党の山下芳生参院議員に、大阪万博会場で起きた爆発事故の責任主体が万博協会と経産省にあることを初めて認める文書回答を提出しました。
山下氏は6月4日の環境委員会で、廃棄物最終処分場を万博予定地にし、メタンガス爆発事故を引き起こした責任は、「土地使用を認めた大阪市か万博協会か」と追及しました。
内閣府国際博覧会推進本部の茂木正事務局長代理は、施工業者に責任があるとの答弁を繰り返しました。
山下氏は、万博協会が「夢洲という場所の危険性、配管ピットのメタンガス対策を軽視していたもので、施工業者に責任を負わすことではない」とし、書面で協会側の責任 と安全対策を明確にするよう求めていました。
1日、山下氏に提出された首席国際博覧会統括調整管茂木正署名入り文書は、万博協会に「会場における労働者及び来場者の安全対策を講じる責任があると認識」し、経産省が「引き続き博覧会協会を監理監督していく」と述べています。
山下氏は、「万博協会の責任を認める文書を提出したことは重要」とし、「海面最終処分地の上での万博開催は中止」「102万人もの子どもたちを動員する指示は直ちに撤回すべき」と強く求めました。
(大阪民主新報、2024年7月14日号より)