政策・提言・声明

2012年07月01日

【シリーズ】これが自治体のやることか ~橋下「改革」の現場から(3)

住吉市民病院廃止・統合ら〝納得できない〟党派越えて広がる怒り

市民病院廃止だけは許せぬ

 「そうだ、そうだ」――大阪市住之江区の加賀屋商店街。「住吉市民病院を守りましょう」と訴えて署名を呼び掛ける「住吉市民病院の充実を求める市民の会(市民の会)」の人たちに、通行人から声が掛かりました。

 地元選出の東徹府議(維新の会)の後援会員だという男性(75)は、「尼崎に住んでいる娘も、里帰りして住吉市民病院で出産した。東さんのことがあるから維新の会や橋下さんを応援してきたが、この廃止の件だけは許せん。一体、何を考えてるんや」と、怒りもあらわに署名していました。

 橋下徹大阪市長は5月末に住吉市民病院(大阪市住之江区)を廃止し、府立急性期・総合医療センター(同市住吉区)に統合する考えを表明し、6月19日の「府市統合本部」でその方針を正式に固めました。

 商店街での宣伝行動はその2日後。「議会で審議されるのはこれから。引き続き地域住民の声を届けましょう」との訴えに、署名には列ができるほどでした。

建て替えは無駄と維新議員

 大阪市は93年、それまで運営していた9病院のうち5病院を統廃合。総務省の「公立病院改革ガイドライン」(07年)を受けて、09年3月に「市民病院改革プラン」を策定し、北市民病院(此花区)を民間移譲するなど、「地域との役割分担」などの名で公的病院の役割を縮小・後退させてきました。

 住吉市民病院は1958年に北館、64年に南館が建設。老朽化が進んでいただけに建て替えと充実が求められていました。ところが、昨年5月の「基本構想」では、16年度の開業に向けて小児・周産期医療に特化して建て替え、総合病院としての機能をなくすという方針でした。

 橋下市長は今年度予算で建て替えのための調査費(2千万円)を凍結し、「府市統合本部」であり方を検討。すでに維新の会は昨年2月の市議会代表質問(坂井良和議員)で、大阪市の「無駄な予算」の一つに住吉市民病院の建て替えを挙げ、中止を要求。「高度な急性期医療こそが、税金を投入してでも担うべき医療だ」とまで言い放っていました。

 「市民の会」は住之江区、西成区、住吉区で署名運動を推進。地域の全戸訪問や商店街、スーパー前などで行動するほか、町会や医師会などとの共同も広げてきました。「府市統合本部」の翌20日には5498人分の署名を提出。昨年10月提出分と合わせて1万3571人分に達し、その後も署名が集まっています。

若い世代の居住が不可能に

 住之江区社会福祉協議会の濱田一夫会長と同区地域振興会の下田三七男会長も6月上旬、連名で「統合させない要望書」に基づく署名を開始。要請書では「もしこの病院がなくなるとすれば、住之江区を中心に子どもを安心して生み育てる住環境が形成されず、若い世代が進んで居住できるまちにはならない」と訴えています。

 大阪市住之江区に住む女性(36)は3人の子どもを全員、住吉市民病院で出産。「府立のセンターは遠いし、総合病院ではありません。小児科は評判もいいのに、どうしてつぶすのでしょう。絶対に納得できません」と話します。

住吉市民病院

 内科・精神科・小児科・外科・小児外科・産婦人科など14の診療科をもつ総合病院(198床)。同市の南部基本医療圏(6行政区)の中でも、住之江・西成・住吉3区の住民が入院・外来の8~9割を占めるなど、地域で市民の命と健康を守る「とりで」です。

 南部基本医療圏は08年と比べて35年には人口は85万7千人から約66万6千人に減る一方、高齢者の人口は21万4千人から24万2千人に増えるなど、今後最も高齢化が進む地域。他の基本医療圏と比べ、すべての診療科目が少なく、小児科・産婦人科・周産期医療の充実や総合病院としての機能発揮が求められています。

(2012年7月1日付け「大阪民主新報」より)

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