おおさかナウ

2016年02月14日

地下鉄・市バス民営化狙う
大阪市が基本方針案

 大阪市は3日、吉村洋文市長(大阪維新の会政調会長)らが出席する戦略会議で、地下鉄・バスの民営化に向けた基本方針案を決定しました。市が出資する新会社に地下鉄事業を引き継ぎ、バスの運行会社も新会社の子会社とするもの。吉村市長は16日開会の大阪市議会に提出し、可決・成立を狙っています。

新会社設立し引き継ぎ

完全民営化も視野に入れて

民営化前提の事業再編の影響で、バスが1時間に1本だけ=大阪市生野区内

民営化前提の事業再編の影響で、バスが1時間に1本だけ=大阪市生野区内

 地下鉄・バスの民営化は橋下徹前市長が固執し、市営としての両事業を廃止する議案を提案しましたが、2014年11月と昨年2月に2度にわたり維新以外の反対多数で否決。ところが橋下前市長はあくまで民営化を進めようと、昨年9月に民営化に向けた基本方針案を議会の議決事項とする条例(手続き条例)案を提出。翌月に維新、自民、公明などの賛成で可決・成立しました。
 基本方針案では、新たに設立する会社が地下鉄事業を引き継ぐ時点では大阪市が100%の株式を保有し、路線や職員を引き継ぐとしています。新会社には、輸送の安全確保を「経営判断の最優先課題」とし、未着手の8号線(今里筋線)の延伸などは「市の考え方を最大限に尊重すること」を求めていますが、吉村市長は株式を売却する「完全民営化」を目指すべきと述べています。

早い段階での民営化を狙う

大阪市議会で2回にわたり否決されたにもかかわらず、吉村市長は「基本計画案」をてこに民営化を推進しようとしています=地下鉄御堂筋線・心斎橋駅

大阪市議会で2回にわたり否決されたにもかかわらず、吉村市長は「基本計画案」をてこに民営化を推進しようとしています=地下鉄御堂筋線・心斎橋駅

 バス事業は戦略会議で決定された「経営健全化計画」で、「多額の累積欠損金を抱えるなと公営事業としては存続できない状態」などとして、現在一部路線の運行を一部委託している市の外郭団体「大阪シティバス」に譲渡し、その株式は地下鉄の新会社が保有。路線や運行回数、運賃などを維持するのは「引き継ぎ後概ね5年程度」としています。
 昨年12月に就任した吉村市長は年末の施政方針演説で橋下市政の「継続」を掲げるとともに、「橋下市政の改革でできなかったこと、修正すべきことにしっかり取り組む」と表明。地下鉄・バスの民営化については、「できるだけ早い段階で議論し、次のステップに進めていきたい」としていました。
 1月の大阪市議会の一般質問で日本共産党の瀬戸一正団長が、民営化議案が5回の継続審議と2回の否決されたことは「議会の意思」と強調し、白紙に戻して議論し直すべきと主張。吉村市長は「3年間にわたり議会で一定の議論が重ねられている」として、民営化を前向きに進めると答弁しています。

公営事業の原点に立ち返れ

日本共産党・山中幹事長(交通水道委員)の話

日本共産党・山中幹事長(交通水道委員)

日本共産党・山中幹事長(交通水道委員)

 113年の歴史を刻む大阪市営交通は、基本的に営利を目的とする私鉄会社とは異なり、公営の事業として、市民や利用者の足の利便を図り、まちづくりに寄与してきました。基本方針案は、こうした公営の役割を無視し、「民営化ありき」の考えに貫かれています。新会社の株式を市が100%保有するのは「引き継ぎ時」で、最終目標は吉村市長が明言しているように「完全民営化」、地下鉄を売り飛ばすことにあります。
 そうなると防災対策・安全対策や8号線延伸などネットワークの充実、バス事業への財政支援など市民・利用者が求める施策は実現できなくなります。議会が2回にわたって民営化議案を否決したのは、その懸念があったからです。
 バス事業は橋下前市長が地下鉄事業からの支援をやめ、路線削減や減便などが強行されました。路線や便数の復活・拡充こそ求められているのに、民営化で現状が守られる保障はありません。いまこそ公営交通の原点に立ち返り、民営化を食い止め、市民・利用者のための地下鉄・市バスを守り発展させるため、議会内外で全力を挙げます。

(大阪民主新報、2016年2月14日付より)

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