維新府政の7年で、子どもたちや
府民のくらし、中小企業は深刻に
くらしと営業を守る 府政改革こそ必要
――2014年度大阪府決算の審査を通じて(下)
日本共産党大阪府議会議員団幹事長 朽原 亮
維新府政で大幅カットの商工業予算~くらしと雇用を守り、中小商工業への支援強化こそ
(1)ものづくり中小企業や商店街などへの支援が大幅減
「維新府政」のもとで、府民のくらしや大阪経済は全国や近隣府県に比べても落ち込んでいます(表3参照~2007年度と2012年度の比較:「県民経済計算」より)。
県民総生産 | 雇用者報酬 | 家計消費 | |||
大阪府 | ▼7.9% | 大阪府 | ▼8.6% | 大阪府 | ▼10.0% |
全国 | ▼6.7% | 全国 | ▼5.5% | 全国 | ▼4.3% |
兵庫県 | ▼6.1% | 兵庫県 | ▼6.1% | 兵庫県 | ▼3.9% |
京都府 | ▼4.5% | 京都府 | ▼10.6% | 京都府 | ▼6.1% |
府内製造業の事業所数は、2008年には5万3417事業所あったものが、2013年には4万3797事業所へと、5年間で1万カ所近く、18%も減少しています(総務省「経済センサス基礎調査・活動調査」より)。
大阪府商店街連合会や府・大阪市小売市場連合会に加盟する商店街数は847(2007年)から667(2013年)へと減少、小売市場数も143(2007年)から36(2013年)へと激減です。大阪府が2013年から調べた独自の全数調査でも、2013年5月調査で1191(商店街1029、小売市場162)だったものが、2014年4月調査では1135(商店街1007、小売市場128)と減少しています。
こうした厳しい状況におかれている中小商工業者を応援していくことが求められているにもかかわらず、維新府政のもとでは、ものづくり中小企業や商店街などを支援するための予算や人的体制が大幅に削減され、その施策は貧弱なものとなっています(表4参照)。
年度 | 2007 | 2014 | |
ものづくり支援関連 | 決算額 | 8億7100万円 | 2億5800万円 |
担当職員 | 33人 | 27人 | |
小売商業支援関連 | 決算額 | 1億2500万円 | 2200万円 |
担当職員 | 11人 | 7人 |
【ものづくり中小企業支援事業】
製品、技術開発補助金は、以前は450万円~500万円あったものが、2014年度の事業では150円~200万円へと減額され、支援事業数も20(2007年度)から、9(2014年度)へと減少。
【小売商業支援事業】
2事業が実施されたのみで、そのうちの一つの事業を活用したのは3商店街に留まるなど、減少したとはいえ府内1千を超える商店街の振興にふさわしいものとなっていない。
(2)ものづくりの高い技術力と集積を守り発展へ~支援強化を
ものづくり中小企業のまち・東大阪市では、日本共産党市議団や民主団体が協力して取り組んだ独自の実態調査(2013年に実施し市内1163事業所から回答)の結果、事業主の高齢化が進んでいる実態が明らかとなりました。5年後、10年後には廃業するという事業所が多く、ものづくりの高い技術力や集積が失われることが懸念されています。一方、多くの事業所が「何らかの支援があれば事業を継続したい」と答えており、必要な支援策を実施することによって高い技術力や集積を維持・発展させることも可能です。
ものづくりの高い技術力や集積は大阪の強みであり、それを守り発展させることが必要です。技術や製品開発、後継者の育成や金融支援など、実効ある施策を実施するためにも、中小企業家や様々なジャンル(医療や介護、その他)の専門家なども交えた検討会などを設け、具体的支援策を検討・実施することが求められます。
(3)各地域・商店街のニーズに応じた支援策を
各地域・商店街によって、それぞれおかれている状況が違います。商店街の振興を図るためには、それぞれの商店街に応じた施策が必要であり、市町村との連携を強め、実態を把握した上での支援策の具体化が求められます。
そのためにも人的体制や予算を拡充し、支援メニューも豊富にすることが必要です。
安心・安全の福祉と防災のまちづくり~予算と施策の復元・強化を
(1)浸水対策や土砂災害対策、住宅耐震化などのさらなる推進を
大阪府内で時間雨量50ミリを超える豪雨回数が増えています(表5参照)。
50ミリ以上 | 80ミリ以上 | |
1964年~1993年の30年間 | 59 | 0 |
1994年~2014年の21年間 | 110 | 13 |
2010年~2014年の5年間 | 37 | 5 |
大阪府では、浸水対策のための下水道増補幹線整備を進めていますが、2014年度末までの進捗状況は、全体計画60㌔㍍の約7割、40㌔㍍が完成。総事業費1600億円のうち1200億円の事業を実施し、残事業は400億円となっています。
大阪府の中期整備計画案では、下水道増補幹線整備を2023年から2030年の間に完成させることとなっていますが、2014年度の執行額(約19億円)程度では20年以上かかってしまい、府の整備計画からも遅れてしまいます(表6参照)。
年度 | 2007 | 2009 | 2010 | 2012 | 2013 | 2014 |
国事業費(全国) | 14,432 | 13,712 | 10,544 | 9,763 | 10,407 | 9,873 |
府決算額合計 | 445 | 232 | 187 | 152 | 156 | 133 |
内、新設、増補幹線 | – | – | – | 20 | 28 | 19 |
内、新設、その他 | – | – | – | 76 | 48 | 41 |
改築更新 | – | – | – | 56 | 79 | 73 |
「新規、その他」は処理場増設や汚水幹線整備、ポンプ場など
流域下水道建設費(2007年度と比べ2014年度は3割程度に大幅減)を確保しながら増補幹線整備などを進めていくことが必要であり、増補幹線とつなぐ地下河川整備も促進していかなければなりません。
また、大阪府の山地災害危険地区(住宅や道路といった保全対象となる施設があるなど、林野庁の調査要綱に基づいて定められ明示された災害危険地区)は1355カ所ありますが、対策が講じられているのは451カ所(33・3%)にとどまっています。例年、治山事業の取り組みは復旧対策が主であり、事前の予防策にはほとんど取り組めていないのが現状です。
住民の命と安全を守るためにも対策が未着手となっている山地災害危険地区での事前の防止策・予防策に、より積極的に取り組むべきです。
住宅耐震化の問題では、大阪府の「住宅・建築物耐震10カ年戦略プラン」で、2015年度末での住宅耐震化目標は90%となっていますが、その到達は住宅全体戸数393万戸のうち65万戸が耐震性不十分となっており、全体で83・5%の到達見込みです。木造戸建住宅については、135万戸中39万戸の耐震性が不十分で、その到達見込みは71・4%とさらに低い耐震化率となっています。
今後、大阪府として、新たな耐震改修促進計画を策定していくことになりますが、耐震化を促進するための支援策についても、各種耐震補助(耐震診断、耐震設計、耐震改修、除去)に加え、住み替えへの支援を含め、住まい手のニーズや種別に沿った支援策の検討とその具体化が求められます。
(2)府営住宅戸数削減の中止、空地・跡地の有効活用による戸数維持と福祉施設の建設を
大阪府では、「維新府政」のもと、府営住宅(管理戸数13万4千戸)の1万戸削減が方針化され、住宅建替え時には戸数削減が行われています。
2014年度に建替え事業最終期の本体工事を実施した7つの住宅における管理戸数でみても、近隣団地を集約した1住宅を除いた6住宅の合計管理戸数は、建替え前の3004戸から2397戸へと79・8%に減少しています。
府営住宅の応募倍率は、2014年度では平均13・4倍、最高倍率は187倍に達しているなどきわめて高い状況です。平均以上の応募倍率となっている住宅が148住宅、50倍以上の住宅が36住宅、100倍を超える住宅が6住宅あるなど、多くの府民が府営住宅への入居を希望しています。
低所得の方々が低廉な家賃で入居できる府営住宅をしっかりと確保していくことが必要です。府営住宅の建替えにあたっては、高層化等によって生じる空地・跡地を有効に活用し、住宅の戸数増や特養ホームをはじめとした福祉施設の建設などを図るべきです。
大型開発推進、カジノ誘致ではなく、くらしと営業の応援を強めることこそ
2014年度だけで、特別区設置協定書策定など「大阪都構想」のために5億5千万円がつぎ込まれました。
松井知事は、「都構想」が実現すれば2700億円の財政効果があるかのように盛んに宣伝していましたが、決算委員会審査の中で、それが全くのでたらめであることが明らかになりました。
「都構想」の狙いは、大阪府と大阪市の財源を一本化して、一人の指揮官によって、ムダな開発にドンとつぎ込むことです。しかし、府民と大阪経済にとって必要なのは、関西国際空港に行く時間をほんの数分縮めるための高速鉄道・なにわ筋線の建設やカジノの誘致などではありません。
大阪府がやるべきことは、府民生活と雇用を守り、中小商工業者の経営をしっかりと応援していくことです。公共事業についても、浸水対策や土砂災害対策、住宅耐震化や福祉施設の建設など、安心・安全の福祉・防災型、くらし密着型への転換こそが必要です。
日本共産党大阪府会議員団は、そのための具体的提案もしっかりと行っていきながら、実現に向けて大いに奮闘する決意です。
(大阪民主新報、2016年1月24日付より)