大阪から問う 安倍・維新政治
⑤働くルール
閉ざされた〝正社員への道〟
「3年後に仕事がどうなるのか本当に不安」。大阪府内の1部上場企業で派遣社員として勤務する女性が語ります。
昨年9月、与党が強行可決した改悪労働者派遣法が施行され、記者や通訳など専門26業務で働く派遣労働者も派遣期間が最長3年にするなど、業務ごとの期間制限をなくし、企業側が派遣労働者を使いやすく受け入れ可能となりました。
女性は語学を活用して働きたいと学生時代に米国留学。貿易会社に勤務し、海外取引の英文書類の作成業務を担当する一方で、独学で資格試験に挑戦し、専門能力の向上へ努めてきました。
「頑張ればやりがいの持てる仕事に就けると信じてきました。いつか正社員になれると思っていたけれど、法改正で専門業務の区別は廃止。厳しい雇用環境の中で正社員になる道は、閉ざされたように感じます」
厚生労働省の発表によると、全国の派遣労働者数は昨年6月1日時点で約134万人に上り、7年ぶりに前年を上回ったことが分かりました。2008年のリーマンショック以降、派遣労働者数は減少していましたが、前年より6・7%の増。若い世代の2人に1人が非正規労働者で、20〜30代の3割が年収200万円未満。青年をモノのように使い捨てる雇用のあり方の抜本改革が求められています。
通訳士として働く別の女性も、専門業務として派遣で勤務。派遣法改悪について、「『正社員への道を開く』という政府の説明は、とても信用できません。安定して働ける雇用と生活に必要な賃金を保障する社会になってほしい」と話します。
ブラックバイトがはびこり
府内のハンバーガーチェーン店で働く23歳のAさんの時給は859円。府内に適用される最低賃金額をわずか1円上回るだけです。週6日働いて月収13万円ほどで、家賃や食費、光熱費だけで10万円を超えます。
「経済的にぎりぎりの生活で、貯蓄に回す余裕はありません。時給アップが一番の願いです」
日本大学学生生活実態調査の学生アルバイト理由によると、1994年に第1位だった「旅行・交際・レジャー」(52・7%)が2012年には半減、「生活費・食費のため」が2倍以上の47・2%に上ります。
280円均一メニューの居酒屋チェーンで働くC君は、勤務時間が時給に反映されないサービス残業を強要。タイムカードを押した後に、店舗内の掃除や食器洗浄をさせられたこともあります。
平日午後9時から深夜3時まで飲食店のアルバイトをする大学2年のB君。学費と生活費のため月額12万円の奨学金を借り、卒業後に600万円の返済が待っています。
「日曜日は朝から夕方までスーパーで働いています。そうしなければ学費が払えません。試験中でも『日曜働けるのは君だけ』と休ませてくれませんでした」
最賃の撤廃を主張した維新
ブラックバイトやブラック企業がまん延する背景には、利潤第一主義で正規雇用を減らし、非正規雇用を拡大してきた大企業と労働者派遣法の改悪など、大企業応援の歴代自民党政治があります。
現在の日本の最低賃金は平均798円と、国際的にも低水準。フルタイム勤務でも年収は150万円に届かずワーキングプアの原因です。
最低賃金をめぐっては、国政政党「おおさか維新の会」の前身、日本維新の会が選挙政策で、「最低賃金制度の廃止」「市場メカニズムを重視した最賃制度への改革」などと主張。賃金水準引き上げに動く世界の流れに逆行し、最賃引き上げに抵抗する財界要求を忠実に代弁しました。
アベノミクスと称するゆがんだ経済政策は、大企業に戦後最高の利益をもたらす一方、実質賃金低下や社会保障改悪など、労働者と国民の暮らしを追い詰めています。
ブラック対策進めてきた党
今政治に求められているのは、大企業の横暴を規制し貧困解決を進める経済政策です。
日本共産党は2013年の参院選での躍進を受けて、「ブラック企業規制法案」を参議院に提出。その直後に、厚生労働省が事態調査に乗り出すなど、政治を大きく動かしてきました。
辰巳孝太郎議員は3月28日、参院予算委員会で、ブラックバイトの実態を告発、「若者が使い捨てられる社会に未来はない」と追及しました。
辰巳議員が告発したのは、コンビニ大手・セブンイレブンが実労働時間を15分単位で切り捨て賃金をカットする勤務管理システムを運用している問題。「まさに賃金泥棒だ」「こんなごまかしが横行する社会では、労働者や学生たちがやりがいを持って働けない。違法行為を許さないために、実態を調査し指導すべきだ」と要求しました。
さらに高校・大学の公教育に、労働者の権利や問題解決の手段も含めた実践的な「ワークルール教育」の位置付けを求めました。答弁で厚労相は、辰巳氏の指摘について多くが法令違反だと明言。「指導しなければならない」と述べました。
日本共産党のわたなべ結参院大阪選挙区候補は1月、貧困と格差の根源となっている最低賃金の大幅引き上げや、世界で異常な高学費と奨学金の抜本改革などを求める「大阪若者提言」を発表。志位和夫委員長は3月17日、①国立も私学も10年間で学費(授業料)を半減②月額3万円(年間36万円)の給費奨学金を70万人に支給③今すぐどこでも時給1千円に引き上げさらに1500円を目指す――との政策提言を発表しました。
(大阪民主新報、2016年5月1、8日付合併号より)