政策・提言・声明

2006年12月11日

希望をもって安心して子どもを生み育てられる大阪に

2006年12月11日
日本共産党大阪府委員会

はじめに ―少子化対策は国の最重要課題―

 今年7月に政府が発表した、日本の特殊出生率1・25人という数字は多くの人を驚かせました。大阪の出生率は、1・16人と全国ワースト5位で、調査のたびに少子化が進んでいます。
 厚生労働省は、05年の特殊出生率を1・26人と修正すると発表しましたが、5年連続の減少は変わりありません。内閣府で決定された、06年度の「少子化社会白書」では、日本は「超少子化の国」と定義し、少子化対策を国の最重要課題と位置づけました。

 05年「少子化社会白書」も「このまま低出生率が続けば、2100年には6千万人程度・少子化の進行は日本社会の持続性に対して疑問を投げかけている」と述べているほどの深刻さです。
 「急速な少子化の流れは、社会保障の安定を損ない、社会の担い手、新たな技術革新を担う人材の不足など我が国の社会経済に大きな影響をもたらし、国の将来をあやうくするおそれがある」と、政府自身もいわざるを得ない状況にあります。まさに、少子化の進行は日本社会の基盤を揺るがす重大な問題です。

 どうしてこうなったのでしょうか。
 政府の「少子化社会白書」では、少子化に歯止めがかからない背景について、①長時間労働や育児休業制度などの十分な活用が進んでいないこと②保育所待機児など地域の子育てを支えるサービスが不十分③失業や不安定雇用など「若者が社会的に自立し、家庭を築き、子どもを生み育てることが難しい社会経済状況となっていることをあげています。
 各種世論調査でも、少子化問題を解決するために期待する政策として、5割以上の人が「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」、「子育てにおける経済的負担の軽減」をあげています。

 このように、少子化の原因が、①仕事と子育てが両立しない労働の実態②不足する出産・子育て支援策③「世界一高い大学学費」などの経済的負担にあることは明らかです。

 ところが、政府や財界・大企業が行ってきたことは、少子化問題の解決に逆行するものでした。大企業は空前の利益をあげる一方で、労働者をリストラし、あいつぐ労働法制改悪のなかで、24歳以下の若者の2人に1人が派遣などの非正規雇用になり、大阪では、働く女性の5割以上が非正規雇用です。大阪府がすすめる企業誘致も、補助金を出しながら正規雇用は3割にすぎない実態があり、サービス残業や偽装請負などの実態も多くあります。「子育て環境の大きな位置を占める公立保育所は、94年から06年までに75カ所の公立保育所が民営化され、政府は「待機児ゼロ作戦」を掲げる一方で、大阪では、待機児が全国一の状況です。

 厚生労働白書は、労働時間が長い地域、同年齢の女性労働者の非正規雇用の多い地域ほど出生率が低いと分析しています。これにてらしても、政府や財界・大企業、大阪府が本気になって子育て支援に取り組むことが求められています。
 とりわけ大阪は厳しい状況におかれています。企業倒産は、全国の14%を占め、生活保護率は全国平均の2・7倍になっています。児童虐待は、全国の11%を占め、全国一多い状況になり、就学援助をうけている児童は、全国平均の2倍強で4人に1人が受けています。

 いまこそ、根本原因にメスを入れ、その解決のために力を合わせるときではないでしょうか。

府民の願いと運動が政治を動かす一番の力

 府民の願いと運動が政治を動かす一番の力。これが、私たちの確信です。

 この20年間、大阪保育運動連絡会など保育4団体は、保育所の待機児解消や父母負担軽減を府に求めて、100万に届く署名運動をすすめてきました。日本共産党府会議員団は、保育運動とも連携し公立・認可保育所の整備を知事に認めさせ、5年間に保育所86園を新設し、入所児が2万人近く増えています。

 04年には、岸和田市での中学生虐待事件で共産党府会議員団は、府へ「子どもを虐待から守るための緊急申し入れ」をおこない、府議会には「児童虐待防止対策の強化を求める意見書」を出し、採択させています。ねばり強い運動で06年度から小学1年生、07年度から小学2年生で35人学級が実現しました。昨年4月からは、小学校への警備員配置も実現しています。

 大阪市政では、小学校の米飯給食を週2回から週3回に拡充させ、乳幼児医療費助成は、02年度には通院で小学校就学前までに拡充されました。

 日本共産党は、これらの府民の願いと運動に議会内外で協力し、実現の先頭に立ってきたことを何よりの誇りにしています。大阪市での乳幼児医療費助成の充実も、これまで18回も条例提案をおこなうなど、市民の運動とむすび、ねばり強く取り組んできたことが実現の大きな力となりました。

 日本共産党大阪府委員会は、少子化に歯止めをかけ、安心して産み育てられる大阪にするために、国と大阪府など自治体に次のことを要求し、府民のみなさんと力を合わせ、実現に奮闘します。

希望をもって子どもを生み育てられる大阪へ日本共産党の提案

 日本経済団体連合会は95年に「新時代の『日本的経営』」を発表し、それまでの日本の伝統的雇用形態であった、終身雇用制、年功序列型賃金から、①終身雇用型(長期蓄積能力活用型)、②有期雇用型(高度専門能力活用型)、③パートや派遣など非正規雇用型(雇用柔軟型)の3類型に分け、パートや派遣などの増大を求めました。政府は財界・大企業の方針にそって「規制緩和推進計画」をすすめ、労働時間法制の規制緩和、女子保護規定の撤廃、労働者派遣法の全面見直しなど、労働基準法の改悪がすすめられてきました。国会の法案審議では、自民・公明・民主党などがこれらの法案に賛成しました。日本共産党は対案を掲げて改悪法案に反対し国民とともにたたかいました。こうした悪法の根本からの改革が必要です。

①出産・育児と仕事が両立できる労働環境を

(ア)労働時間を短縮し、安心して働き続けられるルールをつくります

 男女を問わず異常な長時間労働をなくし、サービス残業や非正規雇用を是正し、人間らしい働き方を確立することは、少子化問題解決のために不可欠であるとともに、新たな雇用創出という面でも重要なカギになっています。

(イ)不当な雇い止めや「妊娠解雇」など、職場の異常な無法状態をやめさせる

 多くは月収10万円という低賃金で働き、いらなくなれば使い捨て、その上に、女性の場合は妊娠すると企業からはじき出される「妊娠解雇」。こうした職場の異常な無法状態をやめさせ、人間らしい労働のルールを確立することは、少子化問題解決の大前提です。
 国際法や国民の運動によって、今回の「改正男女雇用均等法」では、事業主は、女性労働者が母子保健法に基づく、妊産婦健診を受診するための通院時間を確保することが義務化されるなど、妊娠出産に関する不利益取り扱いの禁止の拡大がされています。
 日本共産党は、格差をゆるさず派遣やパートなど非正規労働者も、妊娠・出産にともなう差別・不利益扱いなどを禁止します。
 男女平等をすすめるためには、表向きは性別に関係のない中立的取り扱いであっても、結果として男女間に不均衡をもたらす「間接差別」(募集・採用における身長・体重・体力要件、総合職の募集・採用における全国転勤要件、昇進における転勤経験要件の三つに限定)を、条件をつけずに、禁止させていくことを求めます。改正均等法付帯決議の「間接差別は省令で規定されていない差別も司法裁判で違法判断される可能性があることを周知する」、パート労働者について「正社員との均等処遇に関する法制化をすすめる」などの活用をすすめます。
 「ILOのパート条約」や「母性保護条約の批准」、最後の手段として国連に訴えることのできる「女子差別撤廃条約選択議定書」の早期批准をはかるなど、地方自治体へも働きかけ、女子差別撤廃条約の締結国として責任を果たすことを求めていきます。
 同一労働にたいする同一賃金を徹底します。また、育児介護休業制度を改善し、期間延長や所得保障の改善、家族休暇制度、労働時間短縮制度の拡充などをすすめます。仕事と子育ての両立支援とともに、出産、育児などで退職した女性の再就職支援をつよめます。
 大阪府など地方自治体の役割も重要です。大阪府が補助金10億円で誘致したサンヨーの太陽電池工場のうち6割近く、大阪府・大阪市で30数億円出す予定の旭硝子は8割以上が請負労働者です。多額の府民の税金をつぎ込みながら、不安定雇用を拡大するようなやり方は抜本的に改めるべきです。そして、大企業に正規雇用の拡大を働きかけるとともに、「偽装請負」など、違法・脱法行為を行った企業とは官公需の契約をしないなど、厳しい措置を求めます。

(ウ)中小商工業者の命と健康を守るために

 日本経済の底辺を支え、活力の源泉である中小商工業は、地域産業を守り、雇用者の約8割の働く場を担っていますが、その中小商工業者の実態も深刻です。全国の倒産件数の約14%(04年)を占める大阪では、廃業が増えつづけ、営業収入だけでは生活できないと、業者婦人の6割がパートに出て生計をたて、業者青年は厳しい営業の中で結婚したくてもできないのが現状です。
 大阪商工団体婦人部協議会の調査によると、陣痛が来るまで働いていた人は、43・3%にものぼり、労働基準法で産前6週間、産後8週間と定められている出産休暇も、業者婦人の多くは守られていません。
 日本共産党は、国民健康保険に、出産手当、休業補償制度を新設するとともに、失業給付、出産休暇や育児休暇や介護休暇など、労働者に認められている権利を業者にも保障することを強く求めます。

②出産・子育て支援策の充実

 政府の「少子化社会白書」も保育所待機児など地域の子育てを支えるサービスが不十分なことが少子化の大きな原因であることを認めています。

 国は、「待機児ゼロ作戦」をかかげましたが、必要な予算は確保せず、保育所は定員オーバーの詰め込み状態。しかも、待機児は解消どころか増え続け、大阪市の待機児数は全国一です。
 仕事と家庭生活を両立させるためには、学童保育の整備も不可欠です。ところが大阪では学童保育においても1500人の子どもが待機しています。しかも100人以上の大規模学童保育所が増え、子どもが快適に生活することすら困難になっています。

 また、全国の分娩施設は6398施設から3063施設に、この4年間で、50%余り減少し、大阪では2年間で、241施設から206施設へと減少するなど、産科不足の解消も急務です。

 日本共産党は保育施策の充実し、待機児解消、小児救急医療の充実や産科不足の解消など子育て支援に全力をつくします。

 国と自治体の責任で保育所建設をすすめ、大規模学童保育の解消、補助金の大幅増額、指導員の身分保障を確立します。希望するすべての子どもが入所できるようにします。新しく実施された「認定こども園」は、現行の保育所や幼稚園の水準を下回ることのないよう、子どもの年齢区分や、保育従事者の配置、屋外遊技場の設置など規定をみなおします。
 「放課後こどもプラン」を充実させます。70名を超える学童保育は複数学級にし、働く親の労働時間にあわせた保育時間の延長をします。安全な放課後のために全児童対策を充実させ、学童保育と放課後こども教室推進事業を一体化させることなく、それぞれの特徴を生かし事業拡充をすすめます。
 小児救急医療体制を整備します。全国ワースト1の児童虐待を無くすために、児童相談所職員、心理療法士を増員します。
 国と自治体の責任で安心して出産できる施設・病院を地域で増やします。不妊治療のための公的補助制度を行います。周産期医療の拡充をはかります。
 安い費用でお産ができる「入院助産制度」を生活保護世帯に関わらず利用できるように拡充します。
 生涯を通じて健康上の問題などについて、すべての男女が適切な性教育や、情報提供をうける機会、性差に配慮した医療や気軽に相談できる機会と場所を確立します。

③子育てにかかわる経済的負担の軽減を

 子どもを大学までいかせるのに、2千万円かかるといわれる状況のなかで、政府の「少子化社会白書」(05年)によると、乳幼児のいる世帯の32%が年収400万円以下と言われています。子育てにもとめる対策のトップが、「経済的支援」であり、子育てへの経済的負担が少子化問題の大きな要因であることは明らかです。

 福井県では、経済的負担の軽減の施策をすすめ、05年は、出生率1・47%(全国2位)となり、全国で唯一出生率をプラスに転じています。働きながら子育てしやすい環境づくりに取り組み、保育所の待機児を解消。3人目以降の子どもは、産まれる前の妊婦健診費から、3歳に達するまでの医療、保育にかかる経費は原則無料になっています。3人目以降の子どもの保育料は、3歳未満まで10分の1に軽減しています。

 こうした取り組みを、国も大阪府も見習うべきです。ところが大阪府は反対に、全国一高い府立高校授業料やクーラー代の徴収など子育てにかかわる経済的負担を増やしてきました。

 日本共産党は、子どもの医療費無料化をすすめます。小学校就学前までの子どもの医療費無料化は、全国23都道府県で実施されています。一部負担金や所得制限をなくし、現行(通院3歳未満・入院就学前まで、所得制限あり、一部負担あり)の府の助成を小学校、中学校までの無料化をすすめ、児童手当を拡充します。
 全国一高い府立高校授業料の値上げや府立高校の統廃合にストップをかけ、私学助成や就学援助の充実をはかり、有利子の奨学金を見直します。クーラー代の徴収はやめさせます。欧米諸国の半分に満たない高等教育予算を大幅に増額し、世界一高い大学授業料・入学金を引き下げます。私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成制度をつくります。

④少子化の進行に歯止めをかけるためにも女性の地位の向上が必要です

 女性にたいする差別を是正し、生きいきと力を発揮できる平等な社会にすることは、少子化問題の解決のためにも重要です。日本共産党大阪府委員会と党府会議員団は、01年の大阪府男女共同参画推進条例策定にあたっては、「男女平等条例」にすること、苦情処理の第三者機関の設置、あらゆる女性差別の禁止、母性保護、少子化問題解決のためにも、家族的責任は男女と社会全体で負うこと、子育てと仕事の両立支援は、大阪府と事業者がもち、府民はその権利をもっていることなど、大阪府に申し入れています。日本共産党は、あらゆる分野での真の男女平等の実現に奮闘します。

 政策決定の場へ女性の平等参画を推進します。大阪府など地方自治体の各種審議会や管理職への女性の登用をすすめることをもとめていきます。
 セクシャル・ハラスメントは重大な人権侵害です。セクシャル・ハラスメントを禁止し、より実効あるDV防止・被害者の自立支援をすすめます。府立の支援センター増設、相談員の増員と研修の充実、民間シェルターへの助成、加害者更生対策の確立・強化、子どもの心身のケアなどをつよめます。
 選択的夫婦別姓制度を早期に実現し、女性だけの再婚禁止期間や婚外子への差別など、法律上の差別を是正します。
 経済力世界第2位を誇る日本女性の社会進出度は世界43位です。不名誉な実態を改め、経済力にふさわしい女性の地位を世界水準に高めることを求めます。

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