おおさかナウ

2016年08月14日

維新政治〝何でも民営化〟で災害対策に逆行
被害減らすための備えを
大阪市をよくする会 防災テーマに学習会
「公助」の充実 強化すべき

 

 大阪市をよくする会は7月29日、大阪市中央区内で、防災をテーマに学習交流集会を開催。約50人が参加し、大阪の防災対策の現状や各地域で取り組まれる減災・防災の運動を交流。「防災・安全のまちづくりを進めよう」と意見を交わしました。

南海トラフで死者13万人も

市民の命と暮らしを守る災害に強い大阪をと開かれた学習会=7月、大阪市中央区内

市民の命と暮らしを守る災害に強い大阪をと開かれた学習会=7月、大阪市中央区内

 南海トラフ巨大地震が起きた場合、約2時間後に津波の第1波が大阪市住之江区に到達、それ以降6時間にわたって6波が押し寄せ、仮にM9規模の地震の場合、大阪駅前で2㍍の浸水被害など、キタ、ミナミの繁華街を含め広範な地域で浸水被害が起きると想定されています。
 液状化現象で道路も寸断され、停電や断水などライフラインにも重大な影響が及びます。大阪市営地下鉄は洪水氾濫による危険性が極めて高いとされ、多数の帰宅困難者が生まれます。大阪市内には全壊・半壊の危険性が高い木造密集住宅も集中しており、府の被害想定では死者約13万人、津波避難者106万人超と甚大な被害が起きるとされています。

 万一の災害に備えた防災・減災対策として、ハード面では液状化による地盤沈下で重大な影響を受ける防潮堤の耐震化や、地下街への浸水を防ぐ止水対策、帰宅困難者支援のための避難ビルの確保など、ソフト面では、ハザードマップ普及はじめ地域の防災体制の強化、学校現場での防災教育充実や、高齢者、障害者らの避難誘導体制強化などが指摘され、さらに木造密集住宅の対策強化や、湾岸部のコンビナートへの対策など大阪特有のリスク対応も求められています。

 学習交流会の主催者あいさつで福井朗事務局長は、「最新の科学的知見でも正確な地震予測はできないが、被害を減らすための備えの重要さに目を向け、いま何が必要かを学び合いたい」と述べました。

 日本共産党の小原孝志市議が、大阪市の防災対策の現状について報告。小原議員はまず、東日本大震災の教訓や南海トラフ巨大地震の被害想定を受け策定された「大阪市防災計画」「大阪市地域防災アクションプラン」などについて述べ、「大阪市防災計画の最大の問題点は、『公助の限界』を強調していることだ。災害対策で『自助』『共助』はもちろん重要だが、本来強化すべきは『公助』の充実だ」と述べました。

最前線の職員が削減されて

 「都構想」を「副首都構想」と言い換え大阪市廃止に再挑戦する維新政治を批判。二重行政解消を口実にした大学統合や病院解体、保育所民間移管などの問題に加え、水道事業民営化の動きや秋にも地下鉄民営化基本方針案が示される問題点を詳述しました。
 特に港湾部局や上下水道など、ライフラインの最前線で市民サービスを担う職員数が減り続けている弊害に触れ、「何でも民営化で、公的責任は後退し災害対策にも逆行します。市民の命と暮らしを守るための防災体制を再構築するために、力を合わせていきましょう」と呼び掛けました。

参加者が意見交流

 フロアからの発言で各行政区の取り組みを交流しました。

地域で現状知り解決目指す

 人口約8万5千人の港区では、約1割を超す9800人の死者が出ると想定されています。同区から参加した男性は、防潮堤耐震化の国家予算があまりに少なく、対策が遅れていると問題視。住民グループ「津波高潮対策実行委員会」「震災対策協議会」を組織し勉強会を重ね、行政機関に防潮堤の耐震化促進などを求めてきました。
 13年には、日本共産党国会議員団や地元行政関係者を迎えて、尻無川や三十間堀川などの現地調査を行い、今年度から関連事業が動き出したと述べ、「地域住民みんなで災害対策の現状を知り、認識を共有し合い、不安解決を目指していきたい」と語りました。

災害弱者の防災対策が急務

 「障害者や高齢者ら災害弱者の防災対策が急務」と、住吉区から参加した男性は強調しました。障連協が実施した24行政区に福祉避難所の運営計画を尋ねたアンケート結果に触れながら、災害時に福祉避難所となる協定施設数に、区ごとに大きな差があることや、災害時の支援体制強化などの課題が残されていることを指摘。中央区から参加した男性は、UR団地が災害時の避難ビルに指定されている問題や、公立医療施設の移転問題をめぐり、災害に強いまちづくりのため民間まかせの売却方針には問題があると述べました。

学校統廃合で避難所に影響

 各地で進む小学校統廃合をめぐり、地域防災対策に影響が出ているとの指摘が相次ぎました。
 生野区の男性は、同区が12小学校を小中一貫校など4つに統合する計画を打ち出しており、避難所となる学校までの距離が大幅に伸び、片道45分以上かかるケースもあると指摘しました。
 浪速区から参加した男性は、区内全学校区で取り組まれる避難所開設運営訓練について発言。3校を廃校し新たに小中一貫校を新設する計画があり、「学校がなくなる地域は、災害時の避難場所確保が困難になる」と指摘。「避難場所も避難方法も分からない」との地域住民の声や、備蓄物資や加圧式消火ポンプなども不足しているが、行政は予算がないとの回答だったと述べました。

自治体のあるべき防災対策は何か

共産党中央委・高瀬国民運動委員会委員が講演

  日本共産党中央委員会の高瀬康正・国民運動委員会委員が「防災と自治体の責務」をテーマに講演しました。

行政の重い責任規定した基本法

講演する高瀬康正氏

講演する高瀬康正氏

 災害対策基本法は「国民、住民の生命、身体および財産を災害から保護する」(第3条)と国と地方自治体に対し災害から国民を守るための重い責務を規定しています。

 ところが国の災害対策の考え方は、「自助、共助、公助」。自分の身は自分で守るという「自助」の考えが基本にあり、余裕があれば家族や近隣を助け、それでもまだ困ったとき、初めて行政の力を求めるという考え方です。

 高齢化が進行する日本では、総人口に占める65歳以上の割合は26・7%(高齢社会白書2016年版)。2060年には2・5人に1人が65歳以上になると推計されています。
 阪神淡路大震災では、犠牲者の圧倒的多数は密集市街地の木造住宅倒壊による圧死でした。大阪には高齢世帯が多く、築年数の古い団地が多数あり、耐震補強工事が不十分な木造住宅密集地が集中しています。災害対策基本法の趣旨から見ても、自助という考え方には重大な問題があると思います。
 熊本地震では、1980年以前に建築された建物の被害が大きく、これは阪神淡路大震災の時と同じ傾向です。避難所不足も深刻で、多くの被災者が車中泊を余儀なくされました。1年無償で市営住宅を提供する事業は競争率が高く、25人に1人しか入れない状態でした。

 災害発生時から復旧・復興に向かう各ステージで、被災者が求める行政への支援策は、住宅関連の内容が大きいと言えます。

住宅の支援は最優先の災害対策

 災害直後から避難所暮らしが始まり、その後応急仮設住宅に移り、さらに復興段階は災害公営住宅や自立に向かうケースもあります。
 ところが現実には、東日本大震災から5年過ぎた今も木造仮設住宅で暮らす世帯は6万人に上り、岩手大槌町では全員退去は2021年3月になるという現状です。

 復興公営住宅について阪神淡路大震災の教訓ですが、市街地中心部から遠く離れた場所に建てたため、長年続いてきた地域コミュニティが破壊され、生きがいを失い孤独死につながる事例など深刻な社会問題になりました。
 阪神淡路大震災の直接死5502人に対し、震災関連死は932人で16・9%。東日本大震災でも同じ傾向で、関連死は18・5%。福島に限ると震災関連死は111・9%と高く、熊本地震でもすでに震災関連死が起きています。
 プレハブではなく地域の風土に適した木造仮設住宅建設は地域経済にも効果的だと、全国21都県で災害協定が結ばれ、民間賃貸住宅を借り上げて提供するみなし仮設住宅も制度化され、最大6万円の家賃補助と自分で住居を選べるという利点が好評です。

 防災対策の基本は、無秩序な宅地開発の規制やライフライン耐震化。津波対策や避難経路確保などソフト対策も重要です。最大の被害を想定し、地域の現状に合わせ防災計画を根本的に見直すことが求められています。

被災者の暮らしを直接支援する

 復興予算も問題です。東日本大震災の場合、2011年から20年までに32兆円の復興復旧予算を組みますが、被災者支援に回るのは2・5兆円。海岸部で海が見えなくなるような巨大な防潮堤など、これで漁業の復興ができるのか検証が必要な土木事業もあります。被災者の生活と現状からかけ離れた大手ゼネコン本位の事業から、被災者の暮らしを直接支援する予算に切り替えていくよう、運動を強める必要があります。




(大阪民主新報、2016年8月14日付より)

 

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