市民の願い届け維新政治と対決
日本共産党大阪市議の質問から
大阪市議会の各常任委員会での質疑が9月20日から3日間行われました。吉村洋文市長(大阪維新の会政調会長)が大阪市を廃止・解体する「大阪都」構想を蒸し返し、カジノ誘致へ突き進む中、日本共産党は市民から提出された切実な陳情の採択などを求めて各委員会で質問しました。
総合区素案の説明会は誤解生む
財政総務委員会で瀬戸一正議員
財政総務委員会(9月22日)で瀬戸一正議員は、「総合区」素案についての住民説明会を開くための補正予算案に反対する立場で質問しました。
「総合区」は政令市の存続を前提に、区の権限を一定拡大するもの。府市共同設置の副首都推進局が8月に公表した「総合区」素案は、大阪市の現在の24区を8区に合区。「総合区」が担う事務事業は「一般市並み」として、例えば認可保育所の開設について、事業者の募集・決定、設置認可を「総合区長が一元的に担う」と説明しています。
瀬戸氏は「総合区長ができるのは、あくまで市長が決めた計画・予算の範囲内だ。素案はそれを度外視して、総合区が一から整備する保育所整備計画を決めて実行できるかのように書いており、市民に誤解を与える」と批判しました。
また現在の区役所は、管轄地域の住民に対して出生届の受理などの業務を行い、市議会議員・府議会議員の選挙は区が単位だと指摘。そして区単位で区民まつりなどのコミュニティ育成事業も行われ、区役所がこれを支援してきたことを示しました。
瀬戸氏は「こんな風に大事に育てられてきた行政区を廃止して『合区』するにもかかわらず、そのデメリットに総合区素案はまったく触れていない。合区のメリットだけを書き、デメリットは書いていない素案の説明会の予算には賛成できない」と主張しました。
カジノに頼らず大阪の魅力こそ
都市経済委員会で小川陽太議員
都市経済委員会(9月20日)で小川陽太議員は、カジノを核とした統合型リゾート(IR)誘致と、大阪市立大学と府立大学の統合問題などについて質問しました。
吉村洋文市長は提案した補正予算案に、IRの事業設計や事業者公募のアドバイザー費用を計上。小川氏はマスコミ世論調査ではカジノ反対が多数で、国会でカジノ解禁の実施法案の審議も始まっていない中で、「2023年、24年のIR開業というスケジュールありきだ」と批判しました。
カジノができればギャンブル依存症はいっそう深刻になり、なくすことはできないとし、「射幸心をあおって人を不幸にするのがカジノの本質。こんなものに地方自治体が税金を使っていいのか」と追及。市側が「IR収益の社会還元を通じ公益を実現する」と答えたのに対し、IRはカジノの隠れみのだと断じました。
さらに小川氏は、大阪には外国人観光客が増えていると指摘。その目的は食事や買い物、道頓堀や大阪城などへの訪問であり、「カジノに頼るのではなく、大阪の魅力を生かした観光客誘致に務めるべき。カジノに固執して一般市民の所得が吸い取られ、ギャンブル依存症を増やす。こんなことで大阪経済にプラスにならない」と力説。大阪を活性化する本筋は、大阪市民・府民の懐を温める施策こそ必要だと述べました。
保育士を確保し利用定員を元に
教育こども委員会で井上浩議員
教育こども委員会(9月21日)で、井上浩議員は市立保育所の利用定員、学童保育への補助などについて質問しました。
橋下前市政の「市政改革プラン」によって2014年度から4年間で118人の保育士不足が生まれ、市立保育所の利用定員は450人も削減され、待機児解消に逆行する事態が生まれています。
井上氏は「16年度に採用を再開したことは公立保育所が必要だという証し。待機児解消は行政の責務であり、中心的な役割を担うのは公立保育所。必要な保育士を確保し、削減してきた利用定員を元に戻すことは喫緊の課題だ」と要望しました。
また橋下市政が改悪した1歳児の保育士配置基準や保育室の面積基準を元に戻し、安全確保を最優先すべきと求めました。
井上氏は、大阪市の学童保育は民設・民営で、家賃も高いと指摘。保護者負担をできるだけ軽くし、質を保ちつつ運営を継続するには家賃補助や、児童数10人未満の事業者への補助を行うべきだと求めました。
市側は、「すべての小学生を対象にした児童いきいき放課後事業が中心であり、学童保育は補完的役割」と新たな補助は行わないと答弁しました。
井上氏は「学堂保育と児童いきいき放課後事業は、車の両輪。両方とも実態に即して改善し、ともに底上げすることが必要だ」と述べました。
住吉市民病院の医療機能継続を
民生保健委員会で尾上康雄議員
民生保健委員会(9月20日)で尾上康雄議員は、住吉市民病院の廃止(来年3月末)後の医療機能の継続を求めて質問しました。市は廃止後の跡地に誘致しようとした南港病院が撤退を表明した後、あらためて民間病院を公募しようとしています。
尾上氏は今回の公募では、住之江区や西成区にとって重要な小児科の入院機能は必須条件ではなく、過去の公募水準から後退していると指摘。住吉市民病院の廃止後、新病院はできる限り早く暫定運営することが望ましいとの項目を入れていることから、「特定の病院で、産科入院と小児科外来という形ででも決定できる仕組みではないか」とただしました。
さらに住吉市民病院が果たしてきた重症心身障害児の短期入所について、現在の利用者の転院先がまだ決まっていないのは重大だと批判。「公募結果が出れば、新たな病院再編計画を決定する前に住民説明会を行い、住民との合意を得て進めるべき」と求めました。
また尾上氏は、国民健康保険の「都道府県化」に伴う保険料引き上げ問題で質問。市側が「急増した場合は激変緩和措置を講じる」と答えたのに対し、尾上氏は、「緩和期間が過ぎれば値上げになり、根本的解決にならない。今でも保険料は高すぎて払えない。市民生活の実態を見ない保険料に絶対にしてはならない」と強く主張しました。
移動の権利守る都市交通実現を
交通水道委員会で寺戸月美議員
交通水道委員会(9月22日)で寺戸月美議員は、市バスの利便性向上やコミュニティーバスについて質問しました。
大阪市営地下鉄・バスは来年4月に民営化されます。市側は、民営化後10年は市バスのサービスを低下させず、現在の路線は維持すると説明してきました。
寺戸氏は、東淀川・淀川・西淀川の3区を東西に結ぶ唯一のバス路線が十三大橋北詰で寸断されたことから、同路線の復活を求める陳情が5回出されていることなどを示し、「10年間はサービスを低下せないというが、市バスの利便性を良くしてほしいという市民の声に応えるべきだ」と強く求めました。
寺戸氏は、今議会に、大阪市24区の過半数の13区から地域コミュニティーバスの創設・運行を求める陳情が提出されていると指摘するとともに、赤バスの廃止(2013年3月末)後、各区で経費を負担してコミュニティーバスを運行することは困難で、買い物難民などが生まれている実態を紹介しました。
「誰もが、いつでもどこでも安全で安心して移動できる人権を保障する交通環境社会の実現は、市民とともに市が果たすべき責務だ」と寺戸氏。民営化後に大阪市の交通政策を担うべき都市交通局として、コミュニティーバスの創設・運行へ各行政区の支援を始めるよう、要望しました。
(大阪民主新報、2017年10月1日付より)