チェック!維新府政 府民のくらし守ろう
日本共産党府議団レポート
大阪府2018年度予算案
子どもと府民の貧困への抜本策なし
大型開発とカジノ誘致で将来の財政破綻も
松井一郎知事は2月17日の記者会見で、新年度予算は「豊かな大阪スタート予算」だと大見得を切りました。しかしその内容は、安倍政権の国民負担増から府民を守ることを放棄し、カジノ・開発優先をさらに強め、府民生活の落ち込みや子どもの貧困を放置するものです。
深刻な子どもの貧困、対策は不十分
母子世帯の半分近くが貧困状態にあるなど、大阪の“子どもの貧困”の深刻さが、昨年の府調査で明らかになりました(グラフ)。対策に取り組むとしていますが、新年度の予算と施策は極めて不十分です。
市町村への「子どもの貧困緊急対策補助金」を創設し、貧困家庭のサポートやひとり親家庭の雇用を促進するとしていますが、予算は1市町村当たり上限2千万円、合計3億円に過ぎません。
府内市町村の就学援助認定基準は、生活保護の1・0~1・3倍程度と、全国的にも低い水準です。しかも、困窮世帯でも就学援助を受けたことがない子どもがいます(グラフ)。安倍政権の生活保護削減が強行されれば、さらに多くの子ども?が就学援助から締め出される恐れがあります。
中学校給食は、橋下前知事肝煎りの補助制度で9割以上の中学で導入が進んだとしています。しかし選択制の市では喫食率が数%にとどまるなど、公立中学生の半数近くは給食を食べられていません。中学校給食費が就学援助の対象とならない市もあります。
府の調査では、「子どもを医療機関に受診させることができなかった」という回答が貧困家庭ほど多くなっています。子ども医療費は、京都府や兵庫県は県として中卒まで補助していますが、大阪府は6歳までで、あとは市町村任せです。
遅れる教育条件整備
貧困状態にある子どもほど学習理解度が低く、授業以外は勉強しない傾向が強まります(グラフ)。貧困の連鎖を断ち切るためにも確かな学力を育むことが重要ですが、維新府政は行き過ぎた競争教育を助長する一方で、教育条件整備には背を向け続けています。
35人学級は、1学年150人前後の教員増で府全体で実現できますが、新年度も府独自には実施しません。
生徒も学校も序列化する「中学生チャレンジテスト」は、新年度も2億7千万円をかけ実施します。
柏原東高校と長野北高校の廃止が提案されます。3年連続定員割れ高校を募集停止の対象とする府立学校条例に基づくもので、市議会が存続を求める意見書を全会一致で採択した柏原市などの地元の総意も踏みにじるものです。
支援学校の知的障害児数が今後10年で1400人増加するため、府は定員増計画を立てました。しかし新校建設は600人分程度で、開校は6年後以降になる見込みです。しかも、不足分は既存の支援学校や府立高校への詰め込みで対応するとしています。
命と健康を軽視、中小企業支援は後退
子ども医療費補助などの対象者は受診1回につき窓口負担500円のみですが、障害者は4月から院外薬局でも負担が加わります。月合計負担も2500円以内だったものが3千円に引き上げられます。しかも、65歳以上の、1級以外の精神障害者と重度以外の難病患者への補助は2021年3月限りで打ち切る予定です。新たに精神障害者を補助対象に加えるものの、府の医療費補助予算全体は前年度より減っています。
国民健康保険料は、新年度は市町村が独自に決める方向ですが、府は6年後をめどに府内一本化し、低所得者に大幅値上げを押しつける計画です。国保への府の法定外補助は前年度からさらに削減し、維新府政前の半分(加入者1人あたり487円)です。
重篤患者の救命にあたる救命救急センター、児童虐待に対応する子ども家庭センターの抜本拡充や、保育士・介護士の処遇改善などは見送りです。
中小企業への支援も維新府政は削減し続けてきました。ものづくり支援予算は2007年度の4分の1、商店街など小売業振興予算は96%減です。中小企業の資金繰りのための融資も、新年度は「セーフティネット系」が250億円削られ「成長支援型」に回されます。
商工会などを通じて中小企業の事業承継を支援する制度を設けますが、予算は5千万円程度です。
地震・豪雨など防災は急務
南海トラフ地震や豪雨災害などの対策が急がれ、新年度も防潮堤の液状化対策や寝屋川北部地下河川の整備などを進めるとしています。しかし全体の予算は横ばいで、河?川改修予算も府の当面の治水目標を達成するだけで40年以上かかる状況は変わっていません。
府営住宅の耐震・バリアフリー化の予算を拡充しますが、一方で48住宅で用地売却・活用をすすめ、72億円の収益を上げるとしています。
分譲マンション耐震診断・改修への補助制度をつくりますが、改修補助は費用の2割程度に過ぎず、拡充が必要です。
JR大阪駅など7駅の可動式ホーム柵設置に補助を行います。鉄道駅ホームでの視覚障害者の転落事故が相次いでいますが、現在、府内の鉄道駅514駅中可動式ホーム柵があるのは1割程度です。
南海トラフ地震や豪雨災害などの対策が急がれ、新年度も防潮堤の液状化対策や寝屋川北部地下河川の整備などを進めるとしています。しかし全体の予算は横ばいで、河?川改修予算も府の当面の治水目標を達成するだけで40年以上かかる状況は変わっていません。
府営住宅の耐震・バリアフリー化の予算を拡充しますが、一方で48住宅で用地売却・活用をすすめ、72億円の収益を上げるとしています。
分譲マンション耐震診断・改修への補助制度をつくりますが、改修補助は費用の2割程度に過ぎず、拡充が必要です。
JR大阪駅など7駅の可動式ホーム柵設置に補助を行います。鉄道駅ホームでの視覚障害者の転落事故が相次いでいますが、現在、府内の鉄道駅514駅中可動式ホーム柵があるのは1割程度です。
カジノ誘致、大型開発へ突き進む
一方で、カジノや大型開発は最優先です。
カジノは、今でも大阪では患者が多いと推測され、治療法が確立されていないギャンブル依存症患者をさらに増やします。地域経済にもマイナスになると言われています。そのカジノ誘致予算を前年度の2倍近くに増やし、「家族みんなが楽しめる」「女性の活躍の機会が創出」と、女性や青年をターゲットにした宣伝などを行います。「ギャンブル依存症対策『大阪モデル』をつくる」などとしていますが、予算は2千万円とわずかです。
2025年万博誘致は、大阪湾・夢洲にカジノを誘致するための“隠れ蓑”です。11月の開催地決定に向け、加盟国の要人招へいなどに1億6千万円をかけます。万博誘致を名目にした府議会議員の海外視察も新たに予算化されています。府議会としての海外視察は共産党の主張で10年前から行われていませんが、再開することになります。
梅田~関空間を5~10分短縮するだけの南海・JRの地下鉄なにわ筋線建設に着手します。総事業費3300億円のうち南海・JRの負担は1割で、6割を税金、3割を利用客収入で賄います。総事業費4千億円のうち半分近くを税金と料金値上げで賄う阪神高速道路淀川左岸線延伸部も推進します。少子高齢化などで利用客が少なくなる、なにわ筋線開通で大阪市営地下鉄が年65億円減収になるなどの問題も指摘されています。カジノと万博の誘致を契機に、地下鉄中央線やJR桜島線、京阪中之島線の延伸なども計画されていますが、半年間の万博が終わればカジノ専用鉄道になると言われています。
23億円をかけ、咲洲庁舎(旧WTCビル)の追加耐震工事を行います。85億円もの購入費や割高なビル維持費も含め、咲洲庁舎にかかる費用はかさみ続ける一方です。
第二阪奈道の府道路公社からNEXCO西日本への移管とあわせ、府の出資金196億円を権利放棄する議案も提案されます。
「二重行政」解消で府民に痛み
松井知事はあくまで「大阪都」構想の住民投票を今秋実施するとし、「都」構想の青写真づくりに引き続き6億円の予算をつけています。
「都」構想の目的=「二重行政の解消」の先取りとして大阪市立住吉市民病院(住之江区)の3月末廃院を強行します。知事は「大阪府市で今の現状の医療レベルは維持する」という約束を反故にし、跡地には当面、外来だけの小児・産婦人科診療所を開設し、大阪市立弘済院病院(吹田市)の機能を移転させた新病院整備を検討するとしています。
また、府大・市大の統合準備に3億円の予算を計上。2019年度に法人統合、2022年度に大学統合をするとしていますが、教員や学生から説明や合意形成がされていないと憂慮の声が上がっています。一方で、新年度の府大への運営交付金は2006年度の4分の3にまで削減しています。
くらし・福祉充実の財源はある
法人二税の伸びなどで、新年度は税金収入が増える見込みです。これまでの府民施策削減や人件費抑制などの「効果」もあり、2019年度には起債許可団体ではなくなるとしています。
その財源を開発やカジノに費やすのではなく、くらしや福祉、中小企業支援にまわせば、府民生活と地域経済の底上げは可能です。
共産党府議団は、淀川左岸線延伸部やなにわ筋線建設・カジノ万博誘致の中止、子どもや障害者などへの医療費補助拡充・国保料値下げ、35人学級や就学援助・子ども食堂など教育と子どもの貧困対策の抜本的強化、最低賃金引き上げと中小企業支援、河川改修予算の倍加など防災強化、などを提案しています。どれもが、松井知事がその気になりさえすれば今すぐ実行できることです。
私たちは、開会中の2月府議会をはじめあらゆる場面で、幅広い府民や国・地方議員団と協力しながら、開発・カジノのための「都」構想の狙いと維新政治の本質を明らかにし、切実な要求を一歩ずつ実現するために全力を尽くします。
(大阪民主新報、2018年3月4日号より)