大阪市の民泊条例 6月施行へ
安全・安心のまちづくりへ取り組みさらに
日本共産党大阪市議団 小川陽太議員に聞く
民泊を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法、6月施行)に基づく「大阪市住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例案(民泊条例案)」が一部修正の上、3月27日の大阪市議会本会議で、維新、自民、公明などの賛成多数で可決されました。同法とともに6月に施行されます。条例案の採択に当たり、日本共産党大阪市議会議員団は、市民の安全安心を確保することを最優先に修正案を提案(賛成少数で否決)。同議員団の小川陽太議員(都市経済委員)に、可決された条例の問題点などについて聞きました。
■後を絶たない民泊への不安
――民泊問題ではことし2月、東成区と西成区の違法民泊を利用していた旅行者が、日本人女性を殺害、死体遺棄したとされる事件が発生したばかりです。
小川 この事件は私たちに大きな衝撃を与えました。現在、大阪市には全国で最も多くの民泊があり、すでに「国家戦略特区」法に基づく「特区民泊」も導入されていますが、いまなお、1万件を超える違法民泊があるとされています。昼夜を問わず旅行者が居住空間に出入りすることで、日々の生活環境の悪化や防災面での心配など、民泊に対する不安の声は後を絶ちません。
民泊新法は、旅館業法では違法とされている「民泊」を合法化するためのものです。大阪市には、市民の安全と生活環境を守ることを最優先にした条例づくりが求められていたわけですが、今回の条例は、何ら市民が安心できるものとなっていません。
■管理者不在があくまで前提
――問題点を具体的に聞かせてください。
小川 まず何よりも、管理者不在で施設の運営を認めるなど、安心・安全のルールには程遠いものです。修正条例案には、「周辺住民から苦情または問い合わせがあったときには、速やかに当該届出住宅に赴き」対応することが盛り込まれましたが、あくまで管理者不在が前提です。
火災発生時には、ハウスルールを多言語で掲示している適法民泊でも、通報や避難誘導などを「宿泊客」や近隣住民に頼らざるを得ません。緊急時に「宿泊者」が異国で適切な行動を取ることは困難なことは容易に想像でき、混乱は必至です。
わが党は修正案で、宿泊者の本人確認、鍵渡しを対面で行うことや、民泊利用者が滞在中は宿泊管理者を常駐させることを義務付けることを提案しました。
吉村市政のように、「適法にするためにはあまり規制はしてはいけない」という姿勢で、安全のルールをほとんど課さない「届出」だけの民泊があちこちにできれば、市民の不安は増大し、健全な市民生活を送ることができない街になってしまいます。
■自治体の裁量活用せぬ市政
――民泊新法は市民生活の平穏や安全の確保する上で、自治体の裁量を認めています。
小川 そうです。法18条は区域と期間を自治体が制限することを認めています。現に、兵庫県と神戸市では、「住居専用地域」「学校や児童福祉施設の周辺100㍍以内の区域」では、すべての期間実施できないと定めています。住居専用地域の良好な環境の維持・保全、子どもの静穏な教育環境、登下校時の安全確保がその理由です。
ところが吉村市長はこうした裁量をまともに活用しようとしません。当初、区域と期間の制限はしないとしていた吉村市長は、議会各派からの指摘をうけ、区域の制限を設けるよう条例案を修正しましたが、「住居専用地域であっても4㍍道路に接しているところは除く」というもので、住居専用地域であっても除外区域を設けています。
吉村市長は結局、できるだけ狭い範囲の制限としたにすぎず、「生活環境の悪化防止や安全安心の確保のため」に「区域と期間の制限を追加する」との説明は、まさに市民を欺くものと言わなければなりません。
わが党は修正案で、密集市街地や緊急車両が入れない狭い道路地域、小学校周辺だけでなく中学校や保育所など社会福祉施設などの周辺100㍍以内も制限区域に含め、いずれも全日禁止とすることを提案しました。
■実態の調査と取り締まりを
――市政のあり方が問われていますね。
小川 はい。最大の問題は、吉村市政が市民生活の安心を守る立場に立たず、事業者目線だということです。吉村市長は市議会で「民泊を悪者にしている」「過度な負担をさせてはならない」と答弁しました。しかし、違法民泊での事件やトラブルが相次ぎ、適法な特区民泊でも市民からの不安の声が広がっているのです。届出だけの民泊に、より厳格な規制を求めることは、市民の当然の願いではないでしょうか。
市民にとっても、旅行者にとっても安心できるルールを確立するとともに、まずやるべきは、違法民泊の実態を調査し、違法業者の取り締まりを強化・徹底することです。この立場から、日本共産党も引き続き市民の皆さんと一緒に取り組みを進める決意です。
(大阪民主新報、2018年4月8日号より)