おおさかナウ

2018年06月03日

声を届けて
たつみコータロー参院議員の国会論戦
救えたはずの命 母子心中未遂事件①

 「母子家庭の2人暮らし、県営住宅からの強制退去が執行される日でした。家を失ったら生きていけないと思い詰めての無理心中未遂。行政は救うことができなかったのか」(2015年4月9日参院予算委員会)

追い詰めたもの

参院予算委員会で質問するたつみ議員(右)=2015年4月

参院予算委員会で質問するたつみ議員(右)=2015年4月

 たつみコータロー議員は、千葉県銚子市の県営住宅で2014年9月24日、母親(当時43歳)が中学2年の娘(同13歳)の首を絞めて殺害した「公営住宅追い出し母子心中未遂事件」を取り上げました。

 極度の困窮状態に置かれた母親を追い詰めたものは何か。社会に衝撃を与えた事件をめぐり、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(生存権)と定めた憲法第25条の視点で、政治のあり方を問い掛けたのです。

 県営住宅の家賃は月額1万2800円。母親のパート収入は約7万円で、離婚した元夫の借金返済を背負うなど、生計維持さえ困難な状態でした。

 国民健康保険も滞納が続いて無保険状態に。短期証が発行されていました。4カ月ごとに支給される児童扶養手当を、家賃や保険料に充てていました。

 娘が小学校を卒業した13年3月。中学進学のために必要な制服をヤミ金融の借金などで購入。しかし中学入学の前日、家賃滞納を理由に入居許可が取り消されました。

 翌月すぐに滞納額の一部を納めたものの、県側は住宅明け渡しを求めて提訴。第1回口頭弁論当日、体調を崩し電話で「行けない」と伝えた母親は、裁判所から「反論するよう」指示されても「意味が分からなかった」といい、県側の主張を認めた判決(13年11月)が言い渡されました。

 判決に基づき裁判所による強制執行の手続きが進む中、最後の望みをかけて電話をかけました。

 「強制執行は待ってほしい」。母親の声に「決まったことだから」と当局。退去の時は刻一刻と近づいていきました。

貧困の本質とは

 「貧困とは何か?生きるためのお金がないのはとても怖い問題です。しかし貧困の怖さはそれだけではありません」

 生活困窮者の支援に取り組む全大阪生活と健康を守る会連合会の大口耕吉郎会長は、貧困は教育の機会を奪い、行政支援や地域社会からの孤立を招くと指摘。「最後に行き着くのが、社会から孤立し自己の存在さえ否定する人間性の喪失です。それが貧困が招く最大の苦しみであり、悲しみです」

 目の前の人に支援の手を差し伸べ、貧困に陥った生活上の問題を解決し、傷つき果てた「心の貧困」を一緒に克服するのが生健会が挑戦している課題と言う大口さん。同会事務局員を9年勤めたたつみ議員の国会質問を次のように評します。

 「現場を歩き回り身を持って貧困の本質を学び、社会政策の矛盾を考え続けた人ならではの論戦です。国民誰もが幸福に生きられる社会という、憲法の根本理念を体現しようとの問題意識に貫かれています」

家失う恐ろしさ

 「もうだめ」

 強制退去の9月に入り、引っ越し費用のない母親は、自分1人が死ぬことで未来ある娘を公的保護に委ねようと考えました。そして強制執行の朝。最後の瞬間まで一緒に過ごし、娘を学校へ送り出すはずが、母を気遣った娘が学校を休むと言い出したことで…。

 強制執行関係者が入った時、部屋のテレビ画面には、運動会で活躍する娘のビデオ映像が流れ、母親は動かなくなった娘の頭をなでて、「うちの子なの。鉢巻きで首を絞めちゃった」「生活が苦しい、お金がない」「後を追って死ぬんだ」と話したと言います。

違う結果あった

 参院委での質問でたつみ議員は、母親のパート所得が家賃8割減額が適用される水準だったこと、生活保護申請があれば認められていた可能性を示し、「ここで救済されれば違った結果になっていた」「必要な人に生活保護が行き渡っていない現実がある」と行政の不作為を問い、政府の見解をただしました。

 救えたはずの命だったはず――たつみ議員の追及は、そんな強い確信が根底にありました。

(続く)

(大阪民主新報、2018年6月3日号より)

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