おおさかナウ

2018年06月24日

大阪北部地震 被害各地で

 18日発生した大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震で、高槻市や大阪市などで被害が広がっています。

高槻で小学女児が死亡
倒壊外壁は建築基準法違反

 高槻市立寿栄小学校の外壁が道路側に倒壊し、登校中だった同小4年の三宅璃奈さん(9)が下敷きになり命を落とす痛ましい事故が起きました。

文科省の耐震化対象外

 高槻市災害対策本部によると、倒壊したのは同小のプールの周囲を囲む3・5㍍の外壁。1・9㍍の基礎部分にブロックを8段積み上げた構造で、この上段部分が地震で道路側に倒れました。

 高槻市によると、プールは、1974年4月の同校開校と同時に建設され、当初は約1・9㍍の基礎上にフェンスが設置されていました。しかし今から20年ほど前、道路側からの目隠しとして、基礎部の上部にブロックを8段約1・6㍍積み上げたと言います。基礎との境目から約40㍍にわたり倒壊し、三宅さんが下敷きになりました。

 高槻市によると、三宅さんは同校児童会代議員で、今月11日から2週間、登校児童にあいさつを呼び掛ける当番で、この日も普段より約10分早く登校。地震発生時、通学路に指定されていた、道路面が緑色に塗装された「グリーンベルト」を歩いていたと見られ、校門まで20㍍ほどの地点でした。

 建築基準法施行令はブロック塀の高さを2・2㍍以下と定めており、建築基準法の基準上限を超える違法状態だったことが明らかになっています。さらに同施行令は、高さ1・2㍍を超す塀は、一定間隔ごとに強度を高めるための「控え壁」を設置すると定めています。

 高槻市の濱田剛史市長は18日午後、同市役所内で記者会見し、壁倒壊により死亡事故が起きたことを謝罪するとともに、原因究明と、亡くなった女児の保護者に誠意を持って対応したいと述べました。

 文部科学省は学校施設の安全対策で耐震化を推進してきましたが、学校校舎や体育館などが対象で、ブロック塀は対象外だったと言います。

助けられなくてごめん

救助にあたった男性

 「優しくていい子でした。命を守ってあげられなくて本当に申し訳ない。残念な気持ちでいっぱいです」。地震発生直後、学校に隣接するコミュニティセンターの男性職員は、同小警備員から助けを求められ、女児を救出しようとしましたが、重くて持ち上がらなかったと言います。

 週4日ほど児童らの見守り活動を続けてきた男性は、「いつもは弟さんと一緒に登校していました。元気にあいさつしてくれる姿が印象的でした。もう少し早く現場に着いていたら、助けられたかもしれない。本当に残念」と話しました。

住民らが献花

女児が亡くなった事故現場近くに設けられた献花台の前で涙する女性=18日、高槻市内

女児が亡くなった事故現場近くに設けられた献花台の前で涙する女性=18日、高槻市内

 18日午後には寿栄小学校前に献花台が設置され、住民らが次々と訪れては手を合わせ、犠牲になった三宅さんの冥福を祈りました。寿栄小に女児を通わせる母親はハンカチで涙をぬぐいながら、「明るい子で、リーダー的な存在だった。なんでこんなことになったのか悲しくてつらい」と声を震わせました。

 隣の校区に女児を通わせる母親は、「地震発生時、娘も登校中だった。わが子に置き換えて考えると、本当につらい。授業が再開されても、しばらく一緒に登校して安全を見守りたい」と話しました。3歳と5歳の子どもを連れた母親は、清涼飲料水とお菓子を供え、「学校が子どもたちにとって一番安全で安心できる場所になってほしい」と話しました。

住宅に被害広がる

 「部屋の本棚が倒れて、床に書籍が散乱しました。就寝中だったらと思うとぞっとします」。高槻市川添の戸建て住宅に住む男性が語ります。

 地震発生直後に玄関から外に出ると、住宅の外壁部分に大きな亀裂が走っていました。壁の亀裂は複数個所にわたり、屋根にも被害が出ていました。

 この日男性は自宅に戻れませんでした。「激しい揺れで倒壊するかもしれないと覚悟しました。水道設備も壊れて水があふれ出し、元栓を閉じて対処しました。風呂は使えず、自宅に戻るのも不安です」と語ります。

ライフライン打撃

外壁に大きな亀裂ができた住宅=高槻市内

外壁に大きな亀裂ができた住宅=高槻市内

 震源地で震度6弱を記録した高槻市内では18日午後1時までに30件の負傷者が救急搬送されるなど人的被害に加え、ライフラインも広範囲で打撃を受けました。

 市内全域で都市ガス供給が止まり、水道管破裂による大規模漏水が起きました。大阪広域水道企業団が府北部7市町への送水を止めたため、同市内の一部地域で断水が続き、市内では約2万4千人に影響が出ました。

 市は臨時の給水所を学校施設などに設けホームページ上で周知。近くの住民らがポリタンクや水筒などを持って列をつくりました。

 19日朝も市内各所で断水状態が続き、ペットボトルを持って同市栄町の給水所に来た女性は「この水をつかって料理をします。いま困っているのはトイレが使えないこと」だと語りました。

 3人の子どもの手を引き給水所を訪れた母親(35)は、「トイレが使えなくなるのではと不安で昨夜のうちにお風呂に水をためました。子どもたちにきれいな水を飲ませたい」と話しました。

 同市内では、本棚や食器棚が倒れたり、瓦が落ちるなどの被害が広範囲で発生しました。

 エレベータ閉じ込め被害も多数発生。市は同日、市役所や各学校などでブルーシートの提供を開始。115カ所の避難所を開設しました。

 日本共産党の宮原たけし府議、高槻市議・島本町議は地域を回り、被害状況を把握・確認するとともに、情報提供や相談に奔走しました。

児童見守りの男性死亡 大阪市東淀川区

 大阪市東淀川区上新庄で無職の安井実さん(80)が、地震で倒壊した民家のブロック塀の下敷きになり、亡くなりました。安井さんは長年、地元の市立新庄小学校の児童の登下校の見守り活動をしており、この日も朝の見守りに向かう途中でした。

 「いつも声を掛けて下さった方で、子どもたちも見守りがうれしかったと思う」と語るのは、近所に住むパート勤務の女性Aさん(67)。ブロック塀が崩れ落ちた道で、毎朝のように安井さんとあいさつしていました。

 安井さんは、見守り活動を続けてきた新庄小学校の卒業生。「地域の多くの人たちが安井さんのことを知っていて、『困ったときに助けてもらったり、励ましてもらったのに』と、みんな、突然の死を悲しんでいます」とAさん。

 東淀川区では震度5を観測しました。Aさん宅も強い揺れで外壁にひびが入り、室内では食器棚などが倒れて、足の踏み場もなくなりました。

 事故現場は阪急京都線・上新庄駅に近く、普段から朝は通勤や通園などで多くの市民が行き交う道。Aさんは「誰が事故に遭ってもおかしくなっかった」と話しています。

(大阪民主新報、2018年6月24日号より)

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