初年度だけで310億円も
「都」構想特別区設置で
日本共産党・山中幹事長 試算示し追及
大阪市議会大都市税財政制度特別委員会が18日開かれ、大阪市を廃止して「特別区」に再編する、いわゆる「大阪都」構想の制度設計素案などについて質疑がありました。日本共産党の山中智子幹事長は、「特別区」を設置した場合、初年度に必要な現金は計約310億円に上るとの試算結果を示して追及しました。
山中氏はすでに、大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)で、「特別区」設置による効果は皆無である一方、膨大なイニシャルコスト(初期経費)とランニングコスト(運用経費)がかかると主張してきました。
副首都推進局が掲げる「中核市並み」の「特別区」にした場合、新庁舎の建設やシステム改修費などのイニシャルコストは約860億円になるとの試算。さらに素案に盛り込まれていない人件費などを加えると、ランニングコストは約70億円の増になると示してきました。
この日の委員会で山中氏は、「特別区」全体で設置初年度に必要な現金支出の試算を提示しました(表)。新庁舎建設費(326億1500万円)は75%は起債(借金)を充当し、25%が現金。庁舎は「特別区」設置から4年で完成させる前提で、1年分は20億3800万円と算定。同様の試算で設置初年度のイニシャルコストは総額250億9700万円に上ります。
また職員人件費増や議会関係費などランニングコストの増は計58億9400万円に。山中氏は計約310億円もの巨額の現金が必要となるとし、「これは一体どこからねん出するのか」と質問しました。副首都推進局は、「設置に必要な経費は財政シミュレーションに反映している。なお生じる収支不足は財政調整基金などで対応可能」などと答えるにとどまりました。
山中氏は「コストの大部分が『特別区』の負担として覆いかぶさり、その負担増分の措置手当は一切ない。こんな制度は到底市民の理解は得られないし、『都』構想は土台、無理な相談だ」と主張しました。
「都」構想〝経済効果〟1兆1409億円?
〝極めて意図的・政治的〟
大阪市議会特別委で批判噴出
18日の大阪市議会大都市税財政制度特別委員会では、大阪市を廃止して「特別区」に再編する、いわゆる「大阪都」構想の「経済効果」についての質疑も行われ、維新以外の日本共産党、自民党、公明党から批判が相次ぎました。
瀬戸議員「市民に間違ったイメージ」
「経済効果」の試算はことし1月、松井一郎知事が提唱。府市は試算を委託する事業者を公募しましたが、1社の応募もなく、再公募で学校法人「嘉悦学園」が選ばれました。調査報告書は「特別区」設置の歳出削減額を、10年間で最大1兆1409億円などと算出しています。
質疑で日本共産党大阪市議会議員団の瀬戸一正団長は、「港湾や住宅、大学などの事業をやっている大阪市と、一般の市町村の1人当たり歳出額を比べて小さい方が効率的だとして『特別区』の歳出削減額を算出している」と指摘。「極めて意図的な効果額で、政策的・政治的な意図がある」と強調し、「大阪市として効果額の妥当性や実現可能性はどう考えるのか」とただしました。 「特別区」の制度設計を担う副首都推進局は「選挙で選ばれた(特別区の)首長、議員の下で生み出される可能性のある数字が、学術的にオーソドックスな手法で示された」などの説明に終始し、質問にまともに答えませんでした。
瀬戸氏は「専門家が計算したらこうなったと市民に示すのはあまりに無責任。これがまかり通れば、市民に『都』構想について間違ったイメージ、幻想を与えることになる。民主主義が成り立たなくなる」と厳しく批判しました。
「特別区」設置初年度に必要な支出額(試算)
イニシャルコスト(初期経費) | ||
項目 | 金額 | 備考 |
新庁舎整備費 | 20億3800万円 | 326億1500万円×25%×1/4 |
用地費 | 126億2300万円 | |
設計監理費 | 1億7400万円 | 6億9600万円×1/4 |
民間ビル保証金等 | 65億200万円 | |
新庁舎建設までの民間ビル賃料 | 27億1000万円 | 108億4000万円×1/4 |
一時保護所建設経費 | 1億5000万円 | 6億円×25% |
その他経費 | 9億円 | |
小計 | 250億9700万円 | |
ランニングコスト(運用経費)の増加 | ||
職員人件費増 | 21億円 | |
議会関係費 | 16億800万円 | |
システム運用経費 | 21億3800万円 | |
各特別区で新たに必要となる経費 | 4800億円 | |
小計 | 58億9400万円 | |
総計 | 309億9100万円 |
日本共産党大阪市議会議員団・山中智子幹事長の提出資料より作成
(大阪民主新報、2018年9月30日号より)