法定協「協定書 福祉と自治 限りなく後退
野党合同勉強会 宮原府議が解明
繰入・各種施設廃止の可能性示す
橋下徹大阪市長と松井一郎知事は、大阪市を廃止して特別区を設置する「協定書」を大阪市会、府議会に提案しようとしています。17日に大阪市会で開かれた第2回目の野党合同勉強会で、日本共産党の宮原威府議団長が、特別区間で設ける一部事務組合の問題などを追及。維新の会が反対派を排除して無理やりでっち上げた「協定書」のでたらめさが、また一つ浮き彫りになりました。
新庁舎建設でコスト555億円
昨年8月の特別区設置協議会(法定協)で示された制度設計案(パッケージ案)では、特別区の庁舎は新たに建設せず、既存の区役所などを活用して、不足分は民間ビルを賃借するなどとしていました。特別区設置のコストを低く見せるためです。
ところが「協定書」では、東、南、中央の3つの特別区で新庁舎を建設することに変更。3区の新庁舎の敷地面積は3万1994平方㍍で甲子園球場の約8倍になります。
勉強会で宮原氏が府市大都市局に確認したところ、新庁舎建設に必要な用地費は101億円、建設費は279億円の計380億円。これをすべて借金(返済期間30年)でまかなうとすると、555億円のコストがかかります。
宮原氏は「こんなことを知っている市民はほとんどいない。市民に分かりやすく説明してほしい」と強く主張しました。
国保や介護も一部事務組合
「協定書」では、国民健康保険(国保)、介護保険、水道など市民生活に深くかかわる事業を特別区単位ではなく、一部事務組合で処理。一部事務組合は複数の自治体が行政サービスの一部を共同実施するために地方自治法に基づいて設置するものです。
宮原氏は国保や介護など共同処理する4つの事業の総事業費は6216億円に上り、国保料や介護保険料、水道料は市民の負担であり、国保では保険料の軽減などのために一般会計からの法定外繰入が約150億円あることを示しました(表1)。
一部事務組合で共同管理する計62施設(表2)の総事業費は106億4400万円で、そのうち法令で義務付けられているのは自立支援施設(事業費3億8500万円)しかないと指摘。「一部事務組合になれば、法律に定めのない繰り入れや施設ということで、廃止される可能性はないか」とただしました。
大都市局は「事業見直しは、大阪市のままでも時代の変遷やニーズを踏まて判断しなければならない部分もある」と答弁。一部事務組合で担う住民基本台帳などのシステム管理についても、維持費や人件費を独自に計算していないことが明らかになりました。
法定協会長に一任は間違い
一部事務組合に対応する議会のメンバーは知事と5人の区長、各区議会から数人程度かと宮原氏が確認すると、大都市局は「具体的には今後検討する」などと回答。宮原氏は「(特別区になれば)『ニアイズベター』だと橋下氏は盛んに言ってきたが、そんなところには住民意見はなかなか反映しない」「福祉と自治は、限りなく住民から遠くなるということだ」と批判しました。
大都市局が特別区設置に当初は職員不足に対応するため200人を新規採用するが、将来は職員数は減っていくと説明したのに対し、宮原氏は「何の根拠もなく、住民投票にかけるに値しない」と強調しました。
また宮原氏は、「協定書」が議会で否決されても、橋下氏らが「法定協会長一任」で、法定協を開かず新しい「協定書」をつくる可能性があるとし、「(大都市局として)『それは間違いだ』と言えないか」と追及。山口信彦局長は「事務局の立場としては、きっちり法定協で修正していただくなら、修正いただく」と答えました。
(2014年9月28日付「大阪民主新報」より)