森友問題 値引きの根拠は崩れた
国有地売却 疑惑さらに深まる
現地で野党合同ヒアリング
通常国会が1月28日召集されるのを前に、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却・大幅値引き問題で17日、野党合同ヒアリングが府内で行われ、日本共産党と立憲民主党の衆参国会議員が現地調査しました。深さ3・8㍍の「新たなごみ」を根拠に値引きしたとする国の説明をめぐり、小学校の施工業者「藤原工業」(吹田市)から事情を聞いた他、土地がある豊中市の現場を視察。同法人前理事長の籠池泰典氏や財務省近畿財務局OBから聞き取りを行いました。
現地調査には、両党から8氏の衆参議員が参加。日本共産党から宮本岳志衆院議員、たつみコータロー参院議員が参加しました。
国有地が格安売却された背景として、地中3・8㍍から「新たなごみ」が見つかったと国が説明しています。土地には当初から地下3㍍までごみが存在したとされ除去工事が実施されています。
根拠とされた「新たなごみ」
しかし16年3月に学園側が、さらに深い地点から「新たなごみ」が見つかったと国側に通知。藤原工業が作成した8カ所の試掘調査の報告書には、深さ3・8㍍の地中からごみが出たとする写真が示されており、この写真が地下3㍍より深くに「新たなごみ」がある根拠とされ国が値引き額を算定。鑑定価格9億5600万円からごみ撤去費約8億2千万円を値引いて土地を売却しました。
たつみ議員は昨年の国会質問で、国が値引きの根拠とした写真について、試掘現場8カ所のうち2カ所の写真は同じ試掘穴の写真を使い回したものではないかと指摘。資料の正確性、事実関係に疑義があるとし、野党側は国有地売却をめぐる疑惑は何ら解明されていないと追及しています。
施工業者「藤原工業」事務所での聞き取りは非公表で実施されました。
聞き取り内容は、野党議員の会見によると、藤原浩一社長が「ごみの深さを意識して撮影した写真ではない」と述べ、あくまでどの程度ごみがあるか把握するための写真だったなどと説明。問題の写真は、経験の浅い社員が撮影したとし、「国土交通省から写真を送れと言われ、若い職員がいいかげんに作った」などと説明、資料を作成した社員は退社したと説明しました。
写真使い回し「そう見える」
施工業者への聞き取り後、森友学園が開校を計画した小学校の土地を現地視察した際、藤原社長が報道陣の取材に応じました。同じ試掘穴の写真を使い回したのではないかとの指摘に対し、「そうみたいですね」「私にもそう見える」と発言しました。
合同調査後に野党側が開いた会見で、たつみ議員は「藤原工業が提出した調査報告書がでたらめな内容だったことが明らかになった。新たなごみが見つかったと国は8億2千万円を値引きしたが、その根拠は完全に崩れた」と強調しました。
野党側は合同ヒアリングに財務省近畿財務局と国交省大阪航空局への聞き取りを要請しましたが、国側は「本省対応が基本」として関係者の出席を認めませんでした。
籠池氏が改めて証言
〝安倍夫妻の影響あった〟
通常国会で追及へ
棟上げ式には祝電もらった
野党各党が大阪府内で実施した合同ヒアリングで、学校法人「森友学園」の前理事長、籠池泰典氏への聞き取りを行い、籠池氏は、国有地の格安売却について「安倍晋三首相夫妻の影響があったと思います」と改めて強調しました。
籠池氏は、棟上げ式に首相夫人の昭恵氏を招く予定で進めていたと発言。野党側の質問に対し、昭恵氏側から「祝電はいただきました」と答えました。
2017年2月17日の衆院予算委員会で、安倍首相が「私も妻も(小学校に)関係ない」「関係したということであれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と述べたことについて、「なんということを言うのか」「それで大丈夫なのかと思った」と話しました。
幕引き許さず責任の所在を
「このまま幕引きされるのではないかとの危機意識がある」。野党側の要請を受けて合同ヒアリングに出席した財務省近畿財務局の職員OB4人はそう述べて、「責任の所在を明らかにしなければならない」と強調しました。
昨年3月に財務省の決裁文書改ざんが発覚し、同月、国有財産を担当する部署に所属した近畿財務局の男性職員が自殺しました。OBたちは、「決裁文書の改ざんが起きるなど考えられない事態」とし、1人の職員が死に追い込まれたあまりに理不尽な事件を見過ごすことはできないと重ねて強調しました。
現地視察と合同ヒアリング後の記者会見で、立憲民主党の川内博史衆院議員は「なぜ国有地がこれだけ値引きされ売却されたのか、事実を明らかにしなければ行政の信用にかかわる」と強調。日本共産党の宮本岳志衆院議員も今月召集される通常国会で追及していくと語りました。
現地視察を踏まえ、野党側は翌18日に国会内で野党合同ヒアリングを開き、地中ごみの写真だとされた調査報告書は値引き根拠にならないと追及しました。
(大阪民主新報、2019年1月27日号より)