2019年06月02日
山下よしきの徒然エッセイ
「死者」が権力を縛る9条
憲法9条は、机の上でできたものではありません。日本国民310万人、アジアの人々2000万人もの犠牲をもたらした、日本が起こした戦争への深い反省から生まれました。
「戦争はしない」「戦力は持たない」と決意した9条には、内外の犠牲者の無念、残された者の平和への願いが刻まれています。
ある雑誌で「保守」を自認する哲学者の中島岳志さんと対談しました。中島さんは、「保守の立憲主義は、基本的に国民が権力を縛っていて、この国民の中には死者が含まれていると考える」と述べました。
まさに、戦争で犠牲となった「死者」が権力を縛っている。それが憲法9条です。「死者」の縛りを解こうとする安倍総理は、もはや「保守」とは言えません。
9条は、誕生後、国民に広く定着し、日本社会の姿形を決める根幹となりました。自衛隊員が海外で「殺し、殺される」ことのない状態をつくり、軍事費を抑制することで民生分野中心の経済成長を促しました。科学と文化が人類の福祉増進に貢献する基礎となったのも9条です。
私は、こうした9条が戦後の日本社会で果たした役割について、安倍首相の認識をただしましたが、首相からは一言も返ってきませんでした(2017年11月)。
9条が果たした役割について一言も語ることができない人に、9条を変える資格はありません。
過去の「死者」の無念を踏みにじり、新たな「死者」をつくろうとする為政者を止めるのは、いま生きる私たちです。(やました・よしき 日本共産党参院議員 毎月第1週に掲載)
(大阪民主新報、2019年6月2日号より)