大阪市廃止する「特別区」設置
「経済効果」どころか住民サービス低下
市民に良いこと一つもない
大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想の制度案を議論する大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)の第25回目の会合が8月26日、大阪市役所内で開かれました。「特別区」設置の「経済効果」について調査報告書をまとめた学校法人「嘉悦学園」(東京)の担当者に各会派の代表が質問。日本共産党の山中智子大阪市議は、調査手法などの問題点を挙げ、「大阪市を廃止して『特別区』に分割することは、経済効果が生まれるどころか、コスト増になり、住民サービスが低下するなど、市民にとって良いことは一つもない」と批判しました。
第25回法定協 山中大阪市議が批判
調査報告書は、自治体の人口が増えるにつれ1人当たりの歳出額は減少するが、人口50万人程度が最小で、それ以上人口が増えれば歳出額も増えるという「U字カーブ」を描くとしています。
人口規模が大きい大阪市を「特別区」に再編すれば、年間1100億円、10年間で最大1兆1409億円の「経済効果」が出ると試算。維新は「都」構想をごり押しするために、この「経済効果」を宣伝しています。
大都市の事情を無視した試算に
山中氏は、府内自治体の1人当たりの歳出額は、人口28万人の茨木市、35万人の高槻市などが最低で、40万人の枚方市では減少、50万人の東大阪市で増大しており、「50万人程度を底にU字カーブを描くというふうにはなっていない」と述べました。
また、人口50万人を超えて70万人、80万人と増えるのは大都市部に限られると指摘。人口規模の大きい自治体の行政経費が高くなるのは、昼間流入人口への対策や、物価や人件費が高いことなど大都市特有の事情があるからだとし、「4つの『特別区』をつくっても大都市でなくなるわけでも、物価や人件費が下がるわけでもない。1人当たりの歳出額が減少することにはならない」と迫りました。
嘉悦学園側は「(人口規模の小さい)『特別区』になれば住民の要望をきめ細かく拾え、財政効率化することがあり得る」など抽象的な答弁に終始しました。
山中氏は、地方と都市部の違いを無視して「適正な人口規模を論じることは無理がある」と批判しました。
「特別区」設置で逆にコスト増加
さらに大阪市では、巨大開発の相次ぐ失敗による歳出削減で、これ以上の財政効率化の余地はなく、職員給与も政令市中で最低であり、「削るものはない」と指摘。「特別区」を設置すれば、調査報告書が考慮していない330人の職員増やシステム運用経費の増加によって、「(効果どころか)逆にマイナスになる」と断じました。
財政効果を強調 維新
やり直しを要求 自民
一度失敗して再公募で委託
「特別区」設置による「経済効果」の試算は、昨年1月に松井一郎知事(当時)が提唱。府市は調査を委託する事業者を公募しましたが、1社の応募もなく、再公募で選ばれた嘉悦学園の調査報告書が昨年7月に公表されました。
大阪市議会大都市税財政制度特別委員会などで、維新以外の会派が調査手法や試算結果の妥当性などについて批判し、法定協の議題とすることにも反対してきました。4月の統一地方選後、「都」構想反対の公明党が賛成へ一変し、自民党府連執行部が住民投票を容認する姿勢を示す中、法定協での議論が行われました。
維新の横山英幸府議は「コストを大きく上回る財政効果が出る」と強弁しました。
自民党の川嶋広稔大阪市議は、調査報告書では効果額が水増しされている疑いなどを指摘し、「法定協として受け入れるべきではない」と批判し、シミュレーションのやり直しを要求しました。公明党の肥後洋一朗府議は「より具体的で分かりやすい説明を」と主張しました。
(大阪民主新報、2019年9月1日号より)