おおさかナウ

2019年09月01日

大阪市廃止する都構想
市町村の持つ権利さえなし
自分で決められない特別区
市対連総会 中山徹奈良女子大教授が講演

 大阪市対策連絡会議(市対連、井上賢二代表)が8月23日、大阪市中央区内で2019年定期総会を開き、当面の活動方針などを確認しました。基調講演した奈良女子大学の中山徹教授は、いわゆる「都」構想で大阪市を廃止・解体して「特別区」を設置すれば、大阪市が持っていた開発や街づくりの大きな権限が失われ、住民生活に大きな影響が出ることを明らかにしました。

府の意向だけで進む大型開発

市対連の定期総会で講演する奈良女子大の中山徹教授=8月23日、大阪市中央区内

市対連の定期総会で講演する奈良女子大の中山徹教授=8月23日、大阪市中央区内

 中山氏は、維新が「都」構想で大阪市を廃止する狙いは、「都」をつくることではなく、「特別区」を設置することに主眼があり、大阪市の税収の一部を府に移し、さまざまなインフラ整備、開発の予算を確保することにあると指摘。さらに、大阪市が政令市として持っている開発・街づくりの権限を府に移して、府の意向だけで大型開発を進めることができるようにするためだと語りました。
 中山氏は、都市計画法で開発・街づくりの決定権が、どのように位置付けられているかを詳しく説明しました。道路や鉄道などの開発で、政令市は都道府県と同じ権限をもっているが、「特別区」は普通の市町村が持つ都市計画上の権限すらもっていないと指摘。「住居」「商業」「工業」などに区別する「用途地域」は市町村が決めるが、「特別区」は自分で決められないと説明しました。

予算も権限も府に吸い上げられ

 仮に大阪市が廃止されて「特別区」が設置宇された場合、中山氏は、大阪湾の埋め立て地・夢洲に、カジノを核とした統合型リゾート(IR)を誘致する開発では、地下鉄の延伸は府が決めると指摘。現在「準工業地域」「工業地域」となっている夢洲を「商業地域」に変更するのも府であり、IRに伴う開発許可も府が行うとしました。
 中山氏は、「カジノより教育、福祉を」と求める運動は、大阪市が都市計画を自ら行い、それに伴う予算も執行しているから成り立つと強調しました。
 「特別区」には都市計画を決定する予算も権限もなく、開発のための予算は府が吸い上げているため、限られた財源の中で社会保障を進めるしかなく、「政令市を『特別区』に変えることは、常識ではあり得ない」と力説。「大型開発は住民生活に大きな影響を与えるが、意見は『特別区』ではなく、府に意見を言わなければならない」と述べました。

「大阪市なくすな」の一点で共同を
山中智子日本共産党大阪市議団団長があいさつ

草の根で世論の高揚と学習広げ

 日本共産党大阪市議会議員団の山中智子団長が市政報告を兼ねてあいさつし、維新市政は、来年秋の住民投票実施というスケジュールで暴走していると指摘。府市の港湾局を統合する議案は市議会で3回否決されたにもかかわらず、今秋の議会をまた提案しようとしていることについて、「市の廃止を前提にしたもの。こんな異常な基礎自治体はない」と語りました。
 山中氏は、世論調査でも市民の4~5割が大阪市の廃止や再度の住民投票実施に反対していると強調。日本共産党議員団は4議席だが、市議会や法定協議会で市民の声を代弁して奮闘すると述べるとともに、「大阪市をなくすな」の一点で党派を超えた共同を広げようと呼び掛けました。
 連帯あいさつした大阪市をよくする会の福井朗事務局長は、2015年の住民投票では地域でかつてない幅広い共同が広がったとし、再度の住民投票に向けて共同を再構築する必要があると強調。同時に行政区や中学校区単位での学習運動を強めることも大切だとし、「維新政治の心臓部である『都』構想との徹底的なたたかいを進めるため、草の根での世論構築と学習を広げよう」と語りました。

義務教育完全無償化へ署名運動

 総会で報告した市対連の庄司修事務局長が、来年にかけての活動方針を提案。大阪市議会に向けた具体的な課題として、「義務教育完全無償化」を早急に実現する署名に取り組むことを呼び掛けました。

18日に市役所包囲デモ実施

 運動の柱として①維新による大阪市の解体を許さない活動②カジノを大阪でつくらせない活動③教育・子どもの貧困問題の取り組み④災害対策、安全・安心・健康を支える地域生活をつくる取り組みなどを確認。当面、対市交渉(4、5日)、市議会開会日の宣伝と集会・市役所包囲デモ(18日)などに取り組むことにしています。

(大阪民主新報、2019年9月1日号より)

月別アーカイブ