空論でしかない
「都」構想〝経済効果報告書〟
大阪市廃止後の「特別区」の経済効果を議題に開かれた第25回法定協で議論された、「嘉悦学園」報告書の問題点について、日本共産党大阪府委員会・政策委員会の中山直和さんの寄稿文を紹介します。
日本共産党大阪府委員会・政策委員会 中山直和
「卒業論文なら落第」と専門家から酷評された
「これが卒業論文なら落第ですね」と専門家から酷評された「嘉悦学園」レポート(2018年6月公表)。統一地方選挙以前の法定協では議題にすらできなかったものが、先月26日に開催された第25回大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)ではじめて議論に付されました。選挙後に起こった公明党や自民党府連の変節が影を落としたのです。
一方、法定協で議論することにこだわった維新のねらいはなんだったのか?法定協が終了した直後の知事・市長の立ちレクで、松井市長は開口一番、「経済効果があることがはっきりした」と語り、吉村知事も「コストより十分効果がある。実際そうだと思う」と語気を強める姿が印象的でした。
「理論値」としつつも、10年間で1兆1千億円の「経済効果」があると断言し、数字を一人歩きさせ、市民の意識に刷り込もうという彼らのねらいがはっきりした瞬間でした。
業務・研究の実績ない学園が選ばれた不思議
かつて松井知事(当時)は「府・市二重行政がなくなれば年間4000億円浮く」と発言しました。これは大阪府と大阪市の両方の予算額が8兆円で「5%削減すれば4000億円が浮く」という削減目標で、言わば“放言”の類でした。
その後に「最大で967億円」との効果額がだされますが、そこには、「都構想」とは関係のない地下鉄民営化などの効果額が含まれており、これを除くと実質効果額はたったの「1億円」でした。
2017年になり、2度目の「住民投票」をめざす知事・市長は、副首都推進局に対し「特別区設置」による「効果」を「何らかの形で数値化できないか」と迫ります。しかし役所からの報告はその後出されませんでした。
そこで今度は民間企業に調査を委託すると発表し、1度目は応募ゼロ、昨年3月末の再度の公募でようやく「みずほ総研」と「嘉悦学園」が名乗りをあげ、なぜか自治体等の業務・研究の実績がない「嘉悦学園」が選ばれました。そして、1000万円の委託料によって昨年6月に出された「報告書」が今回の法定協で議論されたのです。
歳出額の減少を言うが何が削減されるか不明
「報告書」は、自治体の人口が増えるにつれ1人当たりの歳出額は減少するが、人口50万人程度が最小で、それ以上人口が増えれば歳出額も増えるという「U字カーブ」を描くと説明します。しかし、日本共産党の山中智子議員は40万人の枚方市よりも50万人の東大阪市の方が1人当たりの歳出額が増大している事実を指摘し、「報告書」に疑問を呈しています。
そもそも、歳出額を減らすためには、どの仕事を廃止・削減するかを明確にしなければ削減額など出てきません。そのような検証を否定した「報告書」は、空論でしかありません。(なかやま・なおかず)
(大阪民主新報、2019年9月8日号より)