特別区で政令市の権限・財源失う
都構想 住民に利点なし
住みよい堺市をつくる会 学習交流会に140人
6月の堺市長選で維新市政が生まれる下で、大阪市と堺市を廃止・解体する「大阪都」構想が市民に何をもたらすのかをあらためて明らかにし、堺の未来を共に考えようと、住みよい堺市をつくる会(つくる会)が9月21日、堺市北区内で学習交流集会を開き、会場には140人の市民が詰め掛けました。
森裕之立命館大教授が力説
議論しないと言ってきたが
立命館大学の森裕之教授が「『大阪都』構想と堺市――その根本的欠陥を理解する」と題して講演しました。
森氏は、6月の堺市長選で当選した維新の永藤英機市長は「4年間、都構想は議論しない」と言ってきたが、「都」構想は維新の看板政策、単一政策そのものだと指摘。永藤市長も府と大阪市でつくる「副首都推進本部会議」の副本部長になったが、同会議こそ「都」構想を進める中心母体に他ならないと述べました。
地図上・歴史上から消える
「都」構想の本質は、政令市である大阪市と堺市を廃止して、独立した自治体である「特別区」に分割し、権限や財源を府に吸い上げることにあり、「大阪市と堺市は地図上・歴史上から消えてしまう」とあらためて強調しました。
一つの特別区になる恐れが
人口270万人の大阪市を4つの「特別区」に分割する現在の案に照らすと、人口80万人の堺市は分割せず、一つの「特別区」とされる可能性があると指摘。維新は、大阪市を4つの「特別区」に分割すれば「役所が身近になる」と宣伝してきたが、堺市が丸ごと「特別区」になることは、市民にとってマイナス以外のなにものでもないと断じました。
まちづくりも決められない
例えば「特別区」は、普通の市町村が都市計画の権限すら府に奪われ、堺市域のまちづくりも府が決めるようになるとし、「こんなことを許せますか」と力を込めました。
さらに堺市の財源が府に奪われ、住民サービスの低下は避けられないと述べました。
市長専決の危険性もはらむ
「特別区」設置の法的な根拠である大都市法では、堺市を分割せずに丸ごと「特別区」にする場合は、住民投票を行う必要はなく、議会の承認だけでよいと指摘。最悪の場合は市長の専決処分で決められる危険もあると警告しました。
運命共同体として取り組む
森氏は、大阪市への昼間流入人口総数のうち、府内からの流入率は6割を占め、その中で最も多いのは、堺から働きに来ている人々だと指摘しました。森氏は、「大阪市が衰退すれば、堺市はじめ府内の自治体は衰退する。大阪市民の反対運動だけに委ねず、“運命共同体”として取り組み、住民投票で『特別区』設置を否決することが、堺市を守る道だ」と訴えました。
大阪市廃止問題を堺もわが事として
丹野優つくる会事務局長が行動提起
集会で行動提起した、つくる会の丹野優事務局長は、「都」構想の本質を広く市民に伝えるとともに、大小の学習会を各地で開こうと提案。永藤市政が施策見直しをめぐり実施した「市民提案の募集」(8月23日から9月30日)について、「市民の声」を理由に「何でも民営化」を進める狙いがあると批判。維新市政の動きを点検しながら、市民要望を突き付けていこうと語りました。
丹野氏は、大阪市の住民投票が来年秋冬に実施されることが必至という情勢の中、大阪市の廃止・解体問題を、堺でも「わがこと」として受け止め、大阪市でのたたかいに連帯して主体的に関わろうと強調。「都」構想に反対して大阪市をよくする会と明るい民主大阪府政をつくる会が開く集会(11月27日)に、堺からも参加しようと呼び掛けました。
「都」構想の本質を多くの市民に伝え
市長選で奮闘 野村友昭さんがあいさつ
6月の堺市長選では、野村友昭氏が堺市議を辞職し、自民党を離党して立候補。「チームSAKAI」に結集して幅広い市民と共に選挙戦に臨み、「都」構想にきっぱり反対し、政令市の力を生かした市政発展を訴え、永藤氏にあと一歩まで迫りました。
日本共産党も参加する「つくる会」も野村氏を自主支援。「市政を刷新し清潔な堺市政を取り戻す1000人委員会」も支援を決め、全力を挙げました。
集会には野村氏も参加しあいさつ。永藤市長が選挙から3カ月も経たないうちに、南区の児童自立支援施設や、百舌鳥古墳群の見学施設の計画を一方的に中止し、南海堺東駅前の商店街のまちづくりの基本的計画も白紙化するなど、現市政の問題点を指摘しました。
野村氏は、永藤市長は「『都』構想は任期中にはやらない」と繰り返してきたが、大阪市の住民投票「特別区」設置が可決されてしまえば、「堺も待ったなしだ」と強調。政令市を廃止する「都」構想の本質や狙いを多くの市民に知らせようと語りました。
(大阪民主新報、2019年10月6日号より)