〝原発マネー〟を還流か
関電経営陣に金品3億2千万円
野党チーム 国会で徹底解明へ
支払った電気料金が原発立地の有力者と関連会社を経由し、関西電力経営トップに渡されていた!?関電トップの八木誠会長、岩根茂樹社長を含む経営幹部20人が総額3億1845万円の金品を、原発が立地する福井県高浜町の元助役から受け取っていた「原発マネー還流疑惑」。4日開会した臨時国会の一大争点に浮上し、真相解明を求める国民の声が、一層高まっています。野党の疑惑追及チームは5日に関電本店へ要請し、高浜原発などを現地調査。日本共産党のたつみコータロー前参院議員(参院大阪選挙区候補)は7日に急きょ、原発が立地する福井県若狭地区に入りました。
たつみ前参院議員が福井・若狭地区入り
原発行政にメスを届いた内部告発文
「徹底的に全容解明し責任を追及してほしい。今回の事件を一過性の問題で終わらせてはいけません」。福井県小浜市で長年、原発反対運動を続ける明通寺住職の中嶌哲演さん(77)は、訪問したたつみ氏にこう語りました。
自浄能力とモラル感覚欠如など、関電の体質問題を指摘する中嶌さん。関電内部からとみられる告発が届いているとし、「今こそ原発立地の私たち、そして電力消費地の関西の皆さんも、一緒に原発問題解決へ動く時」と語ります。
中嶌さんが指摘する内部告発とは、「関電良くし隊」と名乗る差し出し人から6月中旬、中嶌さん宛てに届いた書簡です。
「関西電力株式会社の原子力事業本部におきまして、40年を超える長年にわたり大きな不正が行われてきました」
そんな書き出しで始まる告発文と同封資料は、内部事情に相当、詳しい人物によるものとみられます。告発文は、八木会長ら幹部の実名を挙げ、「利益供与された金が原子力事業本部、地域共生本部などの会社幹部に還流されていた」、「原資は発注工事費、特にゼネコン、プラントエンジニアリング会社、警備会社を介して渡された」など、一連の疑惑を詳細に記述。「この巨悪は、小さな声では排除できない」「原子力行政にメスを」と訴える内容です。
中嶌さんは、巨額の金品を提供した森山栄治元高浜町助役ら関係者の責任は免罪されないと強調した上で、「問題の本質を見落としてはいけない。不正の背景にある最大のポイントは、汚い金を使って過疎地域に原発を押し付けてきた関西電力、そして原子力行政にあります。利権と腐敗の構造そのものを正す必要がある」と語りました。
自民・稲田氏には
関連会社が献金も
告発文は、関電幹部だけでなく国会議員、県会議員、市長、町長、地元有力者にも還流したと指摘。福井県庁幹部、高浜町の元町長、関西電力・大飯原子力発電所関係者も金品の提供を受けていたことが報道で明らかになっています。
自民党幹事長代行の稲田朋美衆院議員が代表を務める党支部に、元助役の関連会社が2011年からの3年間で36万円を献金していたことも発覚。関電と関連会社3社は、同氏の資金管理団体から政治資金パーティー券を購入していました。
稲田氏は福井1区選出。福島原発事故後、福井県内の老朽原発を挙げ「最新のものに置き換えるべき」など新増設を求める質問を重ねており、与党議員に原発マネーが還流した構図が浮かび上がります。
原発マネー還流疑惑をめぐり、関西電力の八木誠会長(69)は厳しい世論を前に辞任は不可避と判断、岩根茂樹社長(66)は、電気事業連合会(電事連)会長を辞任する意向を固めたことが分かりました。
野党チームが現地調査
関電 野党との面会を拒否
原発マネー還流疑惑をめぐり野党関電疑惑追及チームが5日、大阪市北区の関西電力本店を訪れて真相解明に向けた要請文を提出。その後、福井県高浜町の高浜原子力発電所など現地調査を行いました。調査には日本共産党、立憲民主党、国民民主党などの衆参議員が参加。日本共産党から藤野保史、清水忠史両衆院議員が参加しました。
野党疑惑追及チームは3日に国会内で合同ヒアリングを開きましたが、関電側は出席しませんでした。この日も関電側は、「担当者がいない」として面会を拒否。警備員が要請文を受け取りました。
要請文は、一連の疑惑について「電力事業は国民生活に直結する重要なインフラであり、真相解明を求める国民の関心は高い」と指摘。▽国会審議に役員が出席して真実を明らかにする▽野党開催の合同ヒアンリングに出席――の2点を求めています。
国会審議で徹底解明を
関電本店訪問後、藤野議員は、「国民代表として訪れているのに誠実な対応がなされず、不信感が強まっている」とし、清水議員は「地元関係者の皆さんとも連携を強め、徹底追及していきたい」と語りました。
(大阪民主新報、2019年10月13日号より)