維新・永藤堺市政
老人福祉センターの浴場設備廃止、児童自立施設計画ストップ
市民らが署名、弁護士会が再考求め陳情、会長声明も
日本共産党堺市議団 森田晃一幹事長
堺市の永藤英機市長が、老人福祉センターの浴場施設廃止と、児童自立支援施設計画の中断を発表しました。日本共産党堺市議団幹事長の森田晃一市議に問題点を寄稿してもらいました。
「公費負担に限界」と市の入浴設備廃止
堺市は、8月21日に発表した「堺市立の高齢者福祉施設のあり方に関する基本指針(案)」で、市内に7カ所ある堺市老人福祉センター内のすべての「浴場設備の廃止」と「特別養護老人ホーム(中区)の民間譲渡」を示しました。廃止の理由について市は、いずれも人口減少・少子高齢化、介護費用の増大、公費負担に限界があるとしています。
老人福祉センターは、60歳以上の方なら誰でも利用できる施設です。その中にある入浴施設は、無料で利用でき、銭湯もなくなり、特に家にお風呂のない方や独り暮らしの方にとってはなくてはならない施設です。
この方針案に対し、特に入浴施設の廃止について市民の怒りと失望が大きく広がっています。約3カ月間で「入浴施設の存続を求める署名」は約2500筆集まり、さらに追加分も届いています。
堺市が実施したパブリックコメントでは208件の意見が寄せられ、そのうち「廃止に賛成」は4件でした。
災害時には全ての市民が使う施設
10月4日の「強靭でしなやかな社会実現調査特別委員会」において私は、防災対策の観点から入浴施設廃止の問題点を指摘しました。その中で、阪神淡路大震災の発災直後に堺に避難してきた被災者に対して、老人福祉センターの浴場を開放した事例があったことが明らかになりました。つまり災害時には全ての市民が使う施設なのです。
また、危機管理室としての対策では、「大規模災害時の入浴施設の準備に関して課題になっているが議論するに至っていない」ことも明らかになりました。このような状況を認識しておきながら、廃止案を示してくるのは無責任だと言わなければなりません。
署名活動中には次のような声を聞きました。
「私の家にはお風呂があるんやけど、ここを利用してます。友達が独り暮らしでお風呂の中で亡くなったのを見て怖くなったから。それにここに来たら、友達と話もできる。なくすなんてひどい」
この声を永藤市長は真摯に受け止めて、浴場廃止方針案の撤回に応じるべきです。
着工寸前で児童自立支援施設計画を中断
また堺市ではこの間、政令指定都市に設置義務が課せられている「児童自立支援施設設置計画」が着実に進み、まもなく着工するところまできていました。ところが、永藤氏が市長に就任するや否や、計画の「中断」を発表しました。
その理由は、35億円の建設費とランニングコストなどの経費がかかるからと言います。
日本共産党堺市議団は政令市移行前から、同施設の設置を求めてきました。橋下徹知事(当時)も設置を迫りましたし、維新の堺市議も市議会で要望する中で、建設予定地(2万坪)の購入の議案が全会一致で可決されていました。
これまでの議論は完全に無視し、市長がトップダウンで物事を決めるのは、民主主義とは相いれないやり方です。
大阪弁護士会が陳情、会長声明
そんな折、11月12日付けで大阪弁護士会子ども委員会有志36人から、堺市児童自立支援施設設置計画に基づく施設整備の中断に対して再考を求める陳情書が提出されました。
そこには、「施設を設置しなかった場合に生じる児童への不利益やそれによって生じる各種の長期的な影響をも併せて検討するべきであり、単純なコスト計算による判断は本質的に見誤る危惧がある」と厳しく指摘されています。
19日には大阪弁護士会会長声明も出されました。声明について記者会見で問われた永藤市長は、「少し事実誤認と思い込みと感情的な部分が入ってるんじゃないか」と答えました。
事実誤認というなら、先の堺市長選挙中に、「児童自立支援施設というと、ちょっとまあひねくれた子どもを更生させるための施設を建てると言うんですね」と言い放った維新の馬場伸幸幹事長にこそ言うべきではないでしょうか。
児童自立支援施設に入所する子どもたちは、非行だけではなく、昨今では性虐待など虐待を受けた子どもや、家庭的な環境で育つことができなかった子どもたちが多数を占めています。堺市の子どもは堺市の責任で、自立に向けて力を注ぐべきです。
日本共産党堺市議団は、老人福祉センターの入浴施設の存続、児童自立支援施設計画中断の再考を求めて全力を尽くします。(もりた・こういち)
(大阪民主新報、2019年12月8日号より)