おおさかナウ

2020年01月05日

政令市・大阪市を守り抜いて
災害に強く市民に優しい街へ
山中智子日本共産党大阪市議団長の市政報告から

 2020年は、大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想や、カジノ誘致に暴走する維新政治との対決が正念場を迎えます。大阪市政の現状をどうみるか、大阪市廃止・分割の問題点は何か――日本共産党大阪市議団の山中智子団長が市政報告会(19年12月15日、大阪市城東区内)で詳しく語りました。大要を紹介します。

カジノの誘致に執念  
――維新の松井市政

カジノ事業者が狙うのは日本人

市政報告会で訴える日本共産党大阪市議団の山中智子団長=2019年12月15日、大阪市城東区内

市政報告会で訴える日本共産党大阪市議団の山中智子団長=2019年12月15日、大阪市城東区内

 大阪市の松井一郎市長(大阪維新の会代表)が就任して、8カ月余りが経ちました。松井市長は、カジノを大阪に呼ぶことと、大阪市を廃止・分割する「都」構想の2つに、すべてのエネルギーや執念を注ぎ込んでいます。
 カジノを誘致する大阪湾の埋め立て地・夢洲は、2025年の大阪万博の会場。万博に間に合わせるために、土砂を買ってまで急速埋め立てを進めています。舞洲と夢洲を結ぶ道路を拡幅し、地下鉄も延伸する。これらに何百億円も費やします。
 当初は、いろんなカジノ事業者が大阪に来る意向を示していましたが、横浜市が誘致を表明すると、相次いで大阪から撤退。首都圏の横浜の方が、大阪よりも人口が圧倒的に多いからです。カジノ事業者の狙いは日本人の懐だからです。
 いま大阪進出を希望するのは1社だけと言われています。逆に大阪は足元を見られ、事業用地は売却ではなく賃貸にするなど、カジノ事業者に都合が良いように譲歩しようとしています。
 カジノ事業者がもうけるということは、日本人の懐からお金を巻き上げること。カジノは大阪にも、日本のどこにもいりません。大阪市議会83人中、カジノ反対と堂々と言えるのは、日本共産党の4人だけです。

市廃止に向けて何でも民営化へ

 松井市政は、大阪市の廃止に向けて、市の仕事をどんどん投げ捨てようとしています。
 歴史と伝統ある大阪市立高校の全21校を府に無償移管する方針を出し、天王寺動物園の独立行政法人化も狙っています。大阪城公園は民営化で、1200本もの樹木を切り倒して有料施設ができ、市民が心を痛めています。12月の議会では、鶴見緑地の管理を、20年間も民間企業グループに任せる議案が通りました。
 市営地下鉄・バスが民営化されましたが、バスの便数が増えたとか、良くなったことがあるでしょうか。
 一方、大阪メトロは、夢洲に55階建ての高層ビルを建てるといいます。大阪市が自治体としてあり得ない方向に走っている中で、元気をなくす職員も増えています。これでは大阪市が良くなるはずがありません。

大阪市の財政に明るい兆し見え

 大阪市には明るい材料もあります。長年、「大阪市の財政は厳しい。サービスは削る」と言われてきましたが、18年度決算は4億2900万円の黒字で、30年連続の黒字。一般会計の借金残高は14年連続で減らしています。橋下市政になる前からです。
 90年代の大型開発の無駄遣も、借金返済はそろそろ終わります。大阪市の予算は20年以上、前年度より抑える「マイナスシーリング」が続きましたが、来年度は数%ですが増やせるなど、明るい兆しが見えています。
 災害時に避難場所となる中学校へのエアコン設置は、各区1校だったのが全校で可能になりました。
 防災対策では、防潮堤の整備はじめハード面と同時に、避難が困難な方へのきめ細かな支援も必要です。それには地域任せではなく、小学校区単位に専任の職員を配置するなどの取り組みが不可欠です。
 今こそ災害に強く、すべての市民に優しい街へ、大阪市が持つ力を発揮できる時。カジノに夢中になっている場合ではなく、制度いじりの暇もありません。

百害あって一利なし  
――大阪市廃止・分割

「広域一元化」に何の意味もない

 私は、大阪市の廃止・分割は「百害あって一利なし」と、ずっと言い続けてきました。「都」構想のうたい文句の一つは、「広域機能の一元化」ですが、大阪城公園などの大規模公園、美術館や博物館を府に移したところで、財源が増えるわけでもなく、何の意味もありません。
 都市計画の権限は府が握り、「特別区」となった旧大阪市域では、身近なまちづくりを自分で決められません。他の市町村ではみんな自前でやっている消防・水道・下水道も、府が担いますが、旧大阪市域の住民の声は届かなくなります。府議会のうち4つの「特別区」選出の議員は3割に過ぎないからです。カジノ誘致や巨大開発も府が行いますが、大阪経済に役立ちません。

サービスは削減半人前の自治体

 もう一つのうたい文句は「豊かな住民サービスと住民自治」ですが、「特別区」は半人前の自治体です。市町村の大事な税金(固定資産税・法人市民税など)や国からの交付金は府に入り、府が「特別区」に配分するので、自主財源は減ります。一方、「特別区」設置には庁舎建設やシステム改修はじめ初期コストが必要で、職員増など運営コストも増加。住民サービスは削らざるを得ません。
 府にも移せず、「特別区」にも分けられないものは、全部、「一部事務組合」が担います。介護保険もそうです。「払える保険料に」「介護サービスを充実してほしい」など、「特別区」の身近な願いも届かない、「あり得ない自治体」になってしまうのです。

公明が屈服して「都」構想に賛成

 法定協議会は18年末まで23回開かれ、「これではひどすぎる」「市民にメリットがない」と、維新以外の全会派が絶対反対となってきました。焦った松井知事(当時)や吉村市長(同)は、「任期中に住民投票を実施する」という公明党との「密約」を暴露。それでも公明党が反対すると、知事・市長を入れ替えて「ダブル選」に打って出ました。
 維新が「ダブル選」や議員選で勝利すると、公明党は屈服して住民投票にも「都」構想にも賛成へと転じました。自民党も住民投票には賛成し、「都」構想には「是々非々」という態度になりました。住民投票にも「都」構想にも反対を貫いているのは、日本共産党だけになっています。

法定協議会では支離滅裂な議論

 選挙後に再開した法定協議会では、維新だけで過半数を占め、公明党が屈服している中で、住民投票実施に向けたアリバイづくりの支離滅裂で乱暴な「議論」が続きました。
 一番ひどいのは突然浮上した「合同庁舎」案です。4つの「特別区」に新庁舎を造らず、中之島にある現在の大阪市役所本庁舎を共同使用するというのです。「地方自治体とは言えない」「災害時にどうするのか」などの批判を無視して、審議は24分で終わりました。
 区議会の議員定数は、現在の大阪市議会の83人を各「特別区」に割り振るだけです。「北区(特別区)」は23人ですが、府内で23人の議会といえば箕面市で、人口は13万人。「北区(特別区)」の人口は75万人です。全体として議員定数は、東京特別区や中核市の3分の1しかありません。議員定数の議論はわずか13分で打ち切りでした。
 児童相談所は「特別区」ごとに運営しますが、「それでは人材確保もできず、力量も高まらない」との現場の声を無視しています。つまり「都」構想推進派の狙いは、大阪市をつぶして財源や権限、財産を府に持っていくことだけにあり、「特別区」はどうでもいいということが、どんどん明らかになりました。

新しい大阪市へ共にスタートを

 法定協議会では、「特別区設置協定書」案に盛り込む基本的な方向性を数の力で強引に決め、国との協議を進めながら、2月から4月にかけて「出前協議会」を4カ所で開く予定です。松井市長は「反対派はご遠慮いただきたい」と言い放ちましたが、税金を使って開くものであり、とんでもない発言です。
 協定書案を法定協議会、大阪市議会・府議会で議決し、住民投票を実施しようと「スケジュールありき」で進めています。松井市長らは投票時期も勝手に持ち出しています。
 諦めるわけにはいきません。大阪市を一度廃止すれば、どんなに後悔しても、元に戻す法律はありません。2015年の住民投票は、いろんな人々や団体が「大阪市をなくすな」と声を上げ、「なにわの市民革命」と呼ばれました。再び住民投票が強行されるなら、どんなことがあってももう一度勝利して、最終最後の決着をつけたい。政令市・大阪市の持つ大きな力を本当に市民のために使う、そんな新しい大阪市をつくるためのスタートを、皆さんとともに切りたいと思います。

(大阪民主新報、2019年12月29日・2020年1月5日新年号より)

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