おおさかナウ

2020年01月19日

大阪市廃止・分割の「都」構想
関西テレビで各党が生討論
住民サービス低下は不可避

 大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想についての生討論が9日夕、関西テレビの番組「報道ランナー」で放映され、日本共産党の山中智子大阪市議団長、大阪維新の会の松井一郎代表(大阪市長)、公明党府本部の土岐恭生幹事長(大阪市議)、自民党の北野妙子大阪市議団幹事長が出演しました。

山中氏「制度案は0点」

分権に逆行の最悪の制度だ

視聴者からの質問に答える山中氏(関西テレビから)

視聴者からの質問に答える山中氏(関西テレビから)

 討論に入る前、「『都』構想は百害あって一利なし」と一貫して主張してきた山中氏に、視聴者から「百害を教えてほしい」との質問が寄せられました。
 山中氏は「100言っていいですか」と前置きした上で、住民サービスの低下は避けられず、大阪市がなくなり「特別区」になることへの不安と混乱を指摘。「一番の問題は、大阪市から府へ権限や財源を吸い上げ、地方分権と地方自治の流れに逆行する最悪の制度」と答えました。
 番組では、2015年の住民投票で大阪市廃止が否決されて以来の経過を紹介。制度案を話し合う法定協の議論が「政局の荒波に左右され続けた」とし、「都」構想に反対して維新と対立してきた公明が、昨年4月のダブル選で維新が勝利した後に「賛成」へと態度を急変させたことなどを振り返りました。
 昨年12月に可決された「特別区」の「基本的方向性」を採点した山中氏は「0点」、松井氏は「制度に100点満点はない。いまよりベター」などと説明しました。土岐氏は「100点」、北野氏は「制度の中身に及第点はつけられない」と、「10点」としました。

自治体の体をなしていない

大阪市廃止・分割問題で討論する(右から)山中、北野、土岐、松井の各氏=9日(関西テレビから)

大阪市廃止・分割問題で討論する(右から)山中、北野、土岐、松井の各氏=9日(関西テレビから)

 「0点にしたが、マイナスと言いたいぐらいだ」と山中氏は、「特別区」の人口は当初30万人程度とされていたが、今回の4区案は平均67万人と、堺市を除く府内どの自治体よりも規模が大きいと指摘。「特別区」ごとに庁舎を建設せず、現在の大阪市役所本庁舎を共同で使う「合同庁舎案」となるなどの問題点を挙げ、「『ニア・イズ・ベター』は看板倒れどころか、地方自治体の体をなしていない」と批判しました。
 アナウンサーに「100点ですか。以前まで反対していて」と斬り込まれた土岐氏は、「『都』構想にはもともと賛成している」と回答。コメンテーターが「前回(の住民投票は)基本的に反対だったのに、今回は支援団体に180度違う『賛成』でお願いするのか」と問うと、「丁寧に説明していく」と述べるにとどまりました。
 大阪市が廃止され、財源が府に吸い上げられた場合、「特別区」で敬老パスはじめ市独自の住民サービスが維持できるのかどうか。松井氏は、府に移る財源は、府が担うことになる仕事に見合った分で、「サービスは維持できる」と説明しました。

住民サービス維持は困難に

 山中氏は、制度案では「特別区」設置に伴う職員増やシステム運用経費の増加分が考慮されていないとし、「(『特別区』は)自主財源が本当に少なく、続けることは非常に難しくなる。どれを削るかということになる」と述べました。
 また松井氏が、「(維新府・市政による)広域一元化で大阪は地価が上がり、市民の資産価値が増えている」と主張したのに対し、山中氏は「土地の値段が上がって喜ぶのは一部の人。暮らしている人は固定資産税が上がって困る」と反論。大阪は、月額の実収入や消費支出が全国より4万円ほど低く、完全失業率は全国より高いとし、「この状態で『大阪を良くした』と言うのは、昔と同じ失敗の道に行く発想だ」と語りました。

大阪市の力を住民のために

 視聴者からツイッターで寄せられた「(『都』構想に)反対の人は、どんな制度が望ましいか」との質問に、山中氏は「制度ではなく、大阪市の力を本当に住民のために使うように、(政策の)中身を変えないといけない」「住民の声が市政に反映されるような住民自治の仕組みを、本気でつくらなければ」と語りました。

(大阪民主新報、2020年1月19日号より)

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