遅れるホーム柵・人員削減加速・開発路線への傾倒
大阪市地下鉄・バス 民営化の現状を検証
迷走する大阪メトロ 公共交通の会
大阪市営交通が2018年4月から民営化された下で、地下鉄やバス事業の現状を現場から検証する集会「迷走する大阪メトロの実態」が18日、大阪市中央区内で開かれました。大阪市の公共事業を発展させる市民の会(公共交通の会)が主催し、つくろう!市営のコミュニティバス大阪市民ネット(コミバス市民ネット)が共催しました。
地下鉄駅職員は
最低限の配置に
公共交通の会の中山直和事務局次長が基調報告。民営化後、新会社の大阪メトロと大阪市議会各会派代表による「連絡会議」が年1回開かれるだけで、市民・団体からの要望に大阪メトロは文書回答はするが話し合いはしないなど、「議会や市民との間に壁が築かれている」と指摘しました。
公共交通の会の実態調査(18年)では、地下鉄駅の職員は最低限の配置数で、災害や不測の事態に対応できないことが判明。一方で大阪メトロは「中期経営計画」で、大阪湾の埋め立て地・夢洲への高層ビル建設などの開発、不動産や商業施設経営を打ち出しているとし、「交通局時代に失敗したフェスティバルゲートなど、過去の破綻した事業と同じではないか」と問い掛けました。
大阪メトロは25年までに全駅にホーム柵を設置することを決め、御堂筋線は21年度までに完成するとしています。中山氏は、平松市政時代の計画では、ことし3月末までに御堂筋線への全駅設置が完了するはずだったと強調。「民営化のために2年間遅れた。この間に接触・人身事故が発生すれば、維新政治の責任が問われる」と述べました。
「都」構想は完全
民営化への入口
中山氏は、大阪メトロが地下鉄やバスの自動運転化で人員削減を加速させ、監視社会・人権侵害につながると批判されている「顔認証システム」を市民の合意なしに推進していると指摘。交通空白地域の解消や地下鉄の防災・防水対策の強化など課題は鮮明であり、地域の運動と交渉を重ね、議会論戦とも結んで、大阪メトロと都市交通局に役割を果たさせようと語りました。
大阪市を廃止する「大阪都」構想の制度案では、同市100%保有の大阪メトロの株式は「特別区」に分割されると指摘。「『特別区』の財源が乏しい中で、株式が売却される危険が即高まる。完全民営化の入口となる『都』構想を打ち破ろう」と呼び掛けました。
津波・高潮の被害大で対策急務
大阪メトロ運転手の河野英司さんが、ひげを理由に不当な人事評価を受けたとして地下鉄運転手2人が市に慰謝料などを求めた訴訟で、大阪高裁での勝利判決が確定(昨年9月)したことを報告。民営化後、人員削減で残業が増えて、生理休暇が無給になるなど職場の深刻な実態を示し、「これではサービス向上はできない」と語りました。
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会の泉本徳秀さんは、駅ホームからの転落事故が後を絶たない中、ホーム柵設置や駅員の配置は不可欠だと力説。森下勉さん(大阪市交通の会)が、津波や高潮で地下鉄の全85駅のうち65駅が浸水すると想定されており、対策が急務だと語りました。
中川敬介さん(大阪市交通の会)と伊藤一正さん(年金者組合大阪市内支部協議会)が、カジノ・万博の予定地の夢洲について、高層ビル建設や地下鉄延伸などの問題点を詳しく報告しました。
地域コミュニティーバス運行を
コミバス市民ネットの室谷雄二さん(生野区社保協)は、同区が交通不便地域の解消に向けて、区民や事業者も参加する検討会を開いたことを紹介。「社保協として地域コミュニティーバスの具体的な運行路線も提案している。予算措置を求めて陳情も出したい」と語りました。
集会では日本共産党の井上浩大阪市議が来賓あいさつし、再度の住民投票が11月に狙われている中、大阪市を守る共同を大きく広げようと呼び掛け。カジノ誘致阻止、交通不便地域の解消などで市民と共に運動する決意を語りました。
(大阪民主新報、2020年1月26日号より)