強引な幼保再編に〝待った〟
岸和田市議会 関連予算を削除
維新推薦市長〝すべて民間で〟
保護者・市民に不安・怒り広がる
岸和田市(永野耕平市長)の市立幼稚園・保育所を民間の認定こども園に再編する再編計画を巡り、同市議会は19日の本会議で、2020年度予算案から関連予算を削除する修正案を、賛成多数で可決しました。
民間施設開園で公立を順次廃園
同市には23市立幼稚園と11市立保育所があります。市が昨年12月に発表した再編方針は、民間事業者が新たな場所で認定こども園を新設し、その周辺の市立幼稚園・保育所は募集を停止、すべての園児の卒園後に廃園するという内容です。
再編方針に基づいて市は2月に第1期の個別計画を発表し、市議会に関連予算を提案しました。個別計画では、22年度に民間の認定こども園を3施設開園。2施設の開園に伴い24年度に1幼稚園、27年度に2保育所を廃止しますが、あと1つの開園でどの公立施設が廃止されるかは明らかにしていません。
これに対し日本共産党、公明党、次世代政策会議、誠和クラブの4会派が、「市域全体を見据えた全体計画が示されないまま個別計画が策定されており、全体的なビジョンが見えない」「まずは着手ありきの整合性のない計画」として修正案を提案。議長を除く23人中18人が賛成し、大阪維新会ときしわだ未来の2会派5人が反対しました。
「何でも民営」の姿勢があらわに
関連予算が削除された背景には、永野市長が強引に進めてきた幼保再編計画に対して、大きく広がった保護者や市民の不安や怒りがあります。
18年2月の市長選で、維新推薦で当選した永野市長は、昨年2月の所信表明で市立幼稚園・保育所の認定こども園化と民営化を進めると言明していました。同年8月から2カ月間に、5回の「市立幼稚園及び保育所あり方検討委員会」が、立て続けに開かれました。その答申を受けて10月末、「市立幼稚園・保育所の再編」と「民間活力の積極的な導入」をうたった再編方針(素案)を公表しました。
公表前に開かれた市の総合教育会議で、市教委は「公の責務」を指摘しましたが、永野市長は、「公立である必要はなく、すべて民間で運営すべき」と発言。「何でも民営化」の姿勢をあらわにしました。
市民の不安や疑問には答えずに
素案に対するパブリックコメントには1959人が意見を寄せましたが、公募を締め切った3日後に、不十分な取り扱いの状態で、再編方針を公表しました。
素案に対する質疑を行っていた市議会からは、「公募した意見に対する手続きが不十分」「あまりにも拙速」などの批判が続出。1月に6回開かれた市民説明会はどこも満員になりました。
市民の質問や要望に、市側は「意見聴取の場ではなく、決定方針を伝達する場」と発言するなど、参加者の疑問や怒りを広げました。
公立の存続求め宣伝や署名活動
保護者や市民らがつくった「岸和田市立幼稚園・保育所のこれからを考える会」は、公立施設の存続を求める署名や街頭宣伝、議員要請などに取り組み、1万3千人を超える署名を市議会に提出。再編方針そのものは撤回されていない中、本会議で関連予算が削除された19日にも、市役所前で宣伝と署名行動を行いました。
保育所に通う4歳の長男と1歳の次男を育てる藤田真希さん(31)は宣伝行動に参加し、市議会も傍聴してきました。「公立には、手厚い保育ができるなど、他に代えがたい役割があります。募集停止になれば、残された子どもたちが廃園まできちんとした保育が受けられるのか不安です。市は何よりも私たち保護者の声をもっと聞いてほしい」と話しました。
(大阪民主新報、2020年3月29日号より)