大阪都構想「協定書」 一日も早く否決を
市民にメリットなし/市議会論戦で鮮明に
橋下徹大阪市長が大阪市会に上程した、大阪市を廃止・解体して特別区を設置する「大阪都」構想の「協定書」(設計図)についての質疑が、9日と10日の財政総務委員会で行われました。維新の会が法定協議会から反対派をすべて排除して単独で決定した「協定書」。大阪市会は7月に無効を宣言する決議を野党の賛成多数で可決しています。今回の質疑でも、住民サービスの低下を招くなど「大阪都」構想が市民にとって百害あって一利もないものであるかが、あらためて鮮明になりました。
「財政効果」なく、逆にコスト増に
市民の財産は府へ
日本共産党の山中智子議員は9日の委員会で、「二重行政の無駄をなくして4千億円を生み出す」が「大阪都」構想のうたい文句だったが、実際の「財政効果」は7~9億円にすぎないことが、これまでの議論で明らかになったと指摘。逆に、特別区設置による初期投資費用は600億円、維持コストは年20億円に上るとしました。
「広域行政の一元化」といううたい文句についても、消防や下水、病院、高校、大学などが府に移管され、大阪城、動物園、鶴見緑地、長居公園、美術館、中之島公会堂はじめ長い時間をかけて市民の税金を使って築かれてきた身近な施設が、無償で府に取り上げられ、市民への割引制度がなくなる恐れがあるなど、何のメリットもないと述べました。
特別区の設置と同時に財源不足
住民サービス悪化
山中議員は「協定書」の基になっている府市大都市局作成の財政試算を提示(表)。各特別区では設置した年から3年間で計827億円の財政不足が生じ、そのために土地売却(計280億円)や財政調整基金の取り崩し(459億円)、新たな借金(88億円)が避けられないという内容です。
「これでは市民サービスは悪くならざるを得ない。遠い将来に収支不足は改善するというが、大幅な職員削減を見込んだものだ」と山中議員。「収支不足で傷だらけの中で出発する特別区長を選ぶよりも、区政会議などを充実させ、区民の声が届く仕組みをつくり、住民自治を豊かにすることこそが大事だ」と強調しました。
特別区の収支不足対応シミュレーション(単位:億円)
区 |
収支不足額 |
土地売却 | 財政調整基金 | 地方債 | ||||
割当 |
17~19年度 |
残 |
割当 | 17~19年度 取り崩し額 |
残 | 3年間 | ||
北 | △191 | 66 | 66 | 0 | 145 | 107 | 38 | 18 |
湾岸 | △116 | 36 | 36 | 0 | 80 | 68 | 12 | 12 |
東 | △176 | 62 | 62 | 0 | 135 | 95 | 40 | 19 |
南 | △210 | 72 | 72 | 0 | 161 | 114 | 47 | 24 |
中央 | △134 | 44 | 44 | 0 | 96 | 75 | 21 | 15 |
計 | △827 | 280 | 280 | 0 | 617 | 459 | 158 | 88 |
日本共産党の山中智子議員が財政総務委員会に提出した資料より作成
半人前の自治体の寄せ集まりに
異常に少ない議員
10日の委員会でも山中議員は、5つの特別区が自立を欠いた「半人前の自治体の寄り集まりになる」と指摘。国民健康保険や介護保険など命と暮らし、健康にかかわる事業を一部事務組合で共同運営することは、「全国の基礎自治体を探してもあり得ないやり方。ニアイズベターどころか、独自性もなにもない」と追及しました。
さらに5つの特別区議会の定数は昨年8月の制度設計案では243人だったが、維新単独の「協定書」で86人となり、人口34万人の「湾岸区」は12人であるとし、「(橋下氏が言う)公選区長だけでなく、議会などいろんな回路で住民自治は充実する。(議員の大幅減は)住民自治を大切にする気がない」と批判。「一日も早く否決すべき」と主張しました。
〝手続きも内容も正常でない〟 野党各派が問題点追及
市長の態度 まさに独裁
財政総務委員会では山中氏の他、野党各会派が「協定書」の問題点を追及。「二重行政解消で財源を生むというのは幻想だった」「特別区の財源とまちづくりの権限は一般市以下、議員数は町村以下だ」(公明党)、「強引な手法で他会派を排除し、府議会の維新の会議員だけでわずか6時間で決めた『協定書』」(自民党)、「手続き的にも内容的にも正常なものとは言えない。欠陥商品だ」(民主系)などと批判しました。
橋下市長は「協定書」決定当時に、「『都』構想の是非は議会で議論すればいい」と繰り返していましたが、維新の会議員への答弁で、「議論の焦点は『都』構想の是非ではない。最後は住民投票で決める」「(議会の議論は)住民投票に付すためのお手伝い、資料作成」などと述べ、議会が住民投票を妨害しているかのように主張しています。
山中議員は10日の質問で、大阪市解体の根拠となっている大都市地域における特別区の設置に関する法律では、協定書を速やかに各議会に付議して承認を求めるよう定めており、「協定書の承認は議会が決めること。『住民投票させろ』と言って議会が悪いかのように言うのは越権行為で、『議会はものを言うな』というのは独裁の態度。議会として住民投票に値しないものと判断すれば否決して止めることもできるというのが、この法律だ」と力説しました。