おおさかナウ

2020年06月28日

いまこそコロナ対策に全力を
市廃止は百害あって一利なし
第35回法定協 山中日本共産党大阪市議団長の意見表明(大要)

 19日、大阪市役所内で開かれた第35回大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)で、「特別区設置協定書案」の採決に当たって日本共産党の山中智子大阪市議団長が行った意見表明(大要)は次の通りです。

地方分権に逆行 時代錯誤の暴挙

第35回法定協で意見表明する山中氏=19日、大阪市役所内

第35回法定協で意見表明する山中氏=19日、大阪市役所内

 日本共産党の意見を述べます。この間、3年間にわたって議論してきましたが、そもそもこの「大阪市廃止・分割構想」は、大阪市をつぶして、財源・権限を大阪府に取り上げ、半人前の自治体である「特別区」をつくるというもので、地方分権の流れに逆行する時代錯誤、地方自治破壊の暴挙に他なりません。
 「特別区」は設置コストや分割に伴う毎年の経費の増大により、これまで大阪市として行ってきた住民サービスは、そのいくつかをカットせざるを得なくなるという、市民にとっては踏んだり蹴ったりとしか言いようがないもので、まさに〝百害あって一利なし〟です。しかも今回の案では、「北区」以外はまともな庁舎はもてず、中之島庁舎に1510人もの職員を同居させることを前提にするなど、「特別区民」のことなどどうでもいいと言わんばかりのものであり、私たちはこの「協定書案」には反対だとあらためて申し上げます。

住民投票実施はあり得ないこと

 加えて今回、新型コロナという未曽有の感染症を受けて、一層、大阪市の廃止、ましてや11月の住民投票などあり得ないことを強調します。
 この間、市民は常に命の危険と隣り合わせという状況で過ごしてきました。現在、大阪においては感染拡大が収まっているとはいえ、いまなお第2波、第3派の恐怖におびえると共に、インバウンドの激減、休業・自粛などによるかつてないほどの経済の落ち込みの中で、多くの方が暮らしの危機に直面しておられます。
 職や収入を失い、明日どうやって食べていこうとか、長年築いてこられたご商売を畳むしかないという方もたくさんおられます。感染を警戒しながらの学校生活が始まった子どもたちや、デイサービスや食事会など人との交流がなくなって戸惑う高齢者などの、体と心のケアも本当に大変です。皆さん、生きることに精いっぱいです。
 副首都推進局が行った意見募集でも、「いまは(住民投票は)やめてほしい」という意見が圧倒的だったことを、きちんと受け止めるべきです。しかも、集会や宣伝などは制約が続き、内容を丁寧に周知できるような環境にもない中で住民投票をするなど、理解に苦しみます。

協定書の前提はコロナ前の試算

 その上、住民投票の対象となる「協定書案」は、新型コロナ以前のものです。コロナ以前の国の経済成長率に基づく大阪市の収支の動向を前提に財政シュミレーションを行い、「住民サービスを維持する」と書き込むとか、大阪府からの配分を10年間は増額するとか説明していますが、コロナの影響で市税収入は落ち込む一方で、休業補償、生活支援、景気対策で支出は増加し、大阪市の収支は大幅に悪化します。
 財政当局が、コロナの影響を踏まえた大阪市の中期的な収支の見通しはいつ出せるか分からないとしている通り、まったく先行きが見えないのに、コロナ以前の試算で「特別区」の財政を説明するなど、市民をだますようなものです。コロナの影響を踏まえた財政シミュレーションに基づいて議論することなしに、住民投票はできないはずです。
 また、コロナ禍の下、学校や地域などは行事や交流などをことごとく中止してきました。秋に向けて感染の状況を考慮しながらも、運動会などの行事を行い、絆を深めようとしています。そんな時に住民投票で地域を分断するなど、ひど過ぎると思いますし、「11月1日の住民投票」をちらつかされて日程調整にも苦慮されています。市民を大切に思うなら、「住民投票は当面やらない」と表明するのが、当然です。

第2波に備えて暮らし営業守れ

 そして、いまやるべきことは、必至だといわれる第2波に備えて、保健所機能や病院体制などを抜本的に拡充すると共に、市民の暮らしや中小企業の営業などへの支援に、国・地方挙げて全力で取り組むことです。
 今回の感染拡大の中で、公衆衛生機能や医療体制がいかに不十分なものであるかが明確になったことは、誰も否定できません。減らされてしまった保健師さんなどの抜本的な増員、医療体制の拡充は急務です。
 全国でも突出している財政調整基金も活用して、市民の暮らしや中小企業の営業を支援することを、市民は心から願っています。住民投票や大阪市廃止、「特別区」設置に何百億円もかけるなど、もっての外です。
 付け加えれば、夢洲開発やIR=カジノ誘致もストップしなければ、財政が立ち行かなくなると思います。「ポスト・コロナ」の時代を見据えたとき、夢洲開発やカジノ誘致を従来通り進めるべきかどうかも、真剣に検討されるべきです。

手放しの礼讃はするべきでない

 最後に、「大阪はコロナ対策はどこよりもうまくいった。司令塔を一元化したからだ。だからいま大阪市廃止なんだ」という論についてです。第1波に対する取り組み状況については、まだ途上ではありますが、国はもちろんのこと、それぞれの自治体ごとにいろいろな角度から真しに検証することが求められています。
 体制の問題、公衆衛生や医療の量の問題など検証しなければなりませんが、体制についてはもともと、緊急事態宣言の下でのさまざまな権限は知事にありますから、知事が判断・発信することは当然です。他の都道府県も、そうした役割分担はきちんとなされていただろうと思います。
 文字通り「一人の指揮官」状態である東京都が万々歳だったのかといえば、いまも多くの感染者が発生し、何かと批判が寄せられていることは周知の通りです。大阪も、救急病院が受け入れを停止したり、熱があってもどこも診てくれなかったり、検査が非常に少ないなど、検証・反省しなければならないことはたくさんあります。手放しで「うまくった、うまくいった」と喜んだり、それは「(府と大阪市を)一元化したからだ」と、何でもかんでも「都」構想を礼讃するようなことは、すべきではありません。医療や生活支援、営業支援の中身の検証と拡充にこそ、力を尽くすべきです。

大阪市で貧弱なコロナ独自施策

 その意味で、私がむしろ着目しているのは、他の自治体では役割分担をしながらも、基礎自治体の市町村も、住民の命と暮らし、営業を守るために、懸命に独自の努力をしていることです。国や府の制度の対象にならない事業者に給付金の制度をつくったり、10万円の給付金に上乗せをしたり、さまざまな形で事業者支援、生活支援、文化への支援を実施しています。
 大阪市はその点で本当に貧弱だという批判が根強く、「バーチャル『都』構想か何だか知らないが、『都』構想になれば基礎自治体である『特別区』は住民のための仕事はしないのか」と言われた方もあります。
 繰り返しますが、いまやるべきことは、何でもかんでも制度に結び付けて大阪市廃止に血道を上げることでは決してなく、政令市・大阪市としての力と役割を発揮して、公衆衛生機能と医療体制の強化、市民の営業と暮らしの支援に全力を尽くすべきだと申し上げ、日本共産党の意見とします。

(大阪民主新報、2020年6月21日号より)

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