おおさかナウ

2020年09月14日

発がん性指摘される有機フッ素
摂津市 汚染度全国ワーストに

 発がん性など人への健康リスクが指摘されている有機フッ素化合物による高濃度の水質汚染が、大阪市東淀川区や摂津市の地下水で起きていることが、国などの調査で明らかになっています。

大阪市東淀川区も高濃度

わずかな量でも健康被害の恐れ

 有機フッ素化合物は、焦げ付かないフライパンや、はっ水加工された衣服、食品包装紙など日常の生活用品に幅広く使われている物質。自然界で分解されるのに数千年かかるとされることから、「永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)」とも呼ばれます。
 中でもペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、ピーフォス)と、ペルフオロオクタン酸(PFOA、ピーフォア)は、わずかな量でも、がんや低体重出産などの重大な健康被害を引き起こすとされています。
 このため2009年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の規制対象にPFOSが追加され、同条約の締約国である日本国内では原則として製造・輸入が禁止に。19年にはPFOAが同条約の対象物質となり、製造・使用が禁止されました。

ことしになってやっと基準値が

東淀川区にある瑞光寺。京大の研究グループの調査で地下水から高濃度の有機フッ素化合物が検出されています。

東淀川区にある瑞光寺。京大の研究グループの調査で地下水から高濃度の有機フッ素化合物が検出されています。

 日本では両物質について、水道水と河川・地下水について基準値を制定してきませんでした。
 有機フッ素化合物は米軍の泡消火剤に含まれ、消火訓練などで放出された泡消火剤が基地外に流出する事故が繰り返し発生。沖縄県の米軍基地周辺では飲料水汚染が深刻な問題になっており、玉城デニー知事は2019年6月、基準値を設定するよう国に求めました。
 国はようやく重い腰を上げ、厚労省はことし4月、水道水の「目標値」をPFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と設定、環境省は5月に同じ値を河川・地下水の「暫定目標値」としました。
 これに合わせて環境省は6月、全国171地点の河川水と地下水の汚染についての実態調査(19年)の結果を公表。最も汚染が深刻だったのは摂津市の地下水で、1リットル当たり1855・6ナノグラムと全国一高い数値でした。軒並み数字が高かった沖縄県を除けば、摂津市に次いで高かったのが東京・調布市の地下水556・0ナノグラムなので、摂津市の突出ぶりが分かります。

京大グループの調査でも高濃度

 京都大学の小泉昭夫名誉教授らの研究グループは、2002年から全国で水質調査を続けています。03年にはダイキン工業の工場(摂津市)に近い安威川流域下水処理場からの排水に、1リットル当たり6万7千ナノグラムのPFOAを検出。07年にはマスコミが報道するなど社会問題となり、府議会の質問で日本共産党の堀田文一議員(当時)が取り上げました。

寂光寺の地下水国基準の176倍に

 京都大学の研究グループの19年の調査では、摂津市に隣接する東淀川区内の瑞光寺で1リットル当たり646ナノグラム(国基準の約13倍)、寂光寺(江口の寺堂)で1リットル当たり8812ナノグラム(同約176倍)と、高濃度のPFOAが検出されています。

(大阪民主新報、2020年9月13日号より)

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