大阪市廃止で住民サービス低下
ABCテレビ討論 山中市議団長が力説
大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想の住民投票(12日告示、11月1日投開票)を巡り、ABCテレビのニュース番組「キャスト」で、各党代表による討論会が放送されました。日本共産党の山中智子大阪市議団長、松井一郎大阪市長(大阪維新の会代表)、公明党の西﨑照明大阪市議団幹事長、自民党の北野妙子大阪市議団幹事長が出席。「特別区」では住民サービスの低下が必至であることなどが鮮明になりました。
収入は減るのにコストは増える
番組では、敬老パスや18歳までの子ども医療費助成、市民プールなどの住民サービスが「特別区」設置後に維持されるかどうかが、大きなテーマになりました。
山中氏は「(大阪市という)大家族で暮らしているものを、4つ(の『特別区』)に分ける分、経費がかかる」と指摘。「特別区」は収入が減るのに、設置コストなどの経費が増えるため、各区では住民サービスの「どれを切るか」の相談をするしかなくなると述べました。
松井氏が「財布の中身が減るという根拠は」と質問したのに対し、山中氏は、大阪市を廃止・分割する根拠である大都市法に言及。「国が、自治体を運営するには、これだけお金がかかると決めてお金(地方交付税)をくれる。大阪市を4つに分ければ当然、余計にお金がかかるが、国は増えた分は一切見ない。経費は増え、収入は減る。結局、財布の中身は減る」と明快に答えました。
一番甘い試算でやるのは大問題
松井氏は、「特別区」の財政試算で財源がマイナスにならないので「サービスは維持できる」と主張しました。
北野氏は、財政試算で大阪メトロの経営が順調で税収・配当が増えることを前提にしているが、コロナ禍でことし4~6月期の大阪メトロの決算は62億円の赤字だと指摘。それらの影響を考えると、「特別区」は財政的にやっていけないと批判しました。
もし住民投票で大阪市廃止が決まれば、「特別区」は2025年1月1日に設置されます。松井氏は、「25年以降に大阪メトロの配当がまったくないというのは、恣意(しい)的な赤字計算だ」などと述べました。
北野氏は「コロナの影響で働き方や生活様式が変わり、(収益の)V字回復にはならない」と反論しました。
山中氏は、インバウンド(訪日外国人旅行)の動向だけではなく、大阪メトロの高収益を当てにするなど、「一番甘いもので試算して、それで(『特別区』の財政運営が)やれると言っているのは大問題だ」と強調しました。
東京特別区では制度やめたいと
「特別区」で財源を分配する制度案について、コメンテーターの三輪記子弁護士が「大阪府がどんどん成長するならまだいいが、少ないパイを奪い合う構造をつくること自体がよくないのでは」と指摘しました。
山中氏は、「特別区」が府と話し合って、府からお小遣いのようにお金をもらわなければならない仕組みそのものが半人前だと発言。東京の特別区長の多くは「一人前の自治体になれない」と、特別区制度の廃止を求めているとし、「一人前でない仕組みを、なぜいまさら大阪で真似をするのか」と述べました。
大阪市のままで保健所増やして
司会の上田剛彦キャスターが、現在は大阪市に1カ所しかない保健所が「特別区」ごとに4カ所設置されるが、市の感染症対策課の専門職員25人(医師7人、薬剤師2人など)はばらばらになると説明しました。松井氏は、「特別区」設置までに人員を増やすなどと語りました。
山中氏は、「保健所4つ分のお金は(国から)来ない。人材や財源は続かなくなり、命そのもののリスクが増えてしまう」と反論。「『特別区』で(保健所が)増やせるなら、大阪市のままで増やせばいい。市全体ならばらばらにならない」と語りました。
(大阪民主新報、2020年10月4日号より)