政令市の力を住民に
希望の大阪を目指す
テレビ討論番組 山中共産党市議団団長が力説
大阪市を廃止して4つの「特別区」に分割することの賛否を問う住民投票(11月1日投開票)を前に、「反対」の日本共産党、自民党、「賛成」の大阪維新の会、公明党の代表による各テレビ局の討論番組が相次いで放送されています。
NHK大阪放送局の「かんさい熱視線」(10月23日)では「住民投票で賛成・反対の後、どんな大阪を目指すのか」が第1の主題になりました。
日本共産党の山中智子大阪市議団長は「政令指定都市の力を真っすぐ住民のために使う希望ある大阪を目指す」と表明。大阪市廃止・「特別区」設置に費やす膨大な税金と時間、エネルギーを、住民の命や暮らし、商売、コロナ対策にこそしっかりと使うべきだと語りました。
財源担保なしに維持と強弁
大阪維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は、「特別区」設置に1340億円かかるという反対派の主張は、新庁舎建設を含んでいるので「デマ」だとし、「庁舎を建てなくても『特別区』は成り立つ」などと述べました。
山中氏は、制度案を議論した法定協議会では公明党も、庁舎がなければ特別区民が困るから造ってもいいという方向で考えていたと指摘。逆に協定書は住民サービスについて、「特別区設置の日以降」は維持に「努める」としか書いていないのに、維新は「グ~ンとUP(アップ)」というチラシを出していると批判しました。
敬老パスなどの大阪市独自の住民サービスを巡り、公明党府議団の肥後洋一朗幹事長は「事業とセットで財源が確保されるので、維持される」などと発言しました。山中氏は、「財源の担保もないのに、『できる、できる』と市民に言ってはいけない」と批判しました。
制度ではなく政治を変えて
山中氏は、「二重行政の解消」の名で病院が廃止され、大学が無理やり統合されたことは「大阪にとってプラスではなく、無駄な二重行政はない」と指摘。旧WTCビルやりんくうゲートタワービルの破綻は、「制度ではなく、政治の中身の誤り」とし、「中身をきちんと反省して、大阪市が持つ大きな力を、市民の命、暮らしを守り、商売を良くしていく、大阪を発展させることに使う大阪を目指す」と重ねて語りました。
番組では、立憲民主党府連の尾辻かな子常任幹事(衆院議員)も事前収録のインタビューに答え、「政令指定都市の権限と財源を生かし、暮らし、商売ができる環境を守るべき」だと、大阪市廃止・分割に反対だと語りました。
区が反対でもカジノを推進
朝日放送テレビの「キャスト」(10月26日)では、松井氏の10月15日の記者会見が問題になりました。松井氏は、「都」構想が実現した場合、カジノを核とした統合型リゾート(IR)誘致が計画されている夢洲(ゆめしま)がある新「淀川区」の区長が反対しても、「事業自体の権限が府知事にあるので、特別区長の考えが知事と違うからといって、事業が停止したり、遅れたりすることはない」と述べました。
自民党の北野妙子大阪市議団幹事長は、「特別区民は意見を言うことができなくなるのか」と迫ったのに対し、松井氏は「区長に(誘致する)権限はない。区民は府民でもある。議員(府議)を通じて知事に意見を言えばいい」と述べました。
コメンテーターの木原善隆氏は、「府における淀川区民の割合は少ないので、(意見は)通らない」とただすと、松井氏は「大きな仕事の権限を知事が持つことで、大きな仕事が進む」と発言しました。山中氏は「結局、カジノ(誘致)などを邪魔されないようにやりたいということだ」と批判しました。
「百害」が孫子の代まで及ぶ
「百害が孫子の代まで及ぶ」と大阪市廃止・分割に反対を表明して番組に臨んだ山中氏は、「大阪市をなくしてしまうというほどの大改革をしようとするなら、一番危険なことを市民に伝えて選んでもらうのがあるべき姿だ。収入が減ってコストは増え、住民サービスは低下する大阪を(孫子の代に)渡すわけにはいかない」と力を込めました。
大阪市分割
市財政局試算 福祉後退の危険さらに
大阪市を4つの自治体に分割した場合、行政サービスを実施するために必要なコストが、現在より毎年約218億円増えることが、市財政局の試算で明らかになりました。いわゆる「大阪都」構想で、大阪市を廃止して4つの「特別区」に分割すれば、「特別区」で収支不足が生じ、住民サービスが後退する危険があることを示すもの。投開票が1日に迫った住民投票でも重大な争点になります。
国は、全国どの自治体でも一定水準の行政サービスが実施できるよう、基準財政需要額から基準財政収入額を差し引き、不足分を補う地方交付税を交付。大阪市も地方交付税を受けています。
財政局は、大阪市の人口を4等分した条件で試算。20年度の大阪市で、行政サービスの実施に必要な基準財政需要額は、6940億円。人口269万人(15年国勢調査)を約67万人に4等分した場合の需要額は、218億円増の7158億円と算出しています。
「特別区」の根拠法である「大都市法」や地方交付税法では、4つの「特別区」を一つの自治体とみなして交付税を計算します。4つの「特別区」交付税の合計は、現在の大阪市と同じで、分割で行政コストが増えても地方交付税は増えません。
交付税提示を拒否した維新
「特別区」の制度案を議論してきた法定協議会では、自民党議員が「特別区」の基準財政需要額や不足する地方交付税額を示すよう求めてきましたが、松井一郎市長ら維新側は一貫して拒否。住民投票の論戦で、自民党は200億円ぐらいという独自試算を示していますが、維新は「デマだ」などと攻撃してきました。
年間218億円もの財源不足が生じれば、大阪市が独自に実施している敬老パス(43億円)、18歳までの医療費助成(77億円)、給食費無償化(77億円)などの後退が避けられません。
(大阪民主新報、2020年11月1日号より)