おおさかナウ

2020年11月15日

住民投票の歴史的勝利を確信に、維新政治の転換を
柳利昭日本共産党府委員長に聞く

 大阪市廃止分割の賛否を問う住民投票が1日、投開票され、反対多数で否決されました。日本共産党の柳利昭府委員長に、たたかいの振り返りと今後の展望について話を聞きました。

大阪の前途に希望政権の野望に打撃

柳利昭委員長

柳利昭委員長

 住民投票は反対多数となり、政令市・大阪市が残りました。住民投票の結果は、「130年の歴史を持つ大阪市をなくしてはならない」という大阪市民の良識の力による歴史的勝利です。同時に、暮らしに直結する大都市制度の改変という重い選択が迫られる中、「賛成」に投じた市民の多くも大阪の変化・改革を願ってのものだったと思います。共に力を合わせて新しい大阪市を築くための歩みを進めることが重要です。
 この勝利は、大阪の前途に希望をもたらすものであり、維新の菅政権の補完と野党共闘つぶしの野望に打撃を与えるとともに、国政にも大きな衝撃を与えました。
 自公政権の最悪の補完勢力である維新に痛打を与えたことは、次の総選挙での政権交代と野党連合政権樹立の実現に向けても重要な意義を持つものです。
 今回の住民投票では、昨年のダブル選での「維新大勝」の下で公明党が態度を急変させ、制度設計を話し合う「法定協議会」や市議会・府議会でも政党間の力関係が変わり、困難なたたかいを余儀なくされました。
 その中で党大阪府委員会は昨年8月に「維新対策本部」を設置して継続的に活動。数を力にした維新の攻勢とともにその矛盾をリアルに見て挑むこと、「維新支持者」の動向を分析し、「維新支持者の見る維新とわれわれから見る維新の姿はまるで別物」であること、「維新幻想」は大きいが、「吉村人気」と「大阪市廃止の是非」の物差しは異なることなどを解明しました。
 「幻想」を解く上では、正確な情報提供と、前向き政策で「もう1つの選択肢」を示すことの大事さなどを議論し、さまざまな発信を進めてきたことが重要でした。

市民の良識信頼し情報提供と対話で

 住民投票では、維新が公明党と野合し、「数の力」と資金を背景に、大量のビラやテレビコマーシャルなどを重ねるとともに、「デマに対する回答」を「大阪府市副首都推進局」にやらせるなど、異常な「大阪市役所ぐるみ」を展開しました。この作戦は一定の影響を与えたものの、市民の中に逆に大きな批判が生まれ、維新の側に大きな矛盾と焦りをもたらしました。市財政局が大阪市4分割で経費が増大すると試算した「218憶円報道」での「誤報」攻撃と「財政局長バッシング」も、維新の焦りと強権ぶりを示すものでした。
 こうした維新の力ずくの「物量作戦」に対して、私たちは市民の良識を信頼し、「排除」ではなく、「情報提供」と「対話」で変化を促しました。
 論戦では、①「大阪市の廃止か、130年の歴史を持つ大阪市の存続か」、②「権限・財源を奪われた中で住民サービスの低下か、大阪市の力を生かした拡充か」、③「コロナ禍でなおカジノ、インバウンド頼みを続けるのか、命と福祉、暮らしが第一へ転換するのか」という3つの焦点が浮かび上がりました。

各党の役割と真価浮き彫りになった

 住民投票の経過と結果を通じて、大阪の各党の役割と真価が浮き彫りになったことも重要です。
 維新は、住民投票敗北で「大阪都」構想とともに、共同代表の松井市長が任期いっぱいで政治家を辞めると発言したように、「看板政策と幹部」を失い大きな打撃を受け、菅政権との今後の関係も注視されます。
 公明は、支持者の半数が「反対」に回り、少なくない創価学会員ともあつれきが生まれており、自公協力、維公協力の大きな矛盾を抱えて総選挙に臨むことになります。
 自民は、「都構想反対」では市議団の結束はあるものの、維新政治に代わる展望・対案があるわけではなく、菅政権の行き詰まりの中で、国政政策の面でも大阪の前途を照らすことはできません。
 日本共産党は住民投票で、①一貫して維新・「都」構想と対峙してきた党にふさわしく正面対決し、②「都」構想の問題点を的確につく点でも、政令市・大阪市を活かした前向き提案でも論戦の先頭に立ち、③「日刊ビラ」作戦にみられる草の根の組織力を発揮し、④野党共闘の要、市民との懸け橋として共同の推進役となりました。
 今回の住民投票で私たちは、自民党とは明確に一線を画してたたかいました。同時に、市民と野党の共闘で維新を打ち破る努力を強めるとともに、「大阪・市民交流会」「REAL OSAKA」「残そう、大阪@SADL」などが、それぞれの持ち味を生かした運動を進めました。「勝利は、それぞれがやるべきことを理解し全力を出し切った結果」との声も返っています。
 この中で野党間の連携はかつてなく強められ、最終日の「市民と野党共同宣伝」が、従来の市民団体主催ではなく政党間協議で実現したことも重要です。

大阪府・市政を市民の手に取り戻す

 住民投票勝利での維新への痛打は明確ですが、維新政治を転換し、大阪市政、府政を市民の手に取り戻すたたかいは、いよいよこれからです。
 今回の半数の「賛成」票にみられるとおり、「二重行政解消が求められる」「大阪は成長してきた」「維新は改革派」などの「幻想」は広く残っています。松井市長らは、「都構想」の対案と称して、広域行政の権限を知事に移す条例案や、大阪市を残したままの「総合区8区案」などを持ち出そうとしています(別項参照)。
 私たちは住民投票の経験と結果に立って、大阪市政、府政転換への運動と政策化を進めるとともに、新型コロナ対策、カジノ誘致ストップ、大阪市の持てる力を福祉・医療・教育・防災対策に、さらに「市民の声が息づく市政」づくりなどに全力挙げて取り組んでいきたいと思います。

(大阪民主新報、2020年11月15日号より)

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