くらしと中小企業支援に軸足を移し
府民の幸せつくる経済成長へ
日本共産党大阪府委員会政策委員会 名部広美
日本共産党大阪府委員会政策委員会の名部広美さんからの寄稿文を紹介します。
維新の会は、住民投票で〝二重行政を解消し、大阪市の権限、財源を府に吸い上げ、成長させ、豊かなくらしを実現する「都構想」〟と宣伝しました。大阪市民は、そのゴマカシを見抜き「都構想」を否決しました。
ところが、松井一郎市長は「大阪市の広域行政を財源とともに府に吸い上げる」条例をつくると言い、またぞろ「広域一元化で成長」「豊かなくらし実現」と宣伝しています。
その虚構ぶりと、あるべき大阪の経済政策の方向をみます。
虚構の「広域一元化による成長」
論証ない「経済と大都市制度の因果関係」
大阪経済の低迷が政令市制度に起因するのかどうかについての検討は、橋下徹知事(当時)が2010年に設置した大阪府自治制度研究会で行われています。
その「最終とりまとめ」(2011年1月)は、「経済と大都市制度の因果関係を明確に論証することは困難」と結論づけています。
検討過程では委員の「政令指定都市制度があるから大阪が成長しないというのは、立証されているのか」「根拠がキチンとあるのか」等の質問に、府は「確実に分析、証明されたものがあるかといえばない」と回答しています。
政令市であるがゆえに成長が阻害されているとの松井市長らの断定した宣伝に、根拠がないことは、この時点で既に明らかになっていたのです。
「維新府市政で成長した」宣伝は事実に反する
次に、「維新府市政で成長させてきた」の言い分を見ます。
維新府市政が始まった2011年から2016年まで大阪府の実質成長率は年平均で+0・58%で、全国の+0・95%以下です。「二重行政の解消で成長させている」はずの大阪が、全国水準を下回っているのです。
また、維新は公約に実質成長率年2%以上を掲げ、府の成長戦略も「年平均2%以上」を目標にしていますが、これも達成できていません。
くらしに関する指標もひどいものです。
2011年度から2017年度の一人当たり県民所得の伸びは、全国が10・6%ですが、大阪府は7・8%です。また、2017年の非正規割合は全国の38・2%に対して、大阪は40・3%です。
ここには、松井市長らの「維新府市政による成長」宣伝の虚構ぶりとともに、インバウンド・カジノ頼み、くらし・中小企業切り捨ての経済政策の誤りが鮮明に現れています。
安心の社会保障と中小企業支援で希望ある大阪に
経済成長してもくらしが不安定に
維新の「司令塔の一元化で成長させ、豊かなくらしにする」宣伝には、根本的な疑問と批判が、早くから出されてきました。
「経済が活性化したからといって生活が良くなる保証がない」「経済が成長すれば暮らしは良くなるという簡単な命題ではない、経済が成長しても、くらしが不安定になる事があるというのはこの十年間の日本の経済の教訓だったのではないか」―大阪府自治制度研究会では複数の委員からこうした指摘が繰り返し出されていました。
今求められているのは、安全や健康、利便性の基盤を確保することで、安心、そして府民の幸せつくる経済政策への転換です。
軸足を社会保障と内需、中小企業に移してこそ
大阪経済の行き詰まりのおおもとには、社会保障の切り捨て、中小企業施策の縮小、雇用破壊の政治があります。これを根本から転換し、安心の社会保障、内需と中小企業支援に軸足を移してこそ再生ができます。
医療や介護、社会福祉の充実は、くらしの安心をつくり、消費を促し、経済を発展させる大きな力となります。
経済波及効果などは、公共事業を上回ります。国民経済統計による試算では、医療、保健、福祉、介護への公的資金の投入は、カジノなどのためのインフラ整備の波及効果を上回ります。雇用の波及効果は、1・08倍~1・43倍にもなります。
中小企業への支援では、当面、国の成長戦略会議委員の竹中平蔵氏やデービッド・アトキンソン氏の「淘汰される企業を残しておくと、日本経済の弱体化につながる」「中小企業数を半分以下に」などの発言にみられる、コロナ禍を利用した中小企業淘汰を許さず、年末にかけて懸念されている「倒産・廃業が急増する」事態を回避する緊急支援を、府市政が具体化することが求められています。
コロナ危機を乗り越えた上で、さらに大阪経済の主役にふさわしい中小企業支援で活性化、雇用の創出を促進する経済政策をすすめるべきです。
カジノ頼みの危うさ鮮明に
維新が成長戦略の柱にしているカジノは、世界的なコロナでこれまで通りの高収益はあげられなくなっています。夢洲に手を挙げているMGMは、負債が3兆円、4月~6月の赤字1240億円、18000人解雇に見られるように、とても夢洲に1兆円を投資できる状況ではありません。
カジノのための地下鉄延伸をMGMに205億円負担させるといって事業化していますが、その負担が実現しなくなれば市民の負担となります。
先日、維新が〝府市政一体で進めた〟事業の典型のように宣伝してきた淀川左岸線の事業費が1162億円から突然、1800億円超に増と報道され、大型開発の危うさが露呈しました。かつて大阪市は旧WTCビルなどの大失敗をしましたが、再び「府市一体」で失敗への道を突進しているのです。
こうしたカジノなどの大型開発優先でなく、くらし優先に切り替えてこそ、景気を回復、成長させる確かな道です。(なべ・ひろみ)
(大阪民主新報、2020年11月29日号より)