おおさかナウ

2015年02月08日

2、市民の足はいま(上)
シリーズ大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

大都市に「交通難民」が出現

2,市民の足はいま(上)—赤バス廃止その後

市民の声には耳を一切貸さずに

市バスは1時間に1本に(生野区巽地域)

市バスは1時間に1本に(生野区巽地域)

 橋下徹大阪市長が13年3月末に赤バス(コミュニティ系バス)の廃止を強行してから間もなく丸2年になろうとしています。02年に導入され、通院や買い物はじめ高齢者や障害者など「交通弱者」の外出を支援する「市民の足」となってきた赤バス。しかし橋下氏は「いままでの考え方はすべてリセットする」と言い放ち、存続を求める利用者や市民の声に一切耳を貸しませんでした。

 生野区では赤バス廃止後、何の代替措置もありません。同区の東南部、東大阪市に接する巽東2丁目に住む百瀬千代子さん(81)に実情を聞かせてほしいとお願いすると、近所の高齢女性7人が集まってくれました。

 「いまでも、『赤バスがあったらええのに』という話がよく出る」「ほんまに難儀や」「外国人の観光客にカジノに来てもらうとか言うけど、ここに住んでいる私らはどうなるのか」——次々に出た声です。

 百瀬さんは「若い人、元気な人には分らないかも知れませんが、年をとればとるほど、外に出るのが大変になるんです」と切り出しました。

病院に行くため乗り継ぎに30分

 百瀬さんはかつて赤バスで区内の中心部に通院していましたが、いまは市バスを乗り継がなければなりません。昨年4月の路線削減・減便で、バスは1時間に1本しかなく、乗り継ぎの待ち時間は、雨の日も風の日も「30分は覚悟します」。

 ある女性(77)は「元気なうちは働きたい」と赤バスで区内の事業所に通い、事務の仕事を続けていましたが、廃止を機に引退。「電話番程度の仕事とはいえ、辞めてしまったら、張り合いがなくなりました」

 夫(83)は掛かり付けの病院3カ所のうち1カ所は、赤バスを利用して天王寺区の警察病院に出掛けていましたが、いまは往復ともタクシー。

 「お医者さん代よりタクシー代の方が高いときもありますが、病院に行かないわけにはいきません」

「交通手段ない」と外出をやめる

 区内の民主団体などでつくる「いのちとくらしを守る生野区連絡会」との懇談で、清野善剛区長は「赤バス廃止に伴い、福祉バスは必要。そのための実態調査をしたい」と言明。13年11月にまとまった調査結果報告書によると、高齢者の中で「外出自体をやめた」が1割、「外出回数を減らした」が3割もあることが明らかになりました。「外出を取りやめた理由」では、「身体的負担が大きい」が5割、「代替交通手段がない」が4割に上っています。

 百瀬さんは「年寄りは、『足』があってこそ出掛ける意欲が出る。赤バスがあったころは、停留所やバスの中で知り合った人たちと、それこそ安否確認もできた。市バスも不便になれば乗る人が減り、また切られてしまう。悪循環ではないですか」と問い掛けます。

区長に丸投げで、代替措置は後退

 橋下氏は「コミュニティバスは別に赤バスでなくても十分やっていける」「区長を中心にいろんな知恵を使う」(12年5月)として、赤バス廃止後の「事業再構築」を12年8月に就任した公募区長に丸投げしました。

 その結果はどうか。当時赤バスが走っていた21行政区のうち、13年度は14行政区がマイクロバスの運行(民間委託)や、病院など送迎バスへの分担金などの代替措置をとりました。しかし、1年間限定の運行や、停留所がない、区役所に行けないなど区によって中身はバラバラ。各区の「赤バスの存続を求める連絡会」の運動で、事業継続や市バス運行への切り替えを実現したところもありますが、14年度には代替措置は8行政区に減少。来年度は5行政区に減る見通しです(表)。

住民サービスは「大阪都」で低下

 「いままでの「『都構想になれば住民サービスが悪くなる』なんて、そんなの大ウソ」——各地の街頭タウンミーティングで叫ぶ橋下氏。「だまされないでください」と繰り返しますが、さまざまな分野で市民施策を切り捨て、「大阪都」になる前からすでに住民サービスは低下しています。

 「維新の会は『二重行政解消で大阪を豊かに』とアピールしますが、大都市の中に『交通困難地域』を生み出し、高齢者はじめ住民を追い詰めています」と語るのは、生野連絡会役員の室谷雄二さん(ヘルスコープおおさか田島診療所地区・地区長)。

 「区の調査でも赤バス廃止の影響は深刻。そして、高齢者はこれから増えていきます。住民要求に基づく地域の交通ネットワークをつくるには、行政が責任を果たすことがどうしても必要です。だからこそ、大阪市の廃止・解体は絶対に許せません」

赤バス廃止後の各区の対応

 

13年度

14年度

15年度(計画)

西淀川区

東淀川区

旭区
鶴見区
住之江区

西成区 ×
福島区 × ×
淀川区 ×(※4)
港区 × ×
城東区 × ×
阿倍野区 × ×
平野区 × ×
都島区 ×(※2) ×
此花区 ×(※3) ×
大正区 × ×
天王寺区 ×(※1) × ×
住吉区 × × ×
北区 × × ×
浪速区 × × ×
生野区 × × ×
東住吉区 ×(※5) × ×

○=小型バス運行(民間委託)など何らかの代替措置、×=廃止、△=病院などの送迎バスへの負担金
次の区は橋下市政以前に廃止。東成(09年)、中央(08年)、西(同)
※1=13年度のみ旧赤バスルートを市バスが運行
※2=市バスの新路線が実現
※3=旧赤バスルートに近い形で市バスが運行
※4=15年9月末で廃止
※5=民間事業者が自主参入

(大阪民主新報、2015年2月8日付より)

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