民意無視する「広域一元化」
堺「市民1000人委員会」が学習会
小西禎一元副知事が講演
「市政を刷新し清潔な堺市政を取り戻す市民1000人委員会(市民1000人委員会)」が10日、堺市堺区内で開いた第4回市政チェック学習会で、大阪市の権限や財源を府が奪う「広域一元化条例」案の問題点について、元大阪府副知事の小西禎一さんが講演しました。
示された民意は大阪市存続
小西氏は、昨年11月1日の住民投票で問われたのは、「大阪市を廃止して『特別区』を設置する」か「大阪市を存続するか」であり、示された民意は「指定都市である大阪市の存続」だと指摘。「この結果を踏まえて大阪市がなすべきことは、指定都市の権限・財源を市民生活の向上に生かすと同時に、府との新たな連携で大阪の成長・発展を図ることだ」と力説しました。
地方自治法に基づいて、市町村の権限を強める地方分権改革を大阪でも取り組んできたが、吉村洋文知事や松井一郎市長が進めようとしている「広域一元化」は、その流れに逆行するものだと強調。昨年12月28日の副首都推進本部会議で示された「広域一元化条例」の骨格案に言及しました。
憲法にすら違反する恐れが
骨格案によると、府に「一元化」する施策は「産業振興」「都市魅力向上」「まちづくり、都市基盤政治」の分野で、それらの基本方針・計画は副首都推進本部で決定。同本部を条例に明記し、地方自治法の「指定都市都道府県連絡調整会議」よりも強い仕組みにするとしています。
小西氏は、「副首都推進本部の決定」が、府と大阪市の意思決定や両議会の議決を拘束するという意味を持つなら、自治権や議会の議決権を侵害する違法な仕組みとなり、憲法にすら違反する恐れがあると批判。まちづくり関連などで「事務委託」や「機関の共同設置」を検討するというが、地方自治法が定める事務委託制度の乱用であり、大阪市が長年行ってきた事務を、わざわざ府に委託する必要はないとしました。
大阪府全体の成長こそ必要
さらに「特別区」設置の根拠法である「大都市法」は指定都市の廃止は、住民投票での賛成多数が要件だと指摘。反対多数で大阪市存続が決まった民意を無視して「広域一元化」を進めることは、「大都市法」にも反すると述べました。
小西氏は「『広域一元化』は、府と大阪市の自主性・自立性を否定するもので、府への権限集中は、地方分権改革に逆行している。インバウンド(訪日外国人旅行)頼みの都心中心の開発ではなく、府域全体を視野に入れ、大阪の力を生かした成長こそを考える必要がある」と語りました。
堺市政の問題点を共有して
市民1000人委員会では、住民投票で大阪市廃止が決まれば、隣接する堺市は住民投票なしに政令市の廃止と「特別区」設置が決められる危険があることから、「大阪市の問題は他人事ではない」と、大阪市西成区内での路地裏宣伝などに連日奮闘しました。
学習会では市民1000人委員会アドバイザーで前堺市議の野村友昭さんが、住民投票のたたかいを振り返りながら、「広域一元化条例」案について「住民投票での市民の声をどう受け止めているのか疑問だ。制度論では大阪の街は良くならない」と語りました。
渕上猛志・堺市議が市財政の状況について、「基金が少ない」「予算が組めない」などとする維新や永藤英機市長の批判に反論しつつ報告。「堺市の幼稚園の充実と存続を求める会」などの代表が発言し、市政の問題点を参加者と共有しました。
(大阪民主新報、2021年1月17日号より)