「俺らは菅派」
――維新の国会での安倍・ 菅政権の「補完」ぶり
日本共産党府委員会維新対策本部
日本共産党大阪府員会の維新対策本部がまとめた「『俺らは菅派』――維新の国会での安倍・菅政権の『補完』ぶり」を紹介します。
第2回中央委員会総会(2020年12月15日)で志位和夫委員長は、「維新が国会でやっていることは『自公の補完勢力』にとどまらず『悪い政治の突撃隊』という邪悪なものです」と指摘しました。
「俺らは菅派」(維新幹部)と自ら言う日本維新の会の安倍・菅政権補完ぶりを、国会での言動で見ます。
1、 くらしと雇用、営業破壊を推進
維新は「目指す国家像」を「自立する個人」「自立する地域」「自立する国家」(維新八策)としています。橋下徹元知事は「格差拡大はダメ、競争はダメ、このような甘い言葉こそ本当に危険」として3つの「自立」を強調していました。極端な新自由主義の推進です。
2019年1月23日の衆院本会議で馬場伸幸幹事長、その維新八策を「ブラッシュアップ」して政府に求めていくと宣言しました。
新自由主義は、すべてを市場の競争に任せ、企業に対する規制は少ないほど良いという主張と政策で、雇用をめぐる規制緩和=派遣労働をはじめとする非正規雇用の拡大や労働時間規制の緩和、そして、巨大企業の税負担、社会保障負担の軽減と一体に社会保障そのものを削減するものです。
維新は、その実行を迫り、自公とともに悪法を成立させてきました。17年の総選挙以降の主なものを見ます。(※は日本共産党の主張)
雇用
・働き方改革一括法(18年6月29日)
過労死ラインの時間外労働を合法化し、過労死を促進する残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)を盛り込む。また、労働者保護法制が適用されない非雇用型就労も含めた多様な就業形態の普及を国の施策に加えるなど、無権利、低所得の労働者の増大につながるもの。
・生産性向上特別措置法(18年6月29日)
フリーランスや請負などの「雇用によらない働き方」を推進し、労働者保護法制の枠外での不安定・無権利な働き方を蔓延させることなどを盛り込んでいる。
これらにとどまらず維新は、「整理解雇の四要件は非常に厳しい…事実上不可能」「解雇の金銭解決ルールの明確化などを思い切って進めるべき」と委員会質疑や本会議の代表質問で繰り返し迫っています。
※日本共産党は、野党の国会共闘と、国民運動の連携した力で、「働き方改革」一括法から、裁量労働制の拡大を削除させました。今、「コロナ危機で最も深刻な打撃を受けているのは、非正規雇用労働者、フリーランスの人々、とりわけ女性と若者。人間らしい雇用のルールをつくります」と奮闘しています。
中小企業の廃業を促進
・産業競争力強化法改正法(18年5月16日)
産業の新陳代謝の活性化を掲げ、中小企業の廃業を促し、日本経済の根幹である中小企業の選別と淘汰を一気に狙うもの。
※コロナに乗じて中小企業を「淘汰」する暴政をやめさせ、中小企業を日本経済の根幹に位置づけ振興をはかるべきです。
大企業優遇税制
・所得税法等の一部改正法(20年3月27日)
法人税率は23・2%なのに、大企業は各種優遇税制で実質負担割合は13%にすぎないのに、さらに優遇措置を講じるもの。
安倍前政権は、「トリクルダウン」政策で、大企業の法人税率引き下げや大企業優遇税制の拡大を推進。維新は、「法人税率を35・5%から25%へとおよそ10%減税し、経済成長の基盤である国際競争力を強化」する2014年度予算修正案を提出するなど税率引き下げをけしかけ(14年3月20日)、大企業への優遇措置を広げる20年度の所得税法改正案に賛成しています。
※消費税を緊急に5%に減税し、コロナ禍で経営の苦しい中小企業に19年度・20年度分の納税免除し、空前の資産を増やしている富裕層、大企業に応分の負担を求める税制改革こそ必要です。
病床減らしを強権的に
・医療法及び医師法の一部を改正する法律(18年7月18日)
地域医療構想の達成のために、病床削減のより強固な権限を都道府県に与え、病床削減を強権的に進めるためのもの。また、医師確保もこうした病床削減計画に合わせることになり抜本的な医師不足の解消にはならないもの。
※地域医療構想による公立・公的病院の統廃合・病床削減を中止し、必要な医療体制の維持・拡充こそ必要です。
生活保護の権利性否定
・生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者支援法の一部を改正する法律(18年6月1日)
当事者の同意を前提とすべき後発医薬品の使用を、生活保護利用者は後発医薬品を原則とするとし、生活保護の権利性を否定し、制度に対する偏見を強めるもの。
これまで、維新は、社会保障費を削減するためとして、生活保護利用者に「就労の義務化」「医療費の負担」「後発医薬品使用の法制化、義務化」をすべきと、国会で繰り返し要求(13年3月14日、井上英孝議員、18年3月30日同など)、さらに「就労の義務化」も求めています。
※生活保護を、国民の命と人権を守る制度として改善・強化する、そのためにも、国民の分断を狙ったバッシングや受給者への人権侵害など国民の人権にかけられた攻撃を、社会的連帯の力で跳ね返すことが求められています。
カジノ実施法案
・特定複合観光施設区域整備法(19年7月20日)
いわゆるカジノ実施法。刑法が禁じてきた民営賭博を米カジノ大手事業者の言うままに解禁するもの。
維新は、「カジノは成長戦略の重要なかなめ、起爆剤」として推進。国会審議中に、自民と維新の衆院議員に米国のカジノ企業関係者がパーティ券購入の形で資金提供していたことが発覚し、大問題になる中、自公維で成立させました。
※コロナ禍で、多数の客を詰め込む「3密」のカジノはこれまで通り運営できる状況ではなくなり、賭博で異常な高収益を上げるというビジネスモデルは成立しなくなっています。
夢洲でのカジノに唯一手を挙げている米カジノ資本のMGMリゾーツも負債3兆円を抱え、1万8千人(従業員の4分の1)を解雇。20年4月~6月の赤字は1240億円と、大阪に投資できる状況ではなくなっています。カジノ頼みの成長戦略の失敗は明らかで、キッパリ断念させることが求められています。
年金削減を繰り返し迫る
物価や賃金の伸びよりも年金給付の伸びを抑制して給付水準を自動削減する「マクロ経済スライド」。経済成長と雇用拡大が進んでも、基礎年金が30年間で3割も減り、しかも低年金の人ほど被害が大きくなることが明らかになっています。
維新は「マクロ経済スライドという仕組みがあるにもかかわらず、平成16年の導入以来、実際の発動は、(19年)1月18日の厚労省が発表した今回の発動と合わせてやっと2回目となります」と批判。「マクロ経済スライドによる給付水準の調整の適切な実施が重要」と繰り返し迫っています(19年1月29日、室井邦彦参院議員など)。
※日本共産党は、「マクロ経済スライド」を廃止して、「減らない年金」にすることや、年金額が基礎年金満額(月6万5千円)以下の低収入の年金生活者に、一律月5千円・年間6万円を、現在の年金額に上乗せして給付することを提案しています。
75歳以上の窓口2割負担
菅政権は、75歳以上医療費の窓口2割負担を導入しようとしています。
維新は、20年1月の参院本会議で片山虎之助共同代表は「2割負担とされることは一歩前進だと評価します。」と賛意を表明。さらに「所得でなく資産まで含めるよう提案」までしています。
※2割負担化はまだ決まっていません。国民的運動を広げ、通常国会への法案提出を断念させれば、負担増を止めることはできます。負担増で患者の受診控えをさらに広げる道ではなく、ケアに手厚い社会にすることこそ大事です。
国民健康保険料の大幅値上げ
18年から保険料抑制・値下げのための自治体の公費繰り入れを解消、値上げするための国保の都道府県化が実施されました。
これは、維新がけしかけてきたもの。橋下徹府知事(当時)は「繰り入れをやめるべき」「繰り入れをやめれば保険料は上がる」(10年7月)と言っています。
「都道府県化」実施後、維新府政は、24年度には国保料を現在より3~4割値上げせざるを得ないとした「推計」を示し、それまでに独自の補助金をなくし、府が定める府内一律の国保料に合わせるよう市町村に迫り、値上げさせています。
介護保険利用者負担増
18年8月に介護保険の利用料の3割負担が導入されました。維新は、改悪法の賛成討論で3割負担の対象者を一定以上の「所得」とされている点を「中途半端」と批判、「所得だけでなく資産にも応じた負担割合とすべき」と3割負担の対象範囲の拡大まで主張しています。(17年4月18日)
2、憲法改悪、戦争する国づくり推進
憲法審査会始動に執念
「憲法改正などは維新の会も党是」(松井一郎代表)と言い、党大会で「国会の憲法審査会の議論をリードし、国民投票を実現する」と掲げ、国会での改憲発議を繰り返し求めています。
馬場幹事長は昨年1月、「今国会で国民投票法改正案を成立させること、並行して憲法改正原案に関する憲法審査会での議論を深めることに指導力を発揮すると約束できるか。改憲論議が停滞するならば、衆議院の解散・総選挙に踏み切って国民の信を問う覚悟はあるか」と安倍前首相に迫っています。
参院憲法審査会に「開かれていないのは、憲法審査会会長の決断力、指導力の欠如」と言って、憲法審査会会長不信任動議を、20年6月17日と12月2日に提出することまでしています。
※日本共産党は、世論と野党の共同を広げ、自民党が執念を燃やした憲法審査会への改憲案の持ち込み、国民投票法(改定案)の採決を、8国会連続で阻止しています。
敵基地攻撃能力保有
菅政権は、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有に本格的に乗り出しています。
森夏枝衆院議員は、安倍晋三前首相が15年9月14日の参院安保法制特別委員会で行った「策源地攻撃については、座して死を待つべきではないということにおいて、これは憲法解釈上もできる」との答弁を引いて、敵基地攻撃能力の保有を要求しています。
※日本共産党は、自民党が進める憲法9条改定に反対し、国民投票法改定案(自公維案)を廃案に追い込み、改憲発議を許しません。「攻撃的兵器を保有することは、自衛のための最小限度の範囲を超えることになるから、いかなる場合も許されない」としてきた憲法上の立場を蹂躙する敵基地攻撃能力の保有を許しません。
3、安倍前政権の「強硬色」薄めに貢献
安倍前政権は、国会でまともな説明、議論をせず、国民の多数が反対する法案の強行採決を繰り返してきました。
それと一体となって、強行採決をしているのが維新。メディアからも「安倍政権にとっては、ほとんどの野党が反発する法案でも、与党ではない維新が賛成すれば国会運営の『強硬色』を薄めることができる」(「朝日」20年4月19日付)と指摘されています。
「働き方改革」一括法で
「働き方改革」一括法では、衆院で虚偽データーのねつ造で法案の前提が崩れた下で、与党と維新だけで審議入りし、一連の疑惑にフタをしたまま、採決を強行しました。
参院では、野党の実態調査の再実施に応じず、厚生労働委員長の不信任決議案を本会議に上程せず、たなざらし暴挙の下で採決を強行。自公維で成立させています。
カジノ実施法―審議拒否を繰り返し強行採決
カジノ実施法をめぐっては、衆院では審議拒否を繰り返した挙句、野党委員の審議継続を求める動議を無視し、内閣委員会での質疑をわずか18時間で打ち切り、自公維で可決しています。
さらに通常国会(会期150日間)で成立させられないからと会期を延長しました。参院では議長の不信任決議案が本会議で与党などの反対で否決された後の内閣委員会で委員長が冒頭から質疑終局を宣言。野党が抗議する中、採決を強行して成立させています
4、菅政権でさらに強まる擁護と応援
菅政権になってからは、「菅派」の本領を発揮し、政権擁護、応援ぶりはいっそう露骨です。
学術会議任命拒否問題
日本学術会議に対する違憲・違法の任命拒否の問題では、衆院での代表質問で「(維新の)馬場氏は、『(学術会議が)推薦した候補を形式的に任命していた『あしき前例』をこそ見直す必要がある』と首相を援護射撃した。さらに立憲民主党や共産党を念頭に、『一部野党の批判は筋違いだ』と牽制もした」(「産経」20年10月29日付)と報道されています。
また、足立康史衆院議員は「権力たるものこれぐらいのことはすると思う。それが問題だと思うなら日本学術会議法の改正をするべきだ」などと公然と介入を擁護する発言しています。(20年11月14日インターネット番組「Choose Life Project」)
臨時国会閉会を強行
20年12月4日に、野党が急拡大する新型コロナウイルス感染症対応などのため、臨時国会の会期を12月28日まで延長するよう求める動議を大島理森衆院議長に提出しました。ところが、自民、公明、維新が否決し、閉会を強行しました。
「桜」前夜祭をめぐって
「桜を見る会」問題で、安倍前首相本人が任意の事情聴取を受けたことが明らかになり、国会での証人喚問が求められる事態になりました。維新の片山共同代表は、「賛成ではない」と反対を表明しました。(20年12月22日)
20年12月25日の衆参の議院運営委員会で安倍前首相への質疑が行われました。
遠藤敬衆院議員は「私は信じたいと思う。本当に知らなかったんだろうなと」と発言。そして「政治資金規正法の欠陥の問題」と政治資金の問題にすり替えた上で、「政治資金規正法の大改革を安倍先生がリーダーシップをとってやってもらいたい」「安倍先生がこれの旗振り役をされて、実績を残すことが信頼回復への近道」と〝追及〟。
東徹参院議員は、国会議員への文書通信交通滞在費の使途を公開して、透明化することを求め、安倍前首相が「有意義なご指摘をいただいた」と答弁するなど、疑惑解明などどこ吹く風のていたらくでした。
(大阪民主新報、2021年1月17日号より)