おおさかナウ

2021年01月24日

〝困窮理由の退学者を出さない〟
関西学院大学 独自の奨学金を創設
冨田副学長と宮本、こむら氏が懇談

コロナ禍で困窮する学生を支援しようと、関西学院大学が創設した独自の奨学金の取り組みについて語り合う(左から)こむら、冨田、宮本の各氏=15日、兵庫県西宮市の関西学院大学上ヶ原キャンパス内

 コロナ禍による家計の急変や、アルバイト収入の激減などで、学生の経済的な困窮が問題になっています。兵庫県西宮市の関西学院大学は奨学金制度を独自につくり、「困窮を理由にした退学者を出さない」を合言葉にして支援しています。日本共産党の衆院近畿比例候補の宮本たけし前衆院議員(大阪5区重複)と、こむら潤尼崎市議(兵庫8区重複)が15日、同大学副学長の冨田宏治教授を訪ね、制度を創設した目的や学生の現状などについて懇談しました。

2種類 10億円の予算で

保護者収入減とバイト収入減に

 奨学金は2種類。一つは「特別支給2020奨学金」で、保護者の収入が2割以上減り、学費納入が困難になった学生に、40万円を上限に学費の2分の1を給付します。
 もう一つは「関学ヘックス(HECS)型貸与奨学金」。学生本人のアルバイト収入が減少して生活が困難になった場合、3万円以上から年間授業料(75万~125万円程度)を限度に無利子で貸し付けます。
 HECSはオーストラリアで普及している、学費を後払いする制度です。関西学院大学では卒業後、給与所得者の場合は年収が400万円に達するまで返済を猶予することで、安心して借りられるよう考えられています。
 「特別支給2020」は昨年6月から4回募集して、計830人に総額約3億1674万円超を支給しました。「関学HECS型」も4回の募集で延べ231人に総額1億4千万円を貸し付け。ことしに入って両制度とも、14日から5回目の募集を始めています。予算は10億円。

困っている学生を手厚く支援し

バイト収入だけで生活する学生

関西学院大学が創設した奨学金の出願のしおりや願書

 コロナ禍で、すべての学生に数万円を一律に支給するという私立大学もある中で、独自の奨学金を創設した関西学院大学。その目的について宮本、こむら両氏が聞くと、冨田氏は「議論の末に、本当に困っている学生を手厚く支援することを決断しました」と語りました。
 募集してみると、自分のアルバイト収入だけで生活している学生が少なくないことも分かったといいます。
 「親の所得と学生の困窮度合いは別のもの」と冨田氏。「特別支給2020」の要件は保護者の収入であるのに対し、「関学HECS型」は、収入が減った学生本人を直接支援する制度です。
 「コロナ禍の収束が見えないのがつらいですね」と、こむら氏。冨田氏は、「特別支給2020」も新年度には「特別支給2021」とし、「関学HECS型」も続けると説明。「緊急事態宣言で学生のアルバイトも一気に減る可能性があるので、これから助けないといけない」と語りました。

困窮の実態が伝わっているのか

 関西学院大学では、コロナ禍でのオンライン授業を行うために、インターネットとパソコンを無線でつなぐルーターや、パソコンそのものの無償貸し出しなども実施。ルーターの貸し出しが2200台に上り、パソコンの希望者も少なくないなど、「1割近い学生が、オンライン授業を受けられる環境になかった。それだけ生活が大変だということがあらためて分かりました」と冨田氏は話します。

フードバンクに200人が列をなし

 懇談では、経済的に困窮する学生を支援しようと食料や日用品を無償で提供する「フードバンク」も話題になりました。
 関西学院大学周辺の下宿街で行われた「フードバンク」には、200人ほどの学生が集まっており、「困っている学生たちの実態が、社会にどれだけ伝わっているだろうか」と冨田氏。
 宮本氏は、昨年12月に吹田市の関西大学前で民青同盟が行った「フードバンク」の取り組みを紹介。たくさんの物資が寄せられたものの、本当に学生たちが来てくれるかどうか、主催者側は半信半疑でした。ところが当日、たちまち行列ができ、「もらっていいんですか」「友達の分も下さい」「次にやるときは手伝います」と対話が弾んだとし、「私達自身が、学生たちの困窮について学ばされた」と語りました。

「公助」で学費の半減や無償化を

 冨田氏は、独自の奨学金を創設できたのは、関西学院大学がキリスト教系の大学として、「相互扶助」の精神を伝統としているからだと指摘します。
 「『自助、共助、公助』というが、個々の大学の努力や『共助』では限界がある。国が学費の半分くらいを負担することを、まさに『公助』としてやることが必要」と力説します。
 宮本氏は昨年7月に発表した「ポストコロナに子どもと学生に希望を届ける宮本プラン」を説明。「20人程度の少人数学級」と「大学・専門学校の学費半減」を柱にした政策提言です。2009年の総選挙で衆院議員に初当選した宮本氏。衆院での初質問は「大学学費の段階的無償化」を定めた国際条約受け入れを求めたものでした。

学びを社会的に支えるのは当然

 「学びを社会的に支えるのは当たり前。誰一人、経済的事情で学びを諦めることのないようにするのは、関西学院大学の理念であるだけなく、社会の理念でなければなりませんね」と宮本氏。こむら氏も、貧困と格差の広がりの中で社会の中に生まれている分断を、何とかしたいと語りました。
 冨田氏は、「教育の受益者は学生ではなく、社会です。教育を受ける価値は、その場でお金に換算できるものではなく、10年、20年後と長期にわたって社会に対して還元されていく。学費半減も、困っている人を助けるだけではなく、無償に向けて社会的に負担すべきです」と強調しました。
 宮本、こむら両氏は、ことし必ず行われる総選挙で、市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で菅政権を倒し、野党連合政権を実現して、学生たちにとっても希望ある未来を切り開きたいと決意を語りました。

(大阪民主新報、2021年1月24日号より)

月別アーカイブ