おおさかナウ

2015年03月01日

5,子ども医療費助成 <シリーズ>大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

子どもに広がる受診抑制

5,子ども医療費助成

自分の責任と悔やむ母親の苦悩

 2014年春に近隣市から千早赤阪村へ移住した伊藤明子さん(42)=仮名=は、同年夏、夜中に長男(12)の「歯が痛い」という訴えで目を覚ましました。すぐに歯科医にかかりましたが手遅れで、右下の奥歯を抜きました。順子さんは「自分の責任だ」と悔やみます。

 村は中学卒業まで医療費を助成しますが、以前に住んでいた市では当時、就学前までしか通院の医療費助成はなく、かかりつけの歯科では、1回の診察で約8千円を支払っていました。

 「500円だったらもっと気軽に行けた。3人の子の教育費にこの先もっとお金がかかると言われるのに、貯金ができずに不安だった」と順子さんは胸中を明かします。子どもの医療費助成制度の貧困が、治療の決断を遅らせました。

医療費助成を求めて堺市に移住

 子育て仲間の間でも助成制度がないことの影響は深刻です。ある母親は障害のある子どもの医療費助成を受けるために、制度のない地元から、中学卒業まで助成する堺市へ移住しました。しかし他の子と一緒に遊べないわが子を抱え、地域から孤立していると感じています。

 また別の母親は、双子の男の子が小学3年でぜんそくを患っているため、パート収入のほぼ全額を医療費につぎ込んでいます。

 大阪維新の会の橋下徹代表(大阪市長)は、「現役世代へ重点投資」と叫びますが、明子さんは「全然子どもに手厚くしていない。府民牧場など子どもが遊んで成長できる場所もつぶしてきた」と話します。

全国最低水準の助成の充実求め

 府の現行制度は、通院で2歳まで、入院で就学前までです。所得制限が設けられ、窓口での一部負担金もあります。

 松井一郎知事は2013年12月、子ども医療費助成の拡充を求める日本共産党の宮原たけし府議の質問に、全国最低水準の現行制度を拡充する考えを示しました。

 しかし松井知事は、2015年度から対象年齢を通院で就学前まで引き上げるのみにとどめ、所得制限を強化しました。新設する新子育て支援交付金も受け、府下の市町村でも対象年齢引き上げの動きが出ていますが、小学卒業年度末までカバーできない自治体も残る見通しです。

過半数の自治体がすでに無料に

 窓口での一部負担金なし(無料化)は、全国的には984市町村と過半数です(13年4月現在、厚労省調べ)。しかし、府下にはありません。

 近畿圏では滋賀県で68%、京都府15%、兵庫県61%、奈良県23%、和歌山県90%(県の制度は一部負担金なし)の市町村が、無料化しています(通院の場合。2015年1月、大阪社保協調べ)。

子どもに広がる口腔崩壊の実態

 大阪では、子どもの受診抑制が進んでいます。

 府歯科保険医協会は2014年12月、府内全公立小中学校を対象にした調査を行いました。小学校20・7%、中学校17・4%と回答率は低かったものの、学校の歯科検診で受診が必要と診断された子どものうち、実際に受診した割合は小学校で48・4%、中学校でわずか25・9%にとどまっていることが分かりました。

 同調査によると、「口腔内が崩壊状態であると見られる児童・生徒」が「いた」とする養護教諭が小学校で53・3%、中学校で36・3%に上りました。

 調査には養護教諭から「(小学)1年生で10本以上の虫歯のある子が3人もいた。6年生では永久歯がすでに14本虫歯という子がいた」「24本虫歯のある中3の女子生徒。親の養育能力も低く、歯の衛生面だけでなく、他の生活習慣全般、意識が低い」などの声が寄せられています。

府が実態つかみ対応すべき問題

 

02面(通常号) 同協会の戸井逸美副理事長は、「過去3回の調査で、想像以上に受診率が低いことが分かってきた。本来は府が実態を掴み対応しなければならない」と指摘します。

 「貧困は学力格差だけでなく健康格差も生み出している。医療費『無料化』は、子どもを守る制度としては『究極』でなく『基本』だ」

(大阪民主新報、2015年3月1日付より)

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