大企業大減税、ベイエリア開発進め、市民サービス削減
やるべきは市民施策に集中すること
堺市来年度予算案の特徴と問題
石谷泰子堺市議
堺市の新年度予算の特徴と問題について、2月25日に代表質問に立った石谷泰子市議の寄稿を紹介します。
堺市の2021年度予算案では「将来の税源涵養」として大企業への補助金メニューが並んでいます。
新たな投資をするなど体力のある企業に大減税を行う「イノベーション投資促進条例」では、クボタと加地テックの2企業に、今後5年間で合計17億7千万円減税することが決まっています。市民には「財政危機宣言」を発出し、市民サービス切り捨てを正当化しておきながら、一方で大企業には至れり尽くせりです。私は、2月25日の代表質問で「厳しいときこそ福祉的事業の維持を優先すべきだ。削るところは、他にある」と、永藤市長の姿勢を厳しく追及しました。
財政危機宣言の狙い
永藤市長は、財政調整基金がなくなって市民サービスが維持できないといいますが、国の健全化判断比率では堺市は健全度を示しており、前市長の時から変わりません。永藤市長は「将来は収支不足で非常に厳しい」と言いますが、だからと言って基金をため込むのは間違いであり、こういうときこそ基金を使って市民の暮らしを守るべきです。
永藤市長は、市の財政調整基金は少ないのでゼロになったといいますが、去年12月末で62億円に増えています。国の3次にわたる「地方創生臨時交付金」が堺市に109億円交付されているので、財政運営はできるのです。
政令市20市のうち17市で、一般会計は市債を発行するなどして昨年を上回る規模にし、13市が過去最大の規模にしています。大阪府も過去最大予算を打っています。
ところが堺市は2年連続マイナス予算です。市民サービスを縮小する一方で、不要不急のベイエリア開発に5億7千万円計上。今年度2億3千万円と合わせて8億円になります。
財政危機宣言の本当の狙いは、市民サービス削減の正当化と市民の反発を抑え込むことです。
事業見直し約34億円
市長は「極力、生活に遠いところの内容から事業を見直して33・8億円の効果を出した」と胸を張ります。ではなぜ計画的に行ってきた小中学校のトイレ改修事業をストップしたのか?和式を洋式にして衛生的にすることは、感染症防止になります。もうすぐ洋式になる、きれいになると楽しみにしている子どもたちをがっかりさせています。
教育関連事業の10事業で8億646万円を削減しながら、小中学生に1人1台のコンピューターを整備する「GIGAスクール」には、市費負担だけで5年で59億7千万円。保育料無償化の実施を延期をし、認定こども園等運営補助もバッサリ切りました。
コロナ禍の中で行事もクラブも縮小し、夏休みもほとんどありませんでした。子どもたちは1日7時間授業にも耐え、マスクをしてずっと我慢してきました。将来のためだと言うなら、堺の子どもたちにこそ手厚い予算を回すべきです。
また、予算案では、高齢者の紙おむつ給付事業を削減しました。月の上限9千円を6500円にし、対象は要介護3からを4からに後退させました。非課税世帯なのでわずかな年金です。「入院代で年金を使い切って、爪の先に火をともすような毎日で、おむつ代の負担が重くなるのは本当に困る、払えない」と早速相談が寄せられています。削減効果額はわずか約1500万円なのです。
永藤市長は「財政危機宣言」発出の理由は、「市民に財政の危機的状況を理解してもらうため」と言いますが、市民こそ財政危機宣言をしたいのです。
過去の失政の負担も
堺浜再生水事業は、シャープを誘致した2009年と同時に大量の再生水を必要とするため、三宝下水処理施設と送水管整備に41・5億円を計上。市負担は約29億円(市債21億+利息8億)です。市債の返済は2041年までかかりますが、その間、再生水利用料収入で毎年黒字の見込みでした。ところが、シャープが経営悪化の事業縮小で再生水利用の契約をわずか10年で解除を申し入れてきました。
小口利用者(Jグリーンなど)だけでは再生水事業は大赤字なので、休止するしかありません。そのため起債の返済が終わるとき(2041年)には、赤字が約4億4400万円残ることが明らかになりました。事業休止に伴って、これまでの小口利用者に上水に切り替えてもらうための水道管整備の予算が2400万円計上されています。
破格の税投入のシャープ誘致が行き詰まり、今後も後世に負担を強いることになっています。ベイエリア開発は、過去の失敗の真実を受け止め教訓にすべきです。1企業頼み1極集中のまちづくりがいかに危険か、これまでどれほど無駄遣いしてきたのか、深い検証なしに進めてはなりません。
コロナ禍で厳しい暮らしの市民が増えているときに、追い打ちをかけて財政危機宣言をするのは、無駄に市民を不安に陥れるだけです。
新たな投資をする余力のある企業に大減税をし、ベイエリア開発は全くストップしない一方で、財源がない、市民サービスが維持できないと言って削る。これでは市民は納得しません。今、やるべきことは、福祉、医療、社会保障など市民を守る施策に集中して重点的に予算を付けることです。
(大阪民主新報、2021年3月7日号より)