おおさかナウ

2015年03月22日

8,国保広域化を先取り シリーズ大阪壊し 橋下流 ——維新政治を問う

命と健康脅かす緊急事態に

国保料を滞納無保険状態に

 「体がだるい…」。大阪市西淀川区の西淀病院に電話を掛けて体調不良を訴えた男性Aさん(40代)は、離婚後に国民健康保険料を滞納し、無保険状態になっていました。

 「今すぐ来院してください」。当時、西淀病院の医療ソーシャルワーカーだった辰巳徳子さんは受話器の向こうの男性に語り掛けました。翌朝窓口に姿を現したAさんは精密検査の結果、血液疾患でがんの疑いがあると判明しました。

 「お金がない」。困惑するAさんに低所得者でも受診しやすい無料低額診療制度があることを説明し、専門医のいる病院に即入院。抗がん剤治療が始まりAさんは一命を取り留めました。

 40代の別の男性Bさんは、視力低下につながる視神経疾患を発症。18年勤務した軽作業の職を失い、困窮状態に陥りました。軽い肝機能障害と脱水症状で西淀病院に救急搬送された際、Bさんは無保険で所持金は20円。預金口座もほとんど残っていませんでした。

経済的理由で受診が遅れて

 独り暮らしの女性(50代)も体調悪化がきっかけで、住み込み勤務の職場を解雇。アパートに移りアルバイトで生計を立ててきましたが、収入は安定せず3年前に無保険に。貯蓄も底を突き、ガス・電気・水道も止まった状態で西淀病院にたどり着き、生活と健康を守る会と連携して生活保護を受給し、やっと必要な医療を受けられるようになりました。

 NPO法人日本医師政策機構の調査(13年)によると、過去1年以内に具合が悪くても医療受診を控えたことが「ある」と回答したのは4人に1人に当たる26%に上ります。全日本民主医療機関連合会は、経済的理由による受診遅れで病状悪化し死亡した事例が56例(13年)あるとした調査結果を発表しました。

 「お金がなく医療を受けられないのも自己責任と言うのでしょうか?」と話す辰巳さん。薬代が払えず半分ずつ服用する患者など、格差と貧困が命まで危険にさらす現状を変えることが政治の責任だと訴えます。「誰もが等しく人権としての医療を受けられる社会に向け、貧困と格差をなくし、生存と健康の権利を保障する政治を実現しなければなりません」

黒字でも2年連続で値上げ

病院の食事は260円から460円に自己負担が増えます

病院の食事は260円から460円に自己負担が増えます

 76万人が加入する大阪市の国保料は、年収312万円(所得200万円=家族4人)のモデル世帯で年額40万円を超え、月額20万に満たない所得でも3万4千円となり、「高すぎて払えない」と悲鳴が上がっています。

 大阪市の国保加入1世帯当たりの平均所得は全国平均よりも低いため、加入者の保険料負担を抑えるため、市は一般会計から176億円(14年度)を国保会計に繰り入れています。

 一般会計からの補てんは、厚労省も「国保法では禁止できない」と容認してきましたが、橋下市長は以前から一般会計の繰り入れをやめるべきだと主張。過去3年間で国保会計が256億円の黒字だったにもかかわらず、「府内平均(の保険料)に近づける」として、2年連続で保険料を引き上げたのです。

 この高額保険料が「大阪市解体」になれば、さらに大幅に引き上げられる恐れがあります。

 大阪市が廃止・解体されれば、176億円の繰入金を投じる根拠が崩れ、単純計算で1人当たり2万円以上の保険料値上げになります。昨年10月の市議会でこの点を指摘した日本共産党の北山良三市議に、市担当者は「1人当たりで年間約2万3千円の増」になると答弁。北山市議は、「4人家族で年間10万円近く国保料が上がるということだ。絶対見過ごすことはできない」と厳しく迫りました。

 今月6日の市議会。再び北山議員の追及に、橋下市長は「国保が都道府県に移る際には繰り入れが問題になる。介護保険が本来の姿で、国保繰り入れはやるべきではない」などと答弁。橋下市長が社会保障のあるべき姿だとする介護保険では、65歳以上の介護保険料が月額861円増の6758円に引き上げられ、府内最高額となる見通しです。

後期医療は10倍の負担増も

 安倍政権の医療改悪も負担増のオンパレードです。昨年4月、70〜74歳の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げたのに続き、政府は今月3日、医療費削減の新たな仕組作りのため国民健康保険(市町村国保)の財政運営を都道府県単位で行うことを盛り込んだ医療保険制度改悪法案を閣議決定。現役世代の入院給食費負担増や政令改定による後期高齢者の保険料を最大9割軽減する特例措置を17年度から廃止し、2〜10倍の負担増も計画しています。

 国保広域化では、権限を持つ都道府県が、市町村の医療実績を反映した納付金と標準保険料率を決定。自治体は医療費抑制を競い、さらに収納率向上のため滞納対策強化も強いられます。

 西淀川区社会保障推進協議会の矢野正之さんは、「橋下市長による連続負担増は大阪市解体と国保広域化を先取りしたもので、そこに市民を守る視点はいっさいありません」と指摘。大阪市で広がる保険料滞納者への差し押さえの実態を続けて告発します。

医療に関する負担増計画

患者負担




入院時の食費を1食260円から460円に段階的に引き上げ

16・18年度

紹介状なしに大病院を受診する場合は定額負担(1回5000円〜1万円程度)

16年度

混合診療を創設

16年度

75歳以上の後期高齢者保険料の軽減(最大9割)を廃止

17年度

国保

大阪市廃止で大阪市運営から5つの特別区でつくる一部事務組合に引き継がれる

市町村が運営する国保を都道府県に移管

18年度

(大阪民主新報、2015年3月22日付より)

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