大阪市「オンライン授業」
〝学校、おもろない〟
子どもも教師も疲弊
松井一郎大阪市長が、緊急事態宣言期間中に市内の小中学校で原則「オンライン授業」をすると表明したことで、学校現場に混乱が生じています。子どもたちからも「学校が面白くない」などの声が上がっています。
会話を避けて 友達と遊べず
市内のある小学校。3年生の児童が午前8時半に登校すると、普段34人のクラスに7~8人。この児童は別のクラスの教室で、友だちと席を離して座り、無言でプリントに向かいます。3時間目からクラス全員が集まり、34人が同じ教室で1時間余り授業を受けると給食。その後、「宿題」を持って下校します。
昨年の分散登校では教師や友達と会話し、遊ぶ時間もありましたが、今は、会話を避けるために給食中は教室で動画が流れます。近隣には1時間目から児童全員が登校している小学校もあります。
先の3年生児童の保護者は、「松井(一郎)市長が『オンライン授業』と言ってみたかっただけでは」と話し、別の小学校の1年生の保護者は「入学したてで、授業もなくプリントをするだけでは、子どもの学びが心配」と言います。
小学1年生の担任は、「限られた時間ではひらがなと算数を優先するしかなく、学校の楽しさを感じてもらえない」と言います。
上意下達でオンライン学習
松井市長は、4月19日、緊急事態宣言期間中は小・中学校で原則「オンライン授業」をすると表明。市は22日、府コロナ対策本部会議を踏まえた対応方針として、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン学習の方針を各校長に通知しました。
小学校では、1・2時間目は家庭でオンライン学習、その後登校し、健康観察や1・2時間目の学習を深める。給食の後に下校し、家庭でオンライン学習(中学校は午前中にオンライン学習、給食前に登校)とされています。
しかし実際にオンライン学習を行っている学校はごく一部にとどまると見られ、住之江区内のある小学校では、連休明けに各クラス15分間、オンライン学習のための「接続テスト」が行われたのみでした。
オンラインできない場合は
1・2時間目を家庭で見られない児童は、学校で「一時預かり」します。宣言発出後の4月26日から3日間で、3割強の児童が利用しましたが、これも学校によって対応が異なり、午前・午後とも通常通りの授業をする学校もあります。
市教委は市内5千余りある学級(小学1年生や特別支援学級を除く)で順次、「接続テスト」を行い、数週間かけて課題を取りまとめるとしていますが、緊急事態宣言延長後も今のやり方を継続するとしています。
共産党市議団が聞き取りで
日本共産党は10日、「オンライン授業」について市教委から聞き取りました。長岡ゆりこ大阪市議は「子どもたちを『オンライン授業』の実験に使うな」と訴え、井上浩市議は「昨年の分散登校の教訓を洗い出し、市教委が『こういう方法もある』と示すべきではないか」と迫りました。
宮本たけし前衆院議員は、「市長が教育内容にまで立ち入るのは、地教行法違反(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)ではないか」と指摘。「他の自治体は通常の授業をし、大阪市の先生は日々、暗澹(あんたん)たる気持ちになっている。防疫面から見れば分散登校レベルまでクラス人数を減らすべきで、3時間目から全員を集めるのではコロナ対策になっていない」と主張しました。
教職員に社会的検査を行え
党府新型コロナウイルス関連対策本部長の辰巳孝太郎前参院議員は、「コロナ対策では教職員への定期的・頻回の検査すらされていない」とし、「コロナへの不安から3時間目からも登校しない児童への学習保障を深めるべきでは」と述べました。
西田さえ子衆院比例候補と竹内よしのり・わたなべ結両衆院候補も学校の実態や保護者の不安の声を紹介し、市教委にただしました。
大阪市が通達を出した4月22日、大阪市学校園教職員組合は宮城登委員長名で、「子どもたちの学ぶ権利を保障しない、違法な学校教育への介入をやめ、教育課程は学校において編成するという原則に立ち戻るべき」との談話を発表しています。
(大阪民主新報、2021年5月16日号より)