おおさかナウ

2021年06月26日

交野市小中一貫校計画
住民投票条例案を否決
問題山積のまま強行へ
有権者1割の思い 市長・維新・公明などが背く

 交野市(黒田実市長)が進める施設一体型小中一貫校の建設計画を巡り、市民が直接請求で賛否を問う住民投票を実施する条例案の採決が17日の同市議会本会議で強行され、委員会への付託も行われないまま、維新の会や公明党などの反対多数で否決されました。

超マンモス校 プールなしに

住民投票を実施する条例案の否決後に開かれた報告会=17日、交野市役所内

 計画は、交野市立第一中学校(一中)と同校区内にある交野、長宝寺の両小学校を統合し、交野小学校の敷地に施設一体型の小中一貫校を設置するもの。来年4月に両小学校を統合した上で、2025年に開校するとしていますが、小中一貫校は34学級1100人の大規模校に。児童生徒1人当たりの敷地や面積は大幅に減り、プールもありません。
 コロナ禍の中、市と市教委は保護者や市民への説明会をまともに開かないまま、事業を進めてきました。これに対し保護者や市民が、地方自治法に基づく直接請求で、計画の賛否を問う住民投票条例の制定を求めようと、「一中校区の施設一体型小中一貫校設置の賛否を問う住民投票を成功させる会」を結成。ことし3月から4月にかけて署名運動を展開し、有権者の1割に当たる7812筆(有効署名数は7210)の署名を添えて黒田市長に提出しました。
 黒田市長は「(小中一貫校には)重大な課題があるという認識には至らず」、「全市的に賛否を問う住民投票はなじまない」などとする意見を付け、6月4日開会した市議会に条例案を提出していました。

委員会付託すら行わず即決

 本会議では請求代表者を代表して吉坂泰彦氏が意見陳述。出席できなかった請求代表者の菅野慎也、藤川穣輔両氏のメッセージを代読し、「なぜ小中一貫校なのか、教育的観点からの考察、説明がない」(菅野氏)、「十分な合意形成を棚に上げ、市民や保護者の住民投票を求める意見を切り捨てないで」(藤川氏)と語りました。
 菅野氏は、有権者の10分の1の署名が寄せられたことに、市民と保護者の熱意を感じたと指摘。建設費が当初の40億円から87億円に膨れ上がり、統合配合後の通学路の安全対策やプールがないことなど数多くの不安や疑問に、市は何も答えていないと批判し、「もっと慎重に議会で審議を。20年、30年先の子どもたちの教育、交野市の未来に、市民全員で責任をもって進めていこう」と、住民投票条例の制定を訴えました。
 続いて行われた市や市教委への議員の質疑は、1人2問までという限られたものでした。質疑後、三浦美代子議長(公明)が、委員会付託を行わず即決すると提案したのに対し、日本共産党の皿海ふみ、藤田茉里、北尾学、無所属の山本景、松村紘子の5氏は「審議は尽くされていない」として付託を要求しましたが、公明、維新や自民系の無所属議員が反対し、採決が強行されました。

否決はされたが課題解決されず

 採決前の討論で、賛成派の議員は「住民投票にそぐわない」(維新)、「新しい学校建設には重大な欠陥がなく、一貫校建設そのものが否定されるものではない」(公明)などと主張しましたが、この日の質疑や14日から16日の本会議一般質問で明らかになった、小中言一貫校建設の問題点は解決していません。
 日本共産党を代表して賛成討論に立った藤田氏は、コロナ禍の困難を乗り越えて直接請求署名運動に取り組んだ市民団体や市民、保護者の努力に敬意を表明するとともに、政治信条や中学校区の違いを超えて寄せられた署名の重みを感じて住民投票を実施することで、市民の願いに応えるべきだと主張しました。
 住民合意を欠き、学校の適正規模、大規模な施設一体型小中一貫校が児童生徒の成長・発達に及ぼす影響などが検討されていないことや、学校改修や建て替えについてのコストが試算されていないなど、「重大な課題が解決されず、置き去りになっている」と強調。住民投票で賛否を問うべきだと述べました。
 無所属の2氏も「建設費は一中校区だけでなく、全市民が負担し、全市的な問題だ」(山本氏)、「3校を統合すれば大規模校になる問題が議論されていない」(松村氏)と問題点を挙げ、賛成を表明しました。
 閉会後の報告会には傍聴者や賛成した5人の市議らが参加。吉坂氏は「成功させる会で話をしながら、次のステップに進んでいきたい」と語りました。

(大阪民主新報、2021年6月27日号より)

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